“ゲームチェンジ”を成功させたBI製品「Tableau」--市場が抱える課題とは - (page 2)

ビジネスインテリジェンスの活用には機動力が必要だ

――昨今のビッグデータやBIにおける状況について、どのように感じていますか。

浜田氏 : 生活者にモノが十分に行き届いている日本において、メーカーが生活者の買い替えニーズを喚起するためには綿密なマーケティング戦略が必要であり、その過程においてビッグデータに基づくBIの重要性はどんどん高まっているのではないでしょうか。企業は膨大なビッグデータを蓄積しつつありますが、それを分析して活用しなければ企業の資産にはならないのです。企業の規模は関係なく、大手メーカーから中小企業までこの姿勢は重要なことです。

 たとえば、Amazonは顧客から集まる膨大なビッグデータを販売促進に効果的に活用していますが、そこでBIツールが高価なものであれば商品を安く売ることはできません。いかにして安価で高い効果が期待できるかという点で、Tableauへの期待も高まっているのです。Tableauの成長によって、BIをビジネスに効果的に導入できる環境は整いつつあると言えると思います。

――確かに、部署単位、製品単位でコンパクトなマーケティング組織を作っている場合には、従来のBI製品は全社的に導入する必要があり高いハードルになっているように感じます。

浜田氏 : ですからこれからのBI製品は、部の予算、課の予算で購入できるような安価でコンパクトなものでなくてはならないと思うのです。全社的に導入する従来のBI製品は、安くても数百万円の設備投資予算が必要になる。すると役員の決裁が必要だったり、全社的に製品を活用できる費用対効果の試算が必要だったり、ハードルが高くなってしまうのです。しかし、部署の余剰予算で購入できるほどのデスクトップツールであれば、こうしたハードルにぶつかることなく部署のニーズに合わせた導入が可能になるのです。

企業がビッグデータを経営資産にするために必要なことは何か

――ビッグデータを活用したビジネス戦略に対しては、たとえばマーケティング領域などで必要性は強く感じているものの、日本の企業はまだ効果的に活用するフェーズに突入していないように思います。

浜田 : おそらくビッグデータは多くの企業が蓄えているのだと思います。しかし、多くの企業はそのデータをエクセルのような「集計表」でしか見ていないのではないでしょうか。ビッグデータが示す示唆を読み解くためには、Tableauのようにグラフィックで視覚的にデータを活用できるBI製品でなければ、そのマーケティング活動は次のステップに進むことができないのではないかと思います。

 まず「データを見る」ということができないから、そこから課題を読むことができない。膨大な数字が並んでいるだけの表では、課題は見つかりません。視覚的にデータの中に潜む課題を探し、そこからドリルダウンして課題を具体化していかなければ、何をすることがマーケティングにとって有効かなどわからないのです。

 またビッグデータを活用する上でもうひとつの課題は、いかに正確にデータが入力されるかということです。データが正しく入力されずに正確な回答を導き出せなければ、そのビッグデータは使い物にならない“死んだデータ”になってしまいます。データを正しく入力すれば顕在化していない課題やそれを解決するためのヒントを視覚的に返してくれるという期待が明確であれば、ユーザーはデータを真剣に入れてくれるようになります。リアルなデータの蓄積が生まれるのです。TableauのBI製品はこの点においても課題の解決に貢献できるのではないかと考えています。

 リアルなデータの蓄積とその視覚的な活用は、企業の経営にも大きな影響を与えます。たとえば経営会議などで売上などの数字をまとめた一覧表を作ったとして、気になるところをドリルダウンしようと思ってもすぐにその答えを資料の中から導き出すことはできません。場合によっては、都合の悪い数字を資料に載せないといった誤魔化しも可能でしょう。しかし、TableauのBI製品を会議で活用すると、問題点が視覚化された統計データからドリルダウンしてその場ですぐに課題を発見することができるので、会議が生み出す効果も高まるのです。素早い判断が求められる経営者のニーズに対応できるのではないかと思います。

 「資料の気になるところは1週間後の次の会議で用意する」では、市場のスピードについていけません。「気になる課題をその場で解決して、これからの1週間どのような戦略で闘うか」を考えることで、会議の質を高めることができるのです。


――最後に、日本のビッグデータ活用における課題について教えてください。

浜田 : 一番の課題は、データのクレンジング=解析によって効果が期待できる正確なデータを用意するということではないかと思います。ユーザー企業のデータをTableauのBI製品に入力して視覚化してみると、データの内容に誤りが多くて正確な解析ができないことがすぐにわかります。これまでは気にしなかったようなデータの誤りが、ビッグデータ分析において重要な課題であることは多いのです。

 加えて、ビッグデータを視覚化することで、「必要な判断をするために足りない情報は何か」を理解することも重要です。どのようなデータがあれば企業経営やマーケティング活動に役立てることができるかが理解できれば、収集するデータの質が高まり、企業経営やマーケティング活動の精度が向上します。一概に「ビッグデータが重要だ」といってやみくもにデータを収集しても、その質や内容が伴っていなければ、それを企業のアセットにすることはできないのです。「自分のビジネスに有益なビッグデータとは何か」を定義することが、ビッグデータを活用するための欠かせない条件なのではないでしょうか。

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