「打ち上げ花火は続けない」--ヤフー小澤氏に聞くEC革命の本音

 「優れた企業のマネをして一生懸命追いつこうとしていた。それが根本的な間違いだった」――2013年10月、「Yahoo!ショッピング」のストア出店料と売上手数料の無料化を発表し、EC市場での再起を誓ったヤフー。その効果は大きく、約3カ月間で出店希望者は約9万件に急増、減少が続いていた取引高も2013年12月には過去最高を記録した。

 EC無料化の発表後もその手を緩めることはなく、1月中旬には全国の自治体と連携して各地の名産品の取り扱いを開始。さらに、1月末には個人ユーザーによるストア出店を可能にした。この他にも、スマートフォンから手軽にストアを構築できるツールをはじめ、100以上の機能改善を実施しているという。

 こうした実績を見るとYahoo!ショッピングの改革は順調に進んでいるようにも見えるが、収益的に見ればこのEC革命の影響を受けて、2014年3月期第3四半期(2013年10~12月期)決算は、前年同四半期比ベースで創業以来初めて減益となった。アマゾンや楽天といったビッグプレーヤーが君臨するEC市場で、同社はこのまま存在感を高めることができるのか。EC事業のキーマンである、ヤフー 執行役員 ショッピングカンパニー長の小澤隆生氏に聞いた。


ヤフー 執行役員 ショッピングカンパニー長の小澤隆生氏

――改めてEC無料化の狙いを教えて下さい。

 ヤフーとして、(アマゾンや楽天に次ぐ)業界3番手のECサイトをこのまま続けていくのかということですね。やはり5~10年後を考えると、根本的に思い切った手を打つ必要があると考えたわけです。また、それに加えてヤフーとしてEC市場の拡大のスピードを早められないかと考えました。もちろん放っておいても市場は拡大するのですが、いかにそのスピードを上げていくかということです。まさにインターネットの利用者を増やすためにYahoo!BBのモデムを配ったかのように、ECの利用料をできるだけ下げて、強引にでも市場を拡大させていくということですね。

――これまでEC市場で国内3番手だった要因はどこにあると考えますか。

 それはもう、力の入れ方じゃないですかね。アマゾンにしても楽天にしてもコマースが中心の会社ですけど、ヤフーはメディアを生かした広告の会社ですから。人的リソースや全体の売上げに占める割合も含めて考えると、企業としての性質は全然違ったと思います。

――出店希望者が約9万人を超えたそうですが、実際の開店状況はいかがでしょう。

 12月末時点で約3万店舗ですので、EC無料化を発表して約3カ月で1万店舗ほど増えたということですね。私たちは出店希望者を審査してアカウントを発行しているのですが、審査を通過した事業者が開店するタイミングはお任せしているので、店舗数は分刻みで変わっています。もちろん、スピードを早めるために我々も一生懸サポートをしているのですが、さすがに数が多くてヒーヒーいっているところです。

 また、簡単にストアを構築できるツール「ストアクリエイター」を公開してから2週間ほど経ちましたが、順調に出店数や出品数は伸びています。これまで提供していたツールでは難しすぎて出品できないと感じていた方を、カバーできるようになった意味は大きいと思います。

――1月末から個人ユーザーによる出店も可能になりました。その狙いや期待する効果は。

 現在は、10月から先行予約という形で申し込みいただいた方にご案内をしていて、すでに出店ツールを一部に公開している状況です(2月12日により一般公開)。個人ユーザーには使い終わったもの、つまり中古品を売っていただきたいと思っています。もちろん「Etsy」(米国のハンドメイドマーケットサイト)のような領域も期待はしていますが、日本のハンドメイド系のECサイトを見ていてもそこまで取扱高は高くないので、やはり主戦場は中古品になるんじゃないでしょうか。

 まずは、自分で使っていたものを捨てるとか、タンスにしまっておくだけじゃなくて、インターネットで売るという文化ができることが重要だと思っています。ヤフーにはリユース(再使用)の場として「ヤフオク!」がありますが、オークションだけが中古品を売り買いする場ではありません。価格が安かったり、レアではないものはフリーマーケットのような場で売り買いもできると思います。新たにYahoo!ショッピングで個人がお店を持てるようにすることで、買い物の方法を増やすということですね。

 また、個人の出店に対応したタイミングで、Yahoo!ショッピング内に個人の出品物だけを売り買いできる「個人」のタブを設けました。ただし、当面は全体の出品数にしめる個人の出品数の割合はコンマ以下かと思いますので、ここは粛々と商品数を増やしていくことになると思います。

――第3四半期(2013年10月~12月)は、EC無料化が影響し創業以来初の減益となりました。今後は、Yahoo!ショッピングの商品数やユーザー数を拡大することで、広告収入による売上増を目指すとしていますが、増益に転じるタイミングは。

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