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アジア現地駐在員マーケティングレポート

中国人の資産が変えた香港市場と、日本だけができるインバウンド - (page 3)

白瀧優子(アウン香港マーケティング)2015年07月08日 08時00分
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 オリンピックに向けて「インバウンド」や「多言語化」が盛り上がっていますが、肝心なのは単に駅空港のキャパシティを上げるとか、日本語が英語や中国語と併記になるということではないと筆者は思います。いかに日本や各地域の文化、独自性が生きて、それを楽しんでもらえるのか。そして一方で、いかに彼らの文化やニーズに歩み寄ったサービスができるのか。そんな工夫の先にこそ、一過性のブームや香港で起きたような対立ではなく、長期的な発展があるだろうと思います。

 多言語化ひとつとっても、既存の日本仕様のものをそのまま翻訳すれば良いというものではありません。日本語の看板や案内にはないけれど、例えば建物内でつばを吐かない、電車の座席に子供を靴のまま立たせない、御手洗で使った紙はゴミ箱に放らずトイレに流すなど、そういうことも常識とは限りません。

 日本人の常識を当たり前にわかってくれると思わずに、きちんと注意書きを設置したり、外国人観光客に明確に分かるようなデザインにして、彼らが理解できるようにする必要があるでしょう。「日本はどこに行っても清潔で、皆マナーが良い」という文化自体が消えてなくなったら、もう誰もその魅力を楽しむことはできません。そうやって一つひとつ魅力がなくなっていかないように、きちんと伝えて、守りつつ楽しんでもらう。守ってもらうのも時間がかかるかもしれませんが、日本人は得てして「伝える」のが苦手なので、まずは何を伝えるべきなのか、どうすれば伝わるのか、という視点が大事です。

 一方でメニューや商品説明なども、例えば皆で分けて食事をする習慣のある中国人向けには、メニューに既存の定食の翻訳だけでなく、大皿で分けて食べられる出し方も掲載してみるといった、文化・ニーズへの歩み寄りがあると喜ばれるのではないでしょうか。商品にしても筆者の知っている例では、とある日本製の高級カメラが中国人に人気でニーズがあるものの、いくら店員が中国語で対応できても、日本で売っているカメラの操作メニューは日本語しかない、というものがあります。聞けば、業者が買って、システムにハッキングして中国語メニューに入れ替えたものを、高いマージンを乗せてローカル市場で売っているということでした。そうではなく、彼らが買ったらきちんと使える仕様にして製造・販売することで、売り手も買い手もハッピーになれるでしょう。

 香港で起きたことで、日本でも起こりそうなことは2つあります。1つは、中国人に売れるものがどんどん店頭を占めるようになり、価格が上がっていくことで、地元の人が欲しいものが買えなくなったり、離れていってしまうこと。それは、売り手や地域にとって望ましいことでしょうか。もう1つは、香港同様、日中も政治的な緊張は常にあり、ちょっとしたきっかけで急に訪問客が落ち込んでしまう可能性があるということ。その時、生き残れるでしょうか。

 日本の都市や地域は、それぞれに特色や歴史、地元ならではのおいしいもの、人のあたたかさがあるのが良いところです。インバウンドを推進する観光地やお店としては、上述のような視点を頭の片隅に置いて、どういうスタンスで受け入れるのかを考えてみてほしいと願います。数年後日本に行ったら、どこも中国人向けの似たような町並みとお店ばかりなんてことがないように、日本各地の個性と魅力が、中国を始め世界中の人に楽しまれているようであれば嬉しいと思うのです。

白瀧優子(しらたき ゆうこ)

アウン香港マーケティング

大阪大学法学部卒。大学在学中、ロシアでの海外インターンやカナダ留学、中米バックパック旅行などを経て海外に関わる仕事を志す。

卒業後、国内IT企業で苦手意識のあった営業をあえて経験し、IT業界と日本企業の仕組みを学ぶもやはり違うと判断し、結婚を機に退職して香港へ。

ITと営業の知識、日本人のバックグラウンドを活かしつつ、現地のマーケティングや顧客開拓のできるAUN香港マーケティングに入社、日系・ローカル双方の営業および顧客対応、自社のプロモーションや現地スタッフの採用育成等に幅広く従事。

NY発の教育機関General Assemblyによる3カ月のDigital Marketing Courseを修了し、検索エンジンマーケティングやソーシャルメディアはもちろん、ブランディングの基礎やデータ分析などを学ぶ。最新のノウハウを日々勉強中。


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