アップルとIBMの提携--法人市場でのシェア拡大を超える長期的なメリット

Ross Rubin (Special to CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2014年07月30日 07時30分

 IBMとAppleが協力態勢をとるのは、Intelチップへの対抗を進めていた1990年代初頭以来のことだ。このときの提携は完全に失敗に終わったが、7月に発表された両社の新しい関係は、書類上だけにしても、現時点ですでに有望そうに見える。

 今回の契約で、法人市場でのシェアが比較的低いAppleは、エンタープライズ分野に関するIBMの知見を活用するチャンスを得た。一方のIBMは、人気の高いAppleのデバイスを利用できるようになり、Hewlett-Packard(HP)やDellのサービスとの競争で有効に活用することになる。

 Appleの最高経営責任者(CEO)であるTim Cook氏は先週、同社の決算報告の電話会議で、IBMとの提携によって「iPad」の法人採用を増やすことが、iPadの販売鈍化に歯止めをかけることにつながると語った。そのために両社は、小売、ヘルスケア、金融、運輸、保険など、各業界に特化したおよそ100個のエンタープライズアプリケーションを開発中だ。

 AppleはiPadを採用したFortune 500企業の数をよく発表しているが、同社は法人市場について明らかにそれ以上のことを考えてきた。AppleとIBMはAppleの「iOS 8」上で開発を行う予定であり、同プラットフォームには、オープンなクラウドサービスからオフィス外アシスタントまで、法人向けの機能が幅広く準備されている。

IBMのCEOを務めるGinni Rometty氏(左)とアップルのCEOを務めるTim Cook氏。カリフォルニア州クパチーノにあるApple本社で撮影。
IBMのCEOを務めるGinni Rometty氏(左)とアップルのCEOを務めるTim Cook氏。カリフォルニア州クパチーノにあるApple本社で撮影。
提供:Paul Sakuma/Feature Photo Service for IBM

 この提携はMicrosoftに対する威嚇射撃だ。同社は法人向けコンピューティングの分野を広範囲にわたって制しているが、IBMの中核事業は対照的に、ハイエンドクラスのアウトソーシングと統合のタスクである。

 だが、今回の提携の中心は、現在のコンピューティング体験というよりも、むしろ次世代のモバイルだ。実際、MicrosoftのCEOであるSatya Nadella氏がスローガンとして掲げている「Mobile-First, Cloud-First」戦略に対し、AppleとIBMは「Divide and Conquer」(分割統治)というアプローチを表明している。Appleはモバイル分野において、少なくともデバイスに関しては他に類を見ないほどの成功を収めてきた。しかし、クラウド関連の実績については、以前より改善されているものの、モバイルにおける主な競合であるMicrosoftとGoogleに後れをとっている。

 だからこそ、今回の提携はAppleにとって、エンタープライズ分野にとどまらず、戦略重要な価値があり、モバイルをめぐる宿敵Googleに対抗できる資産になる可能性を秘めている。

 Appleは、「HomeKit」「HealthKit」「iBeacon」といったイニシアチブを通じて、情報を直接収集するデバイスや、他のオブジェクトから情報を集約するデバイスを開発するだろう。その情報をAppleが解釈し、同社の顧客がデータを使って有意義な意思決定を行うに当たって、IBMの分析機能が役立つ可能性もある。IBMのインテリジェンスエンジンである「Watson」は2013年、米国のクイズ番組「Jeopardy」のチャンピオン2人を破っており、iOSの音声認識アシスタント「Siri」を使った無数の質問に対して価値ある信託を告げるかもしれない。

 短期的に見れば、AppleはIBMとの提携によって、HPやMicrosoftが現在実現しているのと同じレベルのモバイルとクラウドの統合機能を、法人顧客にただちに提供できるわけではないだろう。だが、この提携が実を結べば、iOSデバイスから入力される膨大なデータポイントがIBMの分析機能にとって重要な素材となり、IBMのクラウド専門技術からAppleユーザーにとってさらに強力な製品が生まれるはずである。

IBMの「Watson」は「Siri」の生涯の親友となるかもしれない。
IBMの「Watson」は「Siri」の生涯の親友となるかもしれない。
提供:Screenshot by Marguerite Reardon/CNET

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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