三井住友海上火災保険のアジア地域の持株会社であるMSIG Holdings(Asia)は2014年12月、イスラエルを拠点とするソフトウェア開発会社iOnRoad(アイオンロード)と提携し、8カ国語対応のスマートフォン向け安全運転アプリ「My Safe Drive」(iOS/Android)を共同開発した。
対象地域は、東南アジア地域各国および香港。ダウンロードは有料(5ドル相当)だが、MSIGがキャンペーンなどで限定配布するパスコードを使えば、無償で利用ができるバージョンも用意。保険会社としてはユニークな今回の取り組みについて、開発を担当した同社のバイスプレジデント 松尾英樹氏に聞いた。
My Safe Driveは、スマートフォンに搭載されたGPSやカメラ、ジャイロセンサ、加速度センサなどを使って、走行速度や前方を走るクルマとの車間距離などに関する情報を収集・分析した結果を踏まえ、ユーザーの安全運転をサポートするものです。クルマのフロントガラスの内側や、ダッシュボートに置いたクレードルにスマートフォンを設置して使用します。
主な機能は6つ。まずは、安全運転のための「車間距離アラート機能」。車間距離、もしくは衝突するまでの秒数を表示し、その距離に応じて異なる3色(緑・黄・赤)のタグの色とポップアップ、音声で警告します。「車線逸脱アラート機能」は、時速60キロメートル以上で走行時に、高速道路などで走行車線からはみ出した際にドライバーに警告音でお知らせします。
「速度超過アラート機能」は、任意で設定した設定速度を超過すると警告音で注意喚起する機能。ほかにも、走行時の前方状況をワンタップで録画・撮影できる「録画・撮影機能」、ドライバーの運転ルートや安全運転結果を表示する「安全運転スコア機能」。さらに、駐車時の位置情報を記録し、GPS機能を用いてドライバーの現在地と駐車位置を表示する「駐車位置メモリー機能」もあります。
日本では2012年から、スマートフォンで運転力診断などができるアプリ「スマ保」を提供してきました。一方で、近年の統計資料からシンガポールや香港、そのほかの国ではスマートフォン普及率が日本より高くなっていることが分かりました。こうした背景から、便利なアプリを開発できれば、日本の「スマ保」と同様に受け入れていただけるのでは、という期待感がありました。
こちら(シンガポール)で暮らしていると、交差点で曲がるときにウインカーを出さないなど、日本と比較して運転の荒いドライバーが多いように感じます。また、周辺国では経済成長を背景にいわゆる中間層の若年ドライバーが増え、自動車事故発生の危険性はますます高まっています。
我々は、このアプリを提供することにより、ドライバーの皆さまの安全運転を陰ながら支援し、それにより東南アジア各国社会の交通安全に少しでも貢献できればと考えました。
機能のアップグレードなどで、他社のアプリとの差別化を図っていきたいと考えています。具体的には、事故の原因となりやすい、スピードの出しすぎを防ぐもの。たとえば、スピード標識などに沿った安全速度での走行を促すことや、アラートの出し方を工夫するなどです。
さらに将来的な展望ですが、現在、自動車保険の業界では、欧米の保険会社を先駆として、ドライバーの運転行動が保険料に反映される「テレマティクス保険」が注目されています。“Pay as you drive.(運転した分だけ支払う)”や“Pay as how you drive.(どのように運転したかに応じて支払う)”といった契約ですが、その基礎データを入手する機器として使用することも考えられます。
テレマティクス保険はあくまで一例にすぎませんが、こうしたことを実現していくためには、ドライバーに関するビッグデータを収集する必要があります。現時点ではさまざまな技術的課題がありますが、今後高度化していけば、My Safe Driveが保険サービスそのものの品質向上により貢献できるようになるかもしれません。
――自動車事故が多発すれば、保険会社としては保険料を上げざるを得ない。そうなれば結果として、契約者の出費が増え、家計を圧迫することにつながってしまうだろう。このアプリが普及し事故を減らすことができれば、それを防ぐことができる。MSIG Holdings(Asia)の収益性向上にも貢献するはずだ。
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