ヤフーとアドビ システムズは2月14日、広告におけるクリエイティブ制作分野で業務提携すると発表した。具体的には、アドビ システムズのデジタルマーケティングソリューション「Adobe Marketing Cloud」に含まれるデジタルコンテンツ管理ソリューション「Adobe Experience Manager」を元に独自カスタマイズしたシステムと、クリエイティブアプリケーション群「Adobe Creative Cloud」を組み合わせ、「Yahoo! クリエイティブスタジオ」として、今春からクリエイターや広告会社などに向けて提供する。従量課金制の予定だが、価格は未定でこれから詰めていく。
ヤフーのマーケティングソリューションカンパニーは、2013年にデータマネージメントプラットフォーム事業やDSP事業、ビデオ広告事業に進出するなどの取り組みを発表してきた。ヤフーの執行役員でマーケティングソリューションカンパニー長である荒波修氏は、「基本的にこれまで、どちらかというとテクノロジーよりにさまざまな発表をしてきた。つまりユーザーと広告主をいかに効果的、効率的にマッチングするか、ターゲティングするかといった技術よりの話が多かった。今年、ヤフーとしてぜひ取り組みたいと思っているのは、これらテクノロジーに加えてアートの領域。やはりインターネット広告の質を高めていくうえでの最後の決め手は、ユーザーの記憶に残るすばらしいクリエイティブを作れるかどうかということ」と意気込んだ。
一方、アドビ システムズの代表取締役社長であるクレイグ・ティーゲル氏は、「Creative Cloudを世界、日本で導入してから2年になるが、この期間で加入者は150万人を超えた。私たちは、デジタルマーケティングはアートとサイエンスを融合させるものだと考えている。アドビの提供するCreative CloudとMarketing Cloudを活用することにより、新しいサービスの元で顧客が制作から最終的にはウェブサイトへの広告の表示までを含めて非常に合理化してもらえるようになっている。プロセスを合理化することでクリエイティビティが顧客の手に戻ることになるだろう」と、提携の意義を述べた。
ヤフーは、Yahoo! クリエイティブスタジオによって、クリエイターが抱える4つの苦悩や課題を解決するとしている。
1つめは発注者との膨大なやりとりで、ヤフーのサイトでもさまざまなクリエイティブがあるが、メールやファイルのやりとりが非常に多いという。2つめは埋没するノウハウで、いろいろなクリエイターにさまざまな部署が発注するが、なかなかノウハウがたまりづらく、共有されにくい。その結果として、クリエイターはいつも前例がないものに挑んでいるという。3つめは不透明なメディアの掲載審査で、クリエイターからすると「どうしてこれがダメなのか」といったファジーな部分が事実上多いという。そして4つめは効果がどうだったかということがクリエイターにフィードバックされないので、次に活かせていないという。
さらに、現在クリエイティブの領域は、制作、クライアントチェック、メディアのチェック、広告出稿、レポートの検証(効果測定)に壁ができているとも指摘した。これが、結果としてそれぞれのコスト増につながり、個別最適につながるという問題がある。つまり、プロセスが分断されていることで、後工程で何かが起こると、すべて前工程である制作に戻されるため、よりいっそうクリエイターの負担は重いというわけだ。
こうした4つの課題を解決し、分断されたプロセスを、Yahoo! クリエイティブスタジオでシームレスにつなげ、制作を担っているクリエイターがよりアイデアに集中できる環境作りを目指す。最先端のワークフロー管理は、クラウド上でリアルタイムにクリエイタ-、営業担当者、発注者がコメントを修正して、さらに履歴も蓄積され、チームで共有することも可能だ。
Yahoo! クリエイティブスタジオは、今春のリリース当初はヤフーと取引のある数百社の制作会社や広告会社など、法人向けをターゲットとする。年内には、個人や個人事業主のクリエイターにも利用してもらえる環境を構築する。また、未定となっている利用料金だが、基本的にはAdobe Experience Manager機能とAdobe Creative Cloudの利用権を組み合わせたような形となるが、Adobe Creative Cloudに関してはすでに利用している場合もあり得るため、そうした法人、人にはデータベース機能の単品を使えるようにするなど、柔軟な利用方法、料金体系にする方針だ。
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