オムニチャネルを構築するためには、送客の方法だけを検討するのではなく、こうした分析をして、場合によっては組織改編をともなう大々的な戦略の転換を検討する必要がある。デジタル部門だけが、あるいはマーケティング部門だけが携わるべき問題ではなく、会社全体として取り組む必要があることは言うまでもない。すなわち、研究開発部門も営業部門も、宣伝広報部門も同じテーブルについて検討すべきことなのである。
なぜならば、場合によっては店舗自体の存在意義の再検討、また流通対策、あるいは開発プロセスの変更までにも話が及ぶ可能性を秘めているからだ。ここまで積み上げてきた自社都合ではなく、顧客起点ですべてを論じ事業の再定義をすることでしか本格的なオムニチャネルの構築はできないと思っていただきたい。カスタマージャーニーマップはそのための地図であって、決してカンパニージャーニーマップではない。
インターネットの普及発展、そしてモバイルマーケティング、SNSの進展、さらにスマートデバイスの登場には、それだけのインパクトがある。特に24時間、30cm以内にあるスマートデバイスの存在は、コンタクトポイントを飛躍的に増大させ企業にオムニチャネルの構築を迫っている。消費者はいつ、どこにいても、多くの情報をリッチなデータとして取得し、閲覧することができる。だからこそ、コンタクトポイントが少ない従来型の業種業態や企業は、消費者の興味対象から外れてしまう可能性が高いのだ。
ECは否応なしに伸びていく。予約や購入、情報収集はスマートデバイスさえあれば事足りてしまう。では、どのように店舗に足を運ばせるべきなのか。「クーポンを配ればそれでいい」はずはない。店舗にどのような魅力を付加するべきか。店舗に来る前後で顧客にどのような形でタッチすることが大切なのか。それを考えるためには、先に示したカスタマージャーニーマップが有効なのだ。
動機付けには「外的動機付け」と「内的動機付け」の2つがある。クーポンや値引きなどは、賞金や報酬などと同じで外的動機付けである。外的動機付けはすぐにインフレーションを起こすから実は危険だ。それよりも、ワクワクする体験ができそうだという期待を提供することで、内的動機付けをすることのほうが効果的だ。それはストーリーの提供かもしれないし、世界観の共有かもしれない。一緒に商品を作り上げていく体験かもしれない。あるいは「まさに自分が求めていたモノ」という演出かもしれない。それらを施策として実行するためには、リアルな体験ももちろん大切であるがバーチャルな体験もまた重要なのだ。
オムニチャネルやO2Oは決して送客を意味するものではない。リアルも含めたすべてのチャネルで顧客を取り込んでファン化し、顧客の生涯価値を高めることを意味する。そのためには、今まで以上にデジタル施策を重視していくことが必要だと思われる。
(執筆:D2C 営業本部 ソリューション部 マーケティングプランナー 菅原太郎)
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