Apple Computerの創設から6年後、共同創設者兼会長のSteve Jobs氏は、同社には統一されたデザイン理念が絶対に必要だと判断した。伝説のインダストリアルデザイナーで、Frog Designの創設者でもあるHartmut Esslinger氏は、米国時間2月16日に米国で発売された著書「Design Forward」の中で、Frog DesignとJobs氏がAppleのスタイル感覚を合理化するために、いかに協力してきたのかを明かした。
話は1982年に遡る。当時、Appleの各製品部門には、それぞれ独自のデザイン責任者がいた。このアプローチだと混乱状態が発生する可能性があることに気づいた(そして、Xeroxによる同様の動きに追随した)Appleの複数のデザイナーは、著名なグローバルデザイン企業2社を競わせるコンテストを主催した。ARNOLDSCHE Art Publishersによって米CNETに提供された「Design Forward」の中の一節には、「Appleは最終的な勝者を選び、その後、同社の新しいデザイン言語のフレームワークとしてそのデザインを採用する」と書かれている。
Esslinger氏はAppleの製品開発プロセスに欠けている点を見抜き、「Mac」を100万台売る(当時の「Apple II」コンピュータの販売台数が10万台だったことを考えると、非常に高い目標だ)ことを夢見ていた面接官のJobs氏を大喜びさせた、とEsslinger氏は著書の中で述べている。
「私はSteveが目標を達成できるように、彼にいくつかの提案をした。第一に、Appleには、エンジニアリング、サードパーティーとのパートナーシップ、製造、物流、およびデザインに関して、これまでと全く異なるシステムが必要になるだろう。さらに、Appleは世界に通用する機械工学を欠いているが、ソニーやキヤノン、サムスンなどのアジアの家電企業を開発および製造パートナーとして利用することで、それを補えるということも私は提案した。これは最も重要なことだが、AppleにはSteve直属の1つのデザインチームが必要であり、Appleの戦略的計画において、実際の製品開発よりもはるかに早い段階でそのデザインを取り込まなければならない、と私は説明した」(Esslinger氏)
面接に合格したFrog Designは、大きな利益を生むAppleとの200万ドルの年間契約、そして何よりもデザインを牛耳る許可を勝ち取るために、種々の技法を取り入れたモックコンピュータ群を提出した。ドイツのデザイン企業であるFrog Designは、コンテストに勝利した。
ほかの多くの提案の中でも、Jobs氏はEsslinger氏に対し、ソニーのシンプルではあるがシャープなデザイン標準を参考にしたコンピュータを作るように求めた。Appleの前にソニー製品のデザインを担当した経験を持つEsslinger氏にとって、それはかなり簡単な仕事だった。しかし、製造コストの高さとクールな要素の欠如が原因で、このアイデアは棚上げにされた。
提供: Hartmut Esslinger, Frog team