米セールスフォース・ドットコムは、6月16日から3日間にわたり、ニューヨークで大規模なマーケティングイベント「CONNECTIONS 2015」を開催した。イベントでは、同社のクラウド製品を活用したさまざまな導入企業の事例が紹介されたが、中でもユニークだったのが、世界的な化粧品メーカーであるロレアルの施策だ。
ロレアルは2014年にメイクアプリ「Makeup Genius」(iOS/Android)を公開した。自分の顔をスマートフォンのカメラでスキャンするだけで、好きなメイクをバーチャルで試すことができるアプリだ。実際にハリウッドスタジオで使われている技術を採用しており、選んだメイクがユーザーの顔の動きに合わせてリアルタイムに付いてくるので、どの角度からでも本当にメイクをしたように見える。
プロのメイクアップアーティストが手がけたメイクも用意されており、たとえばカンヌ映画祭などのイベントで新たなメイクを披露したセレブリティと同じメイクを試すこともできる。気に入った商品があればアプリからそのまま購入することが可能だ。また、店舗などでロレアルの商品バーコードをスキャンすれば、その化粧品を使ったイメージをすぐにシミュレーションできる。
ロレアル オーストラリアのデジタル事業の責任者であるChristophe Eymery氏によれば、ユーザーがMakeup Geniusでどのようなメイクをし、どんな商品を購入したかというデータはセールスフォースのクラウド上に蓄積されており、より顧客に最適化された情報配信をするために役立てているという。「これまではすべての顧客に同様の情報を送っていたため、(顧客が)煩わしいと感じれば購読を止められてしまうが、いまでは正確なターゲットと有意義なコミュニケーションができる」(Eymery氏)。
また、「小売店は自社のビジネスを守るために、顧客データをブランドとは共有しない傾向にある。そのため、ブランドが直接顧客のデータを保有して、関係を構築することが今後はより重要になる」(Eymery氏)と説明する。この一方で、企業内のマーケターがデジタルマーケティングツールを活用できるよう、これまで以上に社内教育や啓蒙活動が求められるとした。
Makeup Geniusは、日本を含む世界30カ国以上で提供されており、アプリの累計ダウンロード数は1200万を超える。Eymery氏によると、オーストラリアでは公開から約2カ月で50万ダウンロードを超えているという。このうち月間アクティブユーザーは8万人で、コンバージョンレートは約1%。ユーザーは一度に20~50ドルの買い物をするという。
今後は、スキンケア商品などを取り扱うランコムなど、グループ企業と連携したアップセルやクロスセルによって収益を拡大させたいとしている。
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