映画「インターステラー」のトレイラーを見ているところだ。広がるトウモロコシ畑、遠い星の山々。私は映画館にいて、その景色を見ている。周囲のシートには誰も座っていない。背後にある映写機が瞬く。私は肘掛けに手を伸ばす。そこにあるバックパックを手に取る。振動、人の押し合う音。駅のアナウンス。
実は、私は映画館ではく、電車の中にいる。ヘルメットを取ると、ペンシルバニア駅だ。なぜ、スマートフォンではなく、バーチャル映画館で映画のトレイラーを見たのか?その疑問に答えるのは難しいが、この経験は筆者が想像していたよりも奥深いものだった。
筆者はソファに座ったまま水族館に行き、ベッドで横になりながら誰かの静かなアパートで音楽を聴いた。そして、公園のベンチに座りながら、太陽系を探検した。
それが、サムスンの「Gear VR」で可能になるモバイル仮想現実だ。これは「Oculus Rift」のようなヘッドセットであり、実際Oculusと協力して作られたものだ。しかし、Facebookの有名な仮想現実ゴーグルとは違って、Gear VRは(少なくとも米国では)わずか199ドルで手に入る。Gear VRでは、いくつかのデモアプリ、体験、パノラマ写真、動画、ゲームなどを利用できる。しかし、利用できるスマートフォンは、サムスンの「GALAXY Note 4」だけで、これをヘッドセットにはめ込んでディスプレイとして使用する。
筆者が米CNETで働くようになって5年になるが、これ以上に魔法のような経験はなかった。
映画の歴史のあけぼのに近い頃に、Lumiere兄弟が初期に監督した「ラ・シオタ駅への列車の到着」という映画がある。この映画には、こちらに迫り来る列車を見て、観客がスクリーンの前で叫び声を上げたり身をすくめたりしたという逸話がある。このシーンを映画「ヒューゴの不思議な発明」で見たことがある人もいるかもしれない。仮想現実は、これに類する体験の現代版だ。まだ洗礼を受けていない人にとっては、強烈な驚きや不快、困惑、熱狂を感じさせる体験になり得る。Oculus Riftやソニーの「Project Morpheus」(Googleの「Cardboard」や「Project Tang VR」は、今のところはるかに効果が低いため、挙げないでおく)を使うと、3Dの世界に吸い込まれ、予期しているよりもはるかに没入感のある体験ができる。宇宙船のコックピットに座る。ドラゴンと戦う。周りを見回すこともできる。それが、自分の目の前にあるのだ。
初期のLumiere兄弟の映画と同じ効果があるテクノロジを見ることになるなど考えたこともなかったが、VRは確かにそれに匹敵する。
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