この連載では、企業でのアプリのプロモーション活用から、スマートフォン広告で重要な位置を占めるテクニカルな運用型広告、メディアやアプリ・マーケットなどの市場環境を含め、“デジタルマーケティングの今”をお伝えする。
今回は、韓国や中国、タイのアプリ市場の動向を、D2Cのゲーム事業での取り組みとともに紹介したい。
2011年、市場がフィーチャーフォンからスマートフォンに本格的に舵を切り始めた。D2Cも広告事業を中心としながらも新規事業をスタートさせる好機と判断し、海外事業とコンシュマービジネスを興そうということになった。ゲーム事業もその判断の下で立ち上がったビジネスだ。
2011年中は市場環境の冷え込みもあり、ヒットゲームを生み出すことは叶わなかったが、翌年、「関ヶ原演義」というタイトルが大ヒットした。関ヶ原の戦いをモチーフとした戦国RPGで、アプリのダウンロード数は150万を突破している。
そのゲームエンジンを活用し、モチーフや世界観を変えて、いくつものヒット作をその後生み出した。今であれば、「NBAドリームチーム」がお陰様でヒットしている。このNBAという世界観は、当然、世界中でヒットする可能性が高い。この夏に韓国でのリリースが決まっているが、それを皮切りにグローバルに展開していきたいと思っている。
当初は海外でゲーム事業を展開する気はなかった。きっかけはNTTドコモから韓国のとあるデベロッパを紹介されたことだった。そのデベロッパが私たちの出しているタイトルに興味を示していると聞いて、海外を意識し始めた。というのも、紹介されたからと言って、そのデベロッパと組むのがベストかどうかはわからない。
だから、そこから足しげく現地に通って調査を始めたのだ。もともと広告部門においても、海外の視察は欠かさなかった。モバイル全体の動きは常にウォッチしておく必要があった。それは、ネット上の情報だけではわからない世界だ。たとえばモバイル分野の展示会「Mobile World Congress」などにも毎年通って、世界中のキャリアの動向を探っていた。そんなところから、海外視察の重要性はわかっていた。
韓国の詳しい事情は次回で紹介するが、すぐにわかったことは、同じモバイル大国でも、ゲームに関する限り日本とは全く違うビジネス環境下にあるということだった。当時すでにカカオトークが現在のLINE以上に普及していて、そのプラットフォーム上で開発されたゲームが爆発的にヒットしていた。特に当時はAnipangというゲームが圧倒的な強さを見せていた。
日本もよく「ガラパゴス」などといわれたが、韓国も立派にガラパゴスだった。確かにデバイスではサムスンがグローバルメーカーとなっていたが、ことモバイルゲームではガラパゴスだった。
そんなふうに韓国から始めて台湾やその他のアジアの国々を回り、マーケットごとのさまざまな特徴が見えてきた。そしてその特徴、言ってみれば癖さえわかれば、アジア各国は非常にチャンスに満ちたマーケットだと思えるようになった。
足しげく通っていると、そのローカルの勝ち方が見えてくるものだ。逆に言えば、自分自身で足を運ばないことには、その勝ち方は絶対に見えてこない。と言うものの、この連載では、少しだけ、私たちが知り得たその勝ち方を、特に韓国と台湾について紹介していくつもりだ。
その他の国、そしてアジア全体について、もう少し考察してみたい。中国は今、App Storeはあるが、Google Playは公式に存在しない。グレートファイアウォール(金盾)というインターネットの検閲システムにより、利用できないようになっている。App Storeを見てもらうとわかるのだが、中国では現在、売上トップ10のうち半分以上がTencent(テンセント)のゲームだ。
Tencentは、モバイルのアプリでいうと3億人のユーザーを抱えるWeChatと、もともとはPCのインスタントメッセンジャーであるQQプラットフォームを持っている会社である。QQだけで8億人くらいのユーザーがいる。WeChatと重複しているとしても、最低でも8億人分のアカウントを所有しているわけだ。そのため彼らはLINEゲームと同じように、WeChatに連動したゲームを出し始めている。
自社のプラットフォーム規模が3億人以上であるから、わずか1日で、売上が1、2位を占めてしまうことも珍しくない。つまり、中国でビジネスを展開しようと思ったら、このTencentとどう向き合うかをまず戦略として決めなくてはいけないことになる。
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