顧客行動を可視化する 「カスタマージャーニーマップ」とは

菅原太郎(D2C)2014年02月12日 14時00分

 この連載では、企業でのアプリのプロモーション活用から、スマートフォン広告で重要な位置を占めるテクニカルな運用型広告、メディアやアプリ・マーケットなどの市場環境を含め、広告・マーケティング分野における“スマートフォンの今”をお伝えする。

 カスタマーエクスペリエンス(顧客経験価値)が、サービスの設計やマーケティング施策において重要なものとなっている。それには、顧客が自社の商品やサービスを利用するシチュエーションまたはその際の心理など、5W1Hを踏まえてイメージする必要がある。つまり、“モノ(商品)”ではなく“コト(体験)”を起点にアイデアを探るのだ。そのカスタマーエクスペリエンスを導き出すために活用するのが「カスタマージャーニーマップ」である。

顧客モデルごとの体験プロセスを“旅”に見立てる

 カスタマージャーニーマップとは、顧客がある製品を購入したり、サービスを利用したりする際に、そのプロセスのさまざまな段階における顧客のニーズを満たすために用意すべき施策、その施策によってもたらされる顧客の感情の動きなどを時系列に沿って視覚的に表現するモデルである。顧客行動のコンテキストを旅(ジャーニー)になぞらえて可視化する。

 まずは顧客モデルを決める。これをペルソナという。現代は、F1やF2といった性別・年齢層だけでは何も特定できない時代だ。所得や性格、趣味、居住地などの詳細なモデルを作り、彼らのニーズや対象となる製品やサービス(=商品)に対するスタンスを明確にする。そうすれば、そのモデルごとのライフスタイルはもちろん、商品に対するニーズや期待値も自ずと見えてくるはずだ。

 次にそうした顧客が何を最終的に求めるかを考える。そして、商品を認知していない段階から、その最終的なゴールに向かって顧客が歩む旅を時系列で図示していく。どのようなプロセスを経ることで、顧客を旅のゴールに導くことができるのであろうか。段階を決め、その段階ごとに顧客が商品にふれるコンタクトポイント(顧客接点)を明確にしていく。

 現状、自社が持っていないコンタクトポイントこそ重要であるから、その可能性を見つけ出していく作業ともいえる。また、そのコンタクトポイントごとで顧客にサービスを提供する担当者(担当部署)を明確にするとともに、現状にとらわれることなく、そこでどのような施策を行うことが有効と思われるかを記載していく。

 ここまでで、顧客が辿る旅の各コンタクトポイントで出会う施策、その担当者が明らかになるが、さらにその時々で顧客の気持ちがどのように動くかを想像する。それはポジティブな動きの場合もあれば、ネガティブな動きの場合もあるはずだ。

顧客の行動は3つのパターンで表せる

 こうした分析をすることで、何を得られるのだろうか。1つは広い視野だ。自社がどのような業種業態であろうとも、顧客が生まれ、自社のサービスを享受し、あるいは製品を購入してそれを使用し、好印象を持てばその使い勝手などを友達にシェアし、さらに再購入や再体験へと進み、リピーターとなっていく。

 そうやって顧客の生涯価値を高めるために必要な、自社が関係するコンタクトポイントや、直接は関係しないコンタクトポイントの重要性を俯瞰できるようになるはずだ。その中に今まで意識していなかったポイントがあるとすれば、そのポイントでの施策をどう強化していくべきかを考える必要がある。

 このマップを完成させるためには、想像だけではなく実際の顧客インタビューをはじめ、さまざまな調査が必要になる。顧客行動を収集し、顧客が段階ごとに考えていることや感じていることを知る必要があるからだ。そうして得られたデータが指し示すポイントを直感的に把握するには、こうした図示は極めて有効だ。当然、施策を立てる上でも有効な施策をどのタイミングでどのように行うべきかがわかりやすい。もちろん、自社の弱みなど課題も浮き彫りになる。その課題をどのように潰していくかを次に検討する。

 ちなみにこのマップ上では、顧客の行動は次の3つのパターンのいずれかで表される。(1)時間軸がない行動群、(2)直線的な行動、(3)時間軸がある行動群。(1)は4つの「→」を使って円を描く。ある目的のために行う行動群であるが時系列はない。(2)は「→」で表す。何かが終わって次に向かう行動だ。(3)は上下に蛇行する「→」で表される。ある目的のためのプロセスだが、(1)と違って時系列に沿っている場合を表す。


出典:Adaptive Pathの資料より

 Adaptive Pathの図に見るように、全体の旅をいくつかの適当なフェーズに分け、段階ごとに顧客がどのような行動をするかを、この3つのパターンで表していく。そして、それぞれの段階で顧客は何を考えているか、何を感じているか、関係する部署は何か、どのような施策を行うべきかなどを書き込んでいく。

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