デジタルを活用して目標達成する組織のあり方--転換する流通(4)

別井貴志 (編集部)2013年08月09日 16時54分
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 消費者の購買に関わる行動や影響は、オンラインとオフラインの垣根がどんどんなくなっている中、メーカーや卸売り、小売りといった流通市場は、消費者のニーズを的確に捉え、消費体験を価値あることにするために、デジタルデータをどのように活用していけばいいのか――。

 このテーマについて、キリンの経営企画部 新市場創造室 主査である浅野高弘氏、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)のエンタテインメント事業本部 販促企画Unit Leaderである中西健次氏、アドビ システムズのマーケティング本部 マーケティングインテリジェンス部 デジタルマーケティングスペシャリストである井上慎也氏の3者で議論した。

 第3回では、顧客や消費者が求めていることをどのように把握し、そうしたニーズを反映した商品やサービスを、どのように訴求するかについて議論した。訴求の方法については、オンラインでテストなどをして試行錯誤を繰り返しながら進めていくという話だったが、今回はその進め方について組織の話などにも触れた。

--アドビでは、製品を知ってもらうために訴求方法をいろいろ変えて試しているということでしたが、そういった取り組みはどのように進みましたか。

  • アドビ システムズのマーケティング本部 マーケティングインテリジェンス部 デジタルマーケティングスペシャリストである井上慎也氏

井上(アドビ):今もずっと社内で言われているメッセージが、「Marketing by Numbers」ということです。取り組みに対しては、すべて目標とKPI(目標を達成するための評価指標)を設定し、実行した結果がどうだったのかということを、わかることは簡単に数値で評価し、わかりにくいこともなるべく数値として客観的に判断してやりなさい、ということを重視しています。つまり、“勘”と“やりっぱなし”のマーケティングからの脱却ですね。

 顧客がどんどんオンラインに移行していることも、マーケティングをデジタルに移行した一つの理由ですが、マーケティング自身がデジタルに移行することで何かしら物事がデータでわかって、失敗も含めて改善ができるのです。そのうえで、わからないことがあればテストをして判別しましょう、というのが当初は専門チームを主導に進められてきましたが、いまはもう全社的なカルチャーになったというのがおもしろいところではあります。

--こうした取り組みは、トップダウンなのですか。

井上(アドビ):当初はトップダウンでした。私は日本でのこういった試み、カルチャーを促進する役割で約3年前にアドビに入りました。当時を振り返ってみると、Omnitureを買収した当時ではありましたが、代表的な製品であったWeb解析のSiteCatalystについては、元々社内では一応導入はしているけれども、日本ではほぼ使われていなかったのです。

 当初の試みとして、まず社内にSiteCatalystを使うといろいろなものが見えるということを使い方を含めてトレーニングしようとしたのですが、製品担当も含めてなかなか実際には使ってもらえませんでした。

 そこで、実際に各担当者のビジネスと活動を理解し、適切なKPIの設定、そして実施のレポートの作成を含めて手助けすることで、広告の効果やサイトのアクセス解析を含めてある程度数値化したのですが、レポートを作るだけで満足し、数値を見るだけで止まってしまうのです。

 そこで、米国本社チームの「オプティマイゼーション・チーム(改善チーム)」と協力して、課題の解明や改善のためのテストをしていきましょうということで、サイトのレイアウトやメッセージ、ビジュアルを変えることによって閲覧行動や売り上げの貢献がどう変わるのかなどを試していきました。何が課題か、何が知りたいかといったことをビジネス担当者や開発者らに聞いて回り、データの分析やテストによって、実ビジネスに影響をあたえることを実感して欲しかったのです。

 たとえば、アドビのECサイトは以前なかなか売り上げが伸びなかったのですが、「何%のコンバージョンが上がって売上が上がりました。こっちのコミュニケーションがいいです」、「この改善のウェブサイト変更を行うと、1年でこれぐらいの売上増になりますよね」というのをひたすら繰り返し、売り上げ増につながっていきました。こういった試みと実際のビジネスが改善された数字と結果を、担当者とマネジメントにコミュニケーションしていたのです。

 こういった試みはグローバル規模で行われているのですが、おもしろかったのが、トップページをデザイン変更するときに、デザイン部門からレイアウトや色に関していろいろ提案がありテストを進めていたのですが、途中で本社の社長が「この色が好きだからいいと思う」と言ってきました。じゃあ、それもテストしようという話になって、実際にテストしてみると、効果としては社長の案が最下位でした(笑)。社長に「これがテストの結果の数値で、一番顧客が反応してくれたのでこちらを採用しました」と報告し、納得してもらいましたが、その後は「僕が最初提案したのはテストで落ちてね」と社外でもネタにしているようです(笑)。

  • キリンの経営企画部 新市場創造室 主査である浅野高弘氏

--いわゆる鶴の一声とはいかないわけですね。

浅野(キリン):それを覆すぐらい評価が徹底しているといいですよね。

井上(アドビ):やっぱり、実際にテストをしてお客さんの声で判別したり、何か変えることでビジネスにインパクトがあるというのをどんどん示し始めて、日に日に担当者だけでなく、マネジメントや他の部署からの声があったり、社内でのアテンションが変わってきたというのがおもしろかったですね。実際の顧客の情報や実ビジネス影響のあることを継続的に伝えていく必要があります。最初は本当に相手にされなかったんですよ(笑)。面倒くさい、使いづらいとか。何か意味があるの? という感じでした。

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