アジア現地駐在員マーケティングレポート

シンガポールで増える「日本食レストラン」--検索トレンドから見るニーズの広がり - (page 2)

島田裕一(アウングローバルマーケティング)2014年12月17日 08時00分

嗜好の違い

 どの業態でも海外へ進出する際は、“グローバルへ広げ、ローカルで考える”ことが重要ですが、飲食に関しては特に人々の嗜好が現れます。ある日系ラーメン店で勤務する日本人社員にお話を伺ったところ、「シンガポール人は柔らかい食べ物が好きなため、豚骨ラーメンでも麺は柔らかめをよく頼まれる」とのこと。ラーメンに限らず、さぬきうどんなども柔らかめでオーダーする人が多いそうです。

  • シンガポールでは「柔らかめ」の麺が人気

 さらに「シンガポール人は色々な種類から選択することが好きなので、ラーメンであれば油の多さや味の濃さをチョイスできるサービスがとても好評です。元々日本で辛さなどを自分の好みでオーダーできる文化があったため、より受け入れられた」(同氏)と言います。

 ただし、実はラーメンはシンガポールでは値段が高く、1杯15ドル~20ドル(約1400円~1800円)もします。かたや屋台のようなところでは、中華風の麺が5ドル(約400円)で食べられることもあり、いかに“ラーメン”に付加価値をつけるか、各店で施策に苦心しているようです。

経営上の課題

 経営上の課題を前出のラーメン店社員に聞いたところ、F&B(飲食)産業の労働力不足が深刻なことと、固定費が高いことを挙げていました。

 飲食産業の人材確保は日本でも深刻な問題になっていますが、シンガポールでは特に若者が飲食産業を下に見ており働きたがらず、慢性的な人員不足となっています。新卒や若手を確保することが難しく、少しの給与差で転職をしてしまうため、流動性も非常に高く、経験値の蓄積がとても難しいとのことです。

 固定費については、経費の中でも特に高い家賃がネックのようです。シンガポールの中でも特に人が多いオーチャードのようなところになると、1平方メートルあたり1万円以上の物件も多く、東京・新宿の飲食店の賃料相場約8000円よりも高くなっています。さらにモールでは売上に応じて追加で賃料を課す場合が多く、ただでさえ少ない粗利の圧縮要因にもなっています。

成功は2割程度

 前出のラーメン店社員によると日系の飲食店のうち、開店数年で5割が閉店、3割がトントン、2割が成功というイメージとのこと。シンガポール人のマインドとして日本食が追い風だとしても、経営となるとなかなか難しいようです。ただしその2割になることができれば、前述したようにプロモーションで口コミの好循環が生まれますし、店舗を増やしていき、規模を広げやすくなります。

 新規進出においては、日本スタイルを現地に持ち込んだ上で、ローカルに合った最適な方法を試行錯誤しながら見つけていくことが重要とのことでした。

今後チャンスのある業態

 個人的には、今後「緑茶ビジネス」が面白そうだと思っています。実は日本からの日本茶輸出先国で、2012年はシンガポールが2位(1位は米国、3位はドイツ)と、日本茶はシンガポールで人気を博しています。この理由として、シンガポール人は元々中華系が多くお茶文化があることと、健康志向が高い人が多いためだと考えています。

  • 抹茶スイーツ店「TSUJIRI 辻利茶屋」がシンガポールに進出している

 シンガポール人はすでに日本茶の味を舌でわかっているので、そこに付随する抹茶アイスなどの商品で日本ブランドを強く押し出すことにより、チャンスがあるのではと感じています。

 すでに、抹茶スイーツ店のお店「TSUJIRI 辻利茶屋」がシンガポールに進出しており、食事帰りのOLが抹茶パフェを楽しんでいる様子が見て取れますし、お茶商品を取り扱っている「野口徳太郎商店」も粉末タイプの健康茶や、茶を使った菓子などを販売しています。

 所得が高く、外食文化で日本食に対する信頼度や期待値が高いシンガポールでは、日系企業が成功する余地はまだ多くあると感じるため、これからもどんどんシンガポールへ進出し、素晴らしい食文化とサービスで、現地の方々を幸せにしていただきたいところです。

【現地の小ネタ】Paulのエクレア

 オフィスのあるラッフルズ プレイス駅の広場にあるフランスの老舗ベーカリーショップ「Paul」にはまっています。

 価格は約7シンガポールドル(約600円)と高価ですが、濃厚なクリームとサクサクしたパフが我慢できず、ちょうどおやつの時間に訪問先から戻る際は、いつも会社のメンバーへのお土産という名目で買って帰っています。シンガポールには2012年に進出したようですが、近年ではマニラやバンコクなどアジアにも積極的に進出しているようです。

  • Paul

  • Paulのエクレア

島田裕一(しまだ ゆういち)

アウングローバルマーケティング マネージングダイレクター

2006年アウンコンサルティング入社。

検索エンジンマーケティング(SEM)における新規顧客開拓を担ったのち、SEMコンサルタントとして大手プロバイダや不動産などを中心に企業のマーケティング支援に従事。

その後、沖縄支店およびアウンタイラボラトリーズのヘッドマネージャーとして、現地法人運営と現地スタッフの育成、売上拡大における販売戦略の立案と実行を行う。

現在は海外拠点、アウングローバルマーケティング(シンガポール)とアウン香港マーケティングのマネージングダイレクターを兼任し、幅広い業種・業態のSEMを含む、グローバルマーケティング活動の支援を行う。


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