この連載では、アウンコンサルティングの現地駐在員による、日本・台湾・香港・タイ・シンガポールでのマーケティングに役立つ現地のホットトピックを週替わりでお届けします。今回は香港から、現地のチャットアプリ事情をお伝えします。
友達になにか聞きたいとき、複数人でイベントを企画するときなどに重宝するチャットアプリ。電話のように相手の都合を気にしたり、メールのように件名や文面を整えたりすることなく、いつでも簡単にコミュニケーションを取ることができます。
日本ではLINEが圧倒的に多く使われていますが、香港ではどのチャットアプリが、どのように使われているのでしょうか? また、インターネット人口が約6億人のお隣・中国ではどうでしょうか?
みなさんは、世界のスマホ普及率がどのくらいかご存知でしょうか? 日本はいわゆる「ガラケー(フィーチャーフォン)」が長らく使われていることから、世界と比べるとスマホ普及が遅れています。
Googleが発表したConsumer Barometerによると、2014年1月~3月時点でのスマホ普及率ランキングで、日本は47の国と地域の中で25位に位置しています。そして香港はというと、スマホ普及率は74%で世界4位。なおその上位は、1位シンガポール、2位韓国、3位スウェーデンとなっています。
香港では、スマホが普及することでスマホ対スマホのコミュニケーションがリアルタイムで行われるようになりました。そんな香港で、多くの人々に使われているチャットアプリは「WhatsApp」です。 このチャットアプリは電話番号でアカウントを登録することができ、テキストメッセージをはじめ、写真や動画、音声を送ることができます。ソーシャルゲームやタイムラインなどの機能はなく、とてもシンプルな仕組みです。
WhatsAppは2009年に米国シリコンバレーでYahoo!出身のエンジニア2名によって作られたアプリです。しかし、米国ではあまり使われておらず、アフリカや南米、アジアで大変人気を博しています。その結果、ユーザー数が世界で約6億人となり、世界で最も使われているアプリになったところが、このアプリの背景として面白いところです。2月にFacebookが190憶ドルでWhatsAppを買収した際には、世界中で大きな話題になりました。
香港では、あらゆる年齢層がWhatsAppを使います。2013年のonavoの調査では、何と香港のiPhoneユーザーのうち96%がWhatsAppのアクティブユーザーであるという結果が出ました。
香港の人々は、友達や家族同士の会話はもちろん、何らかの集まりやイベントを企画するときにも、Facebookでイベントページを立ち上げるより先にWhatsAppでグループを作って日程を調整します。
いま起こっている香港のデモでは、参加者同士の連絡や情報の拡散にWhatsAppが使われていたそうです。この時、WhatsAppの拡散性を利用して、デモ関連の情報アプリに扮したマルウェア(Xsser mRAT)がWhatsAppのメッセージ経由で送られていました。一度感染すると電話帳や位置情報、写真や各種パスワードが抜き取られるというものです。コードが中国語で書かれていることなどの理由から、中国政府に関連する組織が、デモ参加者の情報を収集する目的で投入したのではないかとのうわさもありますが、真偽の程ははっきりとしていません。
また、同じくデモをきっかけに話題になったアプリとして、「FireChat」というチャットアプリがあります。こちらはインターネットにアクセスすることなく、BluetoothとWi-Fiシグナルだけを介して通信できるアプリです。通信環境が限られた途上国や、通信が混雑するイベント会場などでの利用を想定して3月にローンチされたばかりのアプリですが、香港のデモ開始以来、香港で50万以上ダウンロードされ、開発者を驚かせていました。
チャットアプリはビジネスシーンでも活躍の場を広げています。名刺をもらったら携帯番号が大抵載っているので「この携帯番号でWhatsAppをやっていますか?」と確認し、それ以降のアポイントメント調整や連絡をチャットアプリですることが多くあります。そのようなやりとりの延長で、お客さんやビジネスパートナーとカジュアルなランチを調整することもあり、人間関係が重要な中華圏の文化でチャットアプリは非常に役立っています。
また、香港人の特徴的な使い方はボイスメッセージ。香港人の多くは「話好き」かつ「せっかち」で、思ったことはすぐに伝えたい傾向にあります。また、中国と違って繁体字を標準的な字体で使っているため、チャットに打ち込むのを面倒くさがる人が多いようです。繁体字は画数が多く、一文を書くだけでも多くの文字を打ち込む必要があります。そこで、メッセージを打ち込むかわりに数秒のボイスメッセージを送る機能が大活躍し、まるでトランシーバのようなやりとりが繰り広げられています。
ここまで普及しているWhatsAppを、香港の企業がコミュニケーションチャネルとして取り入れない手はありません。特にBtoCの企業では、ウェブサイトや屋外広告にWhatsApp専用の番号を掲載し、問い合わせを受け付けている企業が多くあります。企業に問い合わせる際、電話でもウェブ上のフォームでもなく、WhatsAppのメッセージで問い合わせをするユーザーが香港には多くいるのも特徴です。
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