“ゲームチェンジ”を成功させたBI製品「Tableau」--市場が抱える課題とは

 企業向けビジネスインテリジェンス製品「Tableau」を展開するTableau Softwareは、ユーザビリティやパフォーマンスを向上させた最新バージョン「Tableau 9.0」を公開した。

 2003年に米国で創業したTableauは、2014年の決算発表において世界150カ国で合計4億1300万ドルの売上高を達成し、創業からの顧客アカウント数は2万6000件、生涯売上高は9億1300万ドルを記録。ビジネス分析ソフトウェアの歴史上最も急成長を果たした企業の1つだと言われている。日本市場においても2013年の参入以来、「無印良品」を運営する良品計画をはじめ大手企業の導入が進むなど急成長を遂げているという。

 Tableauがここまで成長した要因は何か、そしてTableauのBI製品が普及したことで見えてきた企業のビッグデータ活用における課題は何か、Tableau Japan社長の浜田 俊氏に聞いた。


Tableau Japan社長の浜田 俊氏

Pixarで培ったグラフィックのノウハウが生んだBI製品

――Tableauのビジネスインテリジェンス(BI)製品の特徴、他社製品と差別化している点について教えて下さい。

浜田氏 : 端的に言うと、Tableauの製品は「セルフBI」というキーワードで特徴を語れるのではないかと思います。ユーザーにBIの専門的な知識やノウハウがなくても、直感的な操作性とグラフィックにこだわったアウトプットによって、ビッグデータをビジネスに活用することができるツールであるということです。

 米国のTableau Softwareはスタンフォード大学で教鞭をとっていたPat Hanrahanとその教え子2名が立ち上げました。Patはスティーブ・ジョブスが創業したPixarで「RenderMan」というグラフィックエンジンを開発したエンジニアでもあり、このグラフィックスのプロフェッショナル集団で培った専門的なノウハウをビジネスシーンに活用できないかと考え、ビジネス戦略やデータ解析のノウハウに精通していた教え子たちと共にTableauを創業したのです。

 他社のビジネスインテリジェンス製品は、整理されたデータベースをどのようにグラフ化して出力するかというアプローチで考えて、ユーザーのコマンド入力に対して必要な処理をするというプロセスをとっているのではないかと思います。入力と出力の要件定義をして、出力テストをして、試行錯誤しながら必要なグラフを導き出していたのではないでしょうか。しかし、Tableauはグラフィックスのノウハウを基本に製品を作り上げたという点でそれまでの他社製品とは大きく違いました。

 つまり、必要なデータからグラフを作成するまでのプロセスやグラフデータを出力する処理が速く、ドラッグアンドドロップで直感的に操作できるということです。Tableauの製品はグラフィックの専門家たちがビジネスインテリジェンスを考えた結果生み出された製品であり、ITやビッグデータの専門家が作ったものではありません。しかしその結果として、従来の他社製品にはない優れた操作性と生産性を生み出せたのです。


Tableauによって作られたデータ解析グラフの例

――日本における販売実績はどうでしょうか。

浜田氏 : 日本では2013年1月から販売を開始していますが、直後から導入企業は急激に増加しており、米国を含むグローバルで見ても日本での導入社数が最も伸びている状況です。全世界のTableauの売上は毎年80%ほどの成長を遂げているのですが、日本は昨年において対前年比200%の成長を達成しています。特にこれまで他社のBI製品を利用してきた方からは高い評価をいただいており、製品をデモンストレーションすると他のBI製品にはないシンプルな操作性が理解してもらえるようです。

 私自身も、Tableauに参画する前はBI製品を展開するベンダーでカントリーマネージャをやっていたのですが、当時私の扱っていた製品をデモンストレーションしたかといえば……できなかったですね。製品が持つプロセスの煩雑さや処理の遅さを露呈してしまうことになったからです。今では私自身がお客様の前ですぐにデモンストレーションを披露できます。それだけ操作の簡単さや処理の速さにこだわっているということです。

Tableauの概要

安価で簡単なBI製品が生み出したブルーオーシャン

――Tableauが日本でのスタートアップに成功した要因は他にありますか。

浜田氏 : Tableauが売れた理由には、これまでBI製品がアプローチできなかった新たな市場を生み出し、市場におけるゲームチェンジを実現したということが言えるのではないでしょうか。

 これまでの日本におけるBI製品は、大規模なデータを処理する大企業など、スケーラビリティのある現場でしか導入することができませんでした。製品が複雑で高価なものだからです。ビジネスの相手は企業の情報システム担当者で、製品は現場の作業生産性よりもコストパフォーマンスが重視される傾向があります。しかし、Tableauは安価で簡単にBIを活用できるという特性を活かして、中小・ベンチャー企業や部署単位でのデータ活用、個人での利用などこれまでBI製品がターゲットにしてこなかったユーザーを取り込むことに成功しました。

 特に、大企業であればマーケティング部門や人事部門、経理部門といった部署に導入してもらうことで製品のファンを生み出すことができ、そういうユーザーからの推薦によって全社的な導入への道を拓くことができる点で、情報システム担当者に全社的な導入を決断させてきたこれまでのBI製品の営業戦略とは大きく異なるアプローチを実現しています。これは、市場におけるゲームチェンジを起こしたと言えるのではないでしょうか。

――「Tableau 9.0」にアップデートしましたが、どのような点が改善されたのでしょう。

浜田 : 入力する元データの整理が簡単にできるようになったほか、グラフ化する処理速度も大幅に向上しています。ユーザーインターフェースでは、データを処理するための計算式の入力がさらに分かりやすくなっており、よりユーザーフレンドリーな製品になったと言えるでしょう。

――ユーザーサポートに関してはどのような対応をしているでしょうか。

浜田氏 : 直観的で簡単な製品とはいえ、導入しただけではすぐに使いこなすことができないため、ユーザーが製品を活用できるよう、オンラインでのチュートリアルが充実している点も特徴です。ユーザー向けの無料ハンズオントレーニングも毎週開催しています。チュートリアルとハンズオントレーニングでユーザーは概ね基本的な活用法はマスターしていますね。ユーザーサポートについては、トラブルシューティングだけでなく、どのように製品を活用すれば効果的なデータ分析ができるかといったコンサルティングのようなサポートもしています。現在このサポートは英語ですが、近く日本語サポートを開始する予定です。

 日本での成長には米国本社も注目しており、チュートリアルの日本語化や日本語によるユーザーサポートなどはこちらからのリクエストではなく米国本社の判断で進めています。それだけ米国本社も日本市場に注目しているということだと感じています。売れている市場にはもっと投資しようというのが、外資企業のいいところだと思います。こうした投資によって製品がもっと売りやすい環境が生まれ、良い循環ができるのではないでしょうか。

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