この連載では、スマートフォンのマーケティング活用についてさまざまな観点から検証してきたが、今回は企業のオウンドメディアであるスマートフォンサイトの状況について検証してみたい。今ではPCサイトを持たない企業は極めて少ないだろう。その後、フィーチャーフォンサイトも無視できないメディアとなり、ほとんどのBtoC企業は、フィーチャーフォンサイトを開設している。
ではスマートフォンサイトはどのような状況だろうか。D2Cが5月に実施した調査では、全体の22.9%の企業がスマートフォンサイトを開設済みだと回答している。また、BtoC向けに事業を展開している企業では、42.0%が開設済みだと回答している。スマートフォンの普及率は40%を超えており、それと比較すると企業のスマートフォン開設率はまだまだ低いと言えるだろう。
加えて開設済みの企業でも、スマートフォンサイトを新たに構築したケースや、トップページやメニューページだけをスマートフォン対応のサイトとして下位のページではPCサイトへ飛ばしているケース、サイト変換ツールを利用しているケースなど、対応方法はさまざまであり、いまだ過渡期的な状況だといえそうだ。
ただし、業種や自社の商品、サービスのターゲットによって、かなり状況は異なる。特にスマートフォン対応が進んでいる業種としては、Eコマースがある。ネットが前提のサービスであるため、ユーザーがPCやフィーチャーフォンからスマートフォンへ移行するハードルは低い。
楽天市場では、2012年12月の時点で、すでに売上の25%がスマートフォン経由だという。かといって、PCでショッピングをしていたユーザーが、すべてスマートフォンにシフトしてしまうわけではなく、タイミングやシチュエーションで、利用しやすい端末を使うようになっているのだ。企業は、ユーザーがもっとも便利な形で情報収集やショッピングをできる環境を整えることが肝要だ。その他にも、ネットで完結できるサービス、金融や保険といった業種でもスマートフォンへの対応は進んでいる。
従来から、消費財あるいはコンビニ回りの商材などは、ユーザー属性や情報接触のシチュエーションなどから、フィーチャーフォンとの相性がよいとされてきた。店舗などを持たないメーカーにとっては、スマートフォンサイトはフィーチャーフォンと同様にユーザーが常に持ち歩くデバイスであるため、よりクオリティが高い情報を発信できるチャネルとなりえる。
たとえば、多くの食品メーカーは、PCサイト上でレシピコンテンツを提供している。しかし、料理をするためにPCを立ち上げたりはしないユーザーも多かったのではないだろうか。あるいはレシピをプリントアウトして使用していたかもしれない。それが、スマートフォンやタブレット端末になれば、キッチンで気軽にレシピを見ながら料理することも簡単だろう。そういった観点から、スマートフォンへの新たなコミュニケーションチャネルとしての期待値は大きい。
企業は、まずPCサイトを構築することで、ネットをビジネスに活用するようになった。その後、フィーチャーフォンのサイトを開設する企業も増加したが、PCサイトとフィーチャーフォンサイトは、まったくの別物として位置づけられていた。コンテンツの内容も大きく異なり、多くのフィーチャーフォンサイトには会社概要などは掲載されていないケースが多い。
そして、スマートフォンの登場により、企業はスマートフォンサイトの位置づけを検討することとなった。当初はPCのコンテンツの“何を”、“どのような形で”スマートフォンサイトに載せるのか、という形で検討する企業が多かったようだ。あくまで、PCサイト主体の考え方だ。しかし、現在は、オウンドメディア全体を「スマートフォンサイトを起点に考えるべきだ」とする企業が増えてきた。ユーザーインターフェースからユーザビリティ、コンテンツの内容にいたるまで、いかに最適な形でスマートフォンサイトに反映するかを模索している。
今後、企業サイトへの流入経路がスマートフォン、タブレット端末に移行していくことは必定だ。企業が「スマートフォンファースト」でオウンドメディアを再構築していくことは、至極もっともなことだといえる。
(執筆:D2C 広報宣伝部 高橋伸也)
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