この連載では、アウンコンサルティングの駐在員による、日本・台湾・香港・タイ・シンガポールでのマーケティングに役立つ現地のホットトピックを隔週でお届けします。
とどまることを知らない円安のためか、筆者の周りに日本へ旅行する人が増えたなと感じながらJNTOのリリース(PDF)を見てみると、海外からの訪日外国人観光客数が2015年2月から4月まで連続で単月過去最高記録を更新し続け、5月も164万人以上の観光客が日本を訪れたということです。
5月の内訳を見ると、中国からの訪問客が約38万人、台湾が約34万人、韓国が約31万人、香港が約12万人で、これだけで全体の7割を占めています。
特に中国からの訪日客は「爆買い」をすることで日本でも話題になりつつあると思いますが、資産力にしても数にしても圧倒的な彼らが行く先というのは、大きな影響を受けます。
最近でも、中国の企業が創立20周年記念にフランスへの社員旅行を企画し、84機の飛行機と79軒の4つ星・5つ星ホテルを予約して6400人が旅行をしたり、そのほぼ同時期に1万2000人もの中国の人々がタイに旅行をしたりといったニュースが、道路を埋めつくす彼らの写真とともに各国で話題になりました。
日本を訪れる中国人観光客も今後ますます増えていくのではないかと予測されていますが、手放しで喜べるという訳でもなく、それがもたらす影響や日本が変わるべきことがあるでしょう。今回は、長年、中国人の買い物先として栄えてきた香港の例をもとに、考察してみたいと思います。
香港の街を歩いていて気づくのは、どのエリアに行っても同じようなブランドやチェーン店が一等地を占めていることです。例えば香港にお越しになった方ならきっと一度は見たことがある赤い看板の「周大幅」、これはお餅ではなくてダイヤモンドや純金といった高級ジュエリーのチェーン店です。お店で買物をするのは、これから結婚するカップルを除けば大半が中国からの観光客。彼らは平日・休日を問わず大きなキャリーケースを持って香港へやってきて、こうした宝飾品や薬、化粧品や日用品等を大量に詰めて帰っていきます。
Multiple Entry Visaを活用して香港で大量かつ頻繁に物品を買っていく中国人のことを、広東語で「水貨客」と言います。こうした個人輸入は昔から行われていましたが、1997年に約230万人だった中国人買い物客が2013年には5300万人にまで増えるにつれ、香港で社会問題になり始めました。
巨大な需要に対応して日用品の価格がどんどん上昇し、中国人観光客からの売り上げで潤ったチェーン店が競って店舗を増やすとともに商業用店舗の賃料暴騰に拍車をかけた結果、一等地を占めているお店がどれも似たり寄ったりになってしまったのです。賃料を払えなくなった地元のお店がどんどん撤退してしまったり、地元の住民が日用品を買おうと思っても手に入らなかったりする間も、人民元高が進んでいるので中国人から見ると割安に見えます。
中国で買うと偽物ではないかと心配される類の商品が特に良く売れており、最近では赤ちゃん向けの粉ミルクのまとめ買いが問題になった挙句、1人あたり2缶以上の持ち帰りが厳禁となるほどでした。それに加えて、お店の中でところ構わずスーツケースを開いて買ったものを詰め込むやら、道端で排泄するやらの中国人客のマナーの悪さも問題になり、中国との国境に近く買い物客の多い香港エリアでは、怒り心頭に達した香港人が抗議デモを起こして警察が出動する騒ぎにもなりました。
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