次に、タイを見てみよう。D2Cはタイにも積極的に出て行こうと思っている。タイには、出資提携先である現地法人MCFIVA(マックフィーバ)がある。
タイではスマートフォンが急速に普及していて、統計上は3割超ということだが、バンコク市内だけ見ると6~7割というのが実感値だ。何よりもバンコクが大事で、バンコク市内だけでタイ全体のコンテンツ消費量の7割以上が消費されると言われている。それは、それだけ可処分所得が高い人が集まっているからで、タイ全体を見て考えるというよりは、そもそもバンコクを見てビジネスをするという感じになる。
タイの通信環境は台湾とほぼ同等で、日本や韓国に次ぐクオリティだ。Wi-Fiも整備されているので、バンコク市内であればFacebookやLINE、メールにもまったく困らない。
タイにおけるゲームアプリのランキングを見ると、トップ20位でタイ語にローカライズされている作品が2~3本しかない。ほぼ英語版だ。タイでデジタルコンテンツに課金できるほど所得のある人は、英語教育をしっかりと受けていることが多い。だから、英語で作っておけば、その人たちにはリーチでできるということになる。
また、LINEのユーザー数が日本に次いで世界で2番目に多いのがタイだ。2013年までは台湾が2位だったのだが、今はタイが逆転した。タイでは、スマートフォンを持っている人はほとんど、LINEを使っているという計算になる。
タイのゲーム市場はまだ発展途上であるが、欧米の文化を許容しているとともに、親日家も多いお国柄を反映してか、たとえば最近のランキングを見ると、JRPGのブレイブフロンティアや、LINEゲーム、そしてCandy Crush Sagaといった欧米のゲームも比較的上位に入っている。LINEが入っていること以外は米国のランキングに近いという印象がある。
実は、世界で日本ほどiOSの比率が大きい国はない。アジア市場はほぼAndroid OSで、それこそ市場全体の85%から90%はAndroid端末が占めている。iPhoneはデバイスの金額が高いので、これを買えるということはそれだけで高所得者であるという証と言える。
おもしろい現象がある。タイでは、同じゲームのダウンロード数はAndroidがiOSの8倍で、売上はiOSがAndroidの3倍から4倍という現象が平気で起こる。つまりARPU(average revenue per user:顧客一人当たりの売上高)は、iPhoneがAndroidの20数倍あるということになる。それだけでもiPhoneユーザーの収入の高さがうかがい知れる。もっとも、キャンペーンで少しでも多くの人数にリーチしたいといった場合は、当然、Androidを抑えないと、いわゆる幅広い人たちにリーチできない。
こうした状況であるが、タイは台湾や韓国に比べると、日本企業がまだゲーム領域ではあまり進出していないので、早いうちに展開し勝負していくべき国だと思う。また、英語バージョンを作ればいいというのもメリットだ。英語バージョンを作っておけば、そのゲームを、たとえばARPUは低いが人口の多いインドネシアやフィリピンなどにおいて、英語が話せて可処分所得が高い人がいる地域にもそのまま展開できるからだ。日本や韓国の場合、カスタマーサービスがとても大切になるが、こうした地域ではその点はまだあまり重要視されていない。だからとにかくストアに並べて、売上を上げることができる。
ちなみに韓国では、ゲームに熱中する人が多く、何かあってゲームが途中で強制終了したり、持っていたポイントがなくなったりすると、すぐに電話が掛かってきたり、場合によっては会社にまでクレームにくる。そのため専門業者にアウトソーシングしないと業務にならない。
言語について説明すると、台湾および香港、マカオは、中国語でも繁体字を使う。そのため、この3地域では同じバージョンがそのまま使えて、売上の最大化を図りやすいのである。
次回は、韓国市場を検証してみたい。
(執筆:D2C ゲーム事業本部 本部長 渡具知直也)
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