ビッグデータ、データサイエンティストの必要性を考える

田中美樹(D2C)2014年02月26日 09時30分
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 この連載では、企業でのアプリのプロモーション活用から、スマートフォン広告で重要な位置を占めるテクニカルな運用型広告、メディアやアプリ・マーケットなどの市場環境を含め、“デジタルマーケティングの今”をお伝えする。

 ビッグデータ活用の必要性が騒がれて久しい昨今であるが、そもそもビッグデータとは何を指すのであろうか。たとえば、GMS(総合スーパー)では10年以上前から、毎日収集される大量のPOSデータを分析して、売り場の構築や品ぞろえ、商品仕入れなどに活用している。このように大量データの活用例であれば枚挙に暇がないが、これらはビッグデータの定義からは外れているのであろうか。

 鈴木良介著「ビッグデータビジネスの時代」(翔泳社)によると、ビッグデータを「事業に役立つ知見を導出するためのデータ」とし、ビッグデータビジネスについて「ビッグデータを用いて社会・経済の問題解決や、業務の付加価値向上を行う、あるいは支援する事業」と定義している。

 インターネット業界においては、Amazonのレコメンド機能やGoogleなどが提供している検索予測などがビッグデータ活用の代表事例だ。Amazonのレコメンド機能は、購買履歴やサイト内の回遊データなどを解析することによって、購入促進をしている。Googleなどが提供している検索予測では、検索ボックスに入力した文字列やウェブページのコンテンツなどを反映している。ちなみにD2Cでもビッグデータの活用を本格的に開始している。

 D2Cの事業セグメントは「モバイル・ワイヤレス」である。モバイルデバイスはユーザーと30cm以内に近接する情報端末であり、スマートフォンの普及により蓄積データは指数的に伸びている。D2Cでも蓄積されるデータは1日あたり数十テラバイトにのぼる。しかしながら、この膨大なデータのうち有用なものは一部であるため、DMP(データマネジメントプラットフォーム:データ解析基盤)を自社で構築し、データサイエンティストと呼ばれる人材が日々マネジリアルなアウトプットを出すべく業務にあたっている。

データサイエンティストは必要なのか

 ビッグデータと並んでよく議論されているのが「データサイエンティスト」である。データサイエンティストに求められるスキルは(1)コンピュータサイエンス、(2)データ分析、(3)ビジネスの3つと言われている。つまり“システム基盤構築”から“ビジネス推進”までがカバー範囲であるとされている。

  1. コンピュータサイエンス:「ビッグデータ」を収集、加工、分析するためのプラットフォームを構築
  2. データ分析:適した統計手法やモデリングによって「ビッグデータ」を処理、分析
  3. ビジネス:企業の戦略、課題、外部環境などを把握した上で的確な指標を選定し、ビッグデータを分析。そこから得られた情報を説明して実行する

 先に少し述べたが、D2Cでも2012年にデータサイエンティストを複数採用して専任部署である「ビジネス・インテリジェンス・コンピテンシー・センター」を立ち上げた。実際に、私たちの業務もシステム基盤構築からビジネス推進までを求められている。しかしながら、上記すべてのスキルを満たす人材はそういない。それぞれの要求スキルが深く、狭いものであるからだ。

 そこで私たちは、ビジネスに長けた人材、分析やモデリングに長けた人材、ITに長けた人材を揃えて、相互補完して分析をして提案する総合力を担保している。それにより、データ収集・分析に基づく課題の抽出やその対策を立案できるという理想に基づくものである。

 一部には、BIツールの進化にともなってデータサイエンティストは今後不要になるという意見もある。先進のツールを使えば、誰もが同じようなことができるという意味のようだ。しかし、そうやすやすとうまくいくものではないことを私たちは学んできた。事象の原因や目的を明確にし、それに適した数値や指標を最適な見方で分析・追究する。そして、実際の業務フローや実施可能な施策に落とし込む。

 BIツールは、このような一連の流れの“分析”(さらに言うならば分析の“可視化”)の手助けをしてくれるが、BIツールに指示をするのは人間である。つまり、その人間による分析の意思・視点が重要であるということだ。データサイエンティストは高度な分析手法を使ってよくわからない結果を出す人であると思われがちだが、実際は生のデータを時間をかけて確認するなど、地味な作業が業務時間の大半を占める。分析意思・視点の醸成には高度な分析手法もさることながら、じっくりとデータを俯瞰することが重要であると考えている。

収益を上げるならデータを「見る」

 

 ビッグデータを活用して何を成し遂げたいかが明確であれば、一般の事業会社の場合、現在のリソースでも十分活用可能な環境にあるはずと考える。もう一歩踏み込むと、その成し遂げたいことにビッグデータが必要か、どう活用すると収益に直結するかが重要だろう。

 ビッグデータを活用するために、システムに投資をして人材を採用する。Amazonのようにレコメンド機能を追加してみる。これで収益が劇的に改善する……はずがない。答えは単純で、レコメンド機能を追加してみても、それを見る顧客数がそもそも少なければ収益改善は限定的になる。

 収益を上げたいならば、以下のような視点でデータを見ると良いだろう。

  1. 事象の原因や事業の目的を明確にする
  2. 事業のKPI (重要業績評価指標)を分解・整理。その原因や目的が分解した指標のどれに該当・影響するものであるかを把握し、見るべき数値を選択する。この時、KPIも指標も自社でコントロール可能な数値であって、コントロール不可能な数値を見続けても実施可能な施策は生まれてこない。また、指標ごとに考え得る打ち手を整理する
  3. 指標の変化によって適した実施可能な施策を立案する。立案した施策が実施されないことには、何も始まらない

 上記のような視点でデータを見ていくと、必ずしもビッグデータを活用することに躍起になる必要がなく、現状のリソースでもスタートが可能であるように感じていただけるのではないだろうか。

(執筆:D2C ドコモメディア事業本部 メディア・ストラテジー・グループ 田中美樹)

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