筆者は仮想現実(VR)に対して懐疑的だ。しかし、Microsoftの「HoloLens」は、一目見ただけで、既存のどんなVRヘッドセットとも一味違うということが分かった。「Oculus Rift」とも異なる。まず、HoloLensはほかのVRヘッドセットより小さい。そして、HoloLensが提供する拡張現実(AR)体験、つまり、Microsoftが言うところの「複合現実」体験に筆者は興奮を覚えた。そのときの体験を紹介しよう。
HoloLensのプロトタイプは、ほかのVRデバイスと比べるとスリムな形状だが、それでも分厚く、仰々しいデバイスだ。重いスキー用ゴーグルのように見える。そのため、スタイルに関しては評価できないが、サムスンの「Gear VR」とは全く異なる外観だ。
ユーザーが首からぶら下げる箱の中に、「Holographic Processing Unit」が収納されており、昔ながらの電源コードが接続されていたため、あまり遠くに行くことはできなかった(幸い、コードに足を引っかけて転ばないように担当者が気を配ってくれた)。それほど重くないが、かなり大きな機械を装着した状態で動いているという感覚をぬぐい去ることはできない。しかし、ひとたび電源を入れれば、そんなことはどうでもよくなる。
HoloLensは仮想現実と違って、ユーザーの感覚を完全に乗っ取るわけではない。その代わりに、マッピングする対象や視界に表示する情報をユーザーが決定することができる。例えば、部屋を見てスキャンし、そのスペースの断面図のようなものを作成する。
そのため、筆者が体験したデモでは、目の前にあるデスクトップPCを使って、HoloLensが投影する未加工の画像を見ることができた。次に、カーソルをスクリーンの外にドラッグすると、そのカーソルが(「ポン」という音をたてて)目の前の空中に現れた。この宙に浮かぶカーソルを使って、目の前のスペースをクリックすることができるが、通常のマウスで3Dスペースを操作するのは少し変な感じがする。空間上のカーソルによるアクションの大半は、自分の目を使って行う(HoloLens用語では「Gaze」、つまり凝視と呼ばれる)。
コラボレーションは特にクールだった。とりわけ印象的だったのが、米航空宇宙局(NASA)ジェット推進研究所(JPL)の科学者がデモに参加して、JPLが2015年にHoloLensを利用して実験をコーディネートする計画を説明してくれたことだ。
コラボレーションの極め付けはSkypeだ。筆者はSkypeを何度も使ったことがあるが、こんな体験は初めてだった。Microsoftは、遠隔地からSkypeで通話している「友人」の力を借りて、電灯のスイッチを取り付けるように言った。友人の動画フィードは筆者の凝視を追尾したが、目の前にある空間の一点に友人を固定し、筆者が部屋を見回す間、その場所にとどめておくこともできた。その間ずっと、友人は筆者と全く同じ光景を見ることができ、筆者の目の前の空間に取り付け手順を書いてくれた。
筆者は家の修理などの作業が得意だが、このようにバーチャルな要素がその場で指示を与えてくれるのは驚くべきことだ。筆者は既に、遠く離れた場所に住む友人がPCに新しいCPUを取り付けるのを手助けするなど、説明が難しい技術的混乱状態のトラブルシューティングに手を貸す場面を想像している。
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