Facebookの株式公開(IPO)を5月18日に控え、主要な英語ニュースサイトの経済欄やテクノロジ欄が連日、IPOで紙面を賑わせている。
シリコンバレーの新興勢のなかでも「真打ち」にあたるFacebookが、文字通り「満を持して」株式を公開するということで、この話自体でとくに目新しい事実などが出てくるわけでもないのだが、それでも1995年のNetscape、2004年のGoogleという2社のそれに匹敵する重みを持つIPOであり、しかもその規模が桁違いに大きいことから、否が応でも皆の興味をかき立てているようだ(註1、2)。
また、ニュースを伝える側としては正に「ここが稼ぎ時」という感じで、「年間利益(昨年度実績約10億ドル)の100倍もの評価額ってどうよ?」(註3)だとか、「年間売上が40億ドル未満、しかもその8割がもっぱらPCユーザー向けのディスプレイ広告 … これから本当に(すくなくともGoogle程度に)稼げるようになるの?」(註4)といった重要な問いかけから、ほとんど重要でないこと——たとえば、ハーバード大学時代に「Thefacebook」の立ち上げに関わりながら、後に裁判で争うことになったEduardo Saverin氏(ここ2年ほどシンガポールで地元セレブやモデルとパーティ三昧、しかも節税対策で米国籍を放棄した)(註5)など——まで、それこそあらん限りのことを書き立てている、といった印象を受ける。
CEOのMark Zuckerberg氏の、例のピンストライプ(グレイの地に白い縦縞)入りスウェットパーカー(hoodie:以下、フーディ)をめぐる話題も、そうしたFacebook関連のネタのひとつだ。先週7日から各地で開催された投資家向けの「ロードショー」(株式公開にあたっての説明会)に、Zuckerberg氏がスーツではなくフーディ姿で現れたことについて、ある証券アナリストが「不真面目("lack of seriousness")」「(潜在的株主への)敬意が足りない」と小言をいったというのである(註6)。
May 7 (Bloomberg) -- Michael Pachter, a managing director at Wedbush Securities, talks about Facebook Inc.'s leadership and planned public stock offering. He speaks with Emily Chang on Bloomberg Television's "Bloomberg West." -- Zuckerberg's Hoodie a 'Mark of Immaturity,' Analyst Says
このビデオにあるとおり、以前ZDNet Japanのコラムで触れたBloomberg WestのEmily Changが番組のなかで、Michael Pachter氏なる証券アナリストにインタビュー。そして、それをもとにBloombergのブログ「Tech Deals」が「あるアナリスト曰く、Zuckerberg氏のフーディは『未熟者の証』」("Zuckerberg's Hoodie a 'Mark of Immaturity,' Analyst Says")なる釣りっぽいタイトルの記事を掲載すると、これがたちまち各所に広まり、さらにZuckerberg氏の姉であるRandi Zuckerberg氏がTwitterで「じゃあ、こういうのもあるわよ?」とインベストメントバンカー御用達のピンストライプを使ったフーディを紹介するに及んで、Wall Street Journalまでが面白がって話題にする騒ぎになった(註7)。
小言を言った証券アナリスト本人が、Facebookのターゲットプライスを44ドルとかなり高めに設定していること、FacebookのCOOであるSheryl Sandberg氏のような「大人の後見人」がついて、かなり前から日常業務などを切り盛りする体制づくりを進めて来ていること(註8)、そして日本では東証での記者会見にTシャツ姿で臨み、お小言をもらったベンチャー企業経営者がいたことから、このアナリストの発言やそれをめぐるちょっとした盛り上がりぶりを目にして、私自身、「いまさら未熟者もないだろう……」くらいに捉えていた。(次ページ「真剣勝負の場だからこそフーディを着用した?」)
予想時価総額は最大で1040億ドル($104 billion)、調達予定額も10億ドル超え($93 billion to $104:$34 to $38 a shareの株価で)。
ちなみに、2004年にグーグルがIPOした際には、時価総額230億ドル、調達額16億7000万ドルだった。ここ1年ほどのテクノロジ/ネット系IPOで付いた各社の評価額は次の通り。
ざっくりと規模をつかむために各社の評価額を見てみると(5月15日時点)、1000億ドル($100bln)は、Apple(AAPL)の約5分の1、Google(GOOG)とAT&T(T)の約半分、Amazon(AMZN)とほぼ同じ、Oracle(ORCL)やIntel(INTC)よりすこし少なく、Cisco Systems(CSCO)より少し多い、といった感じだ。
個人的にいちばんため息がでてしまうのは、Mark Zuckerberg氏の個人資産(1株35ドルで試算すると187億ドル)が、パナソニック(PC)やソニー(SNE)全体の評価額よりも多い、という点だ……。
Facebook still hasn't proven that its $3.7 billion in revenue and $1 billion in profits last year deserve such a lofty valuation
Facebook Co-Founder Saverin Gives Up U.S. Citizenship Before IPO
Zuckerberg氏とSaverin氏の争いの顛末は、映画「ソーシャルネットワーク」が一部で描いたとおり。
Wearing a hoodie to a meeting in New York on Monday with potential investors is a sign of Zuckerberg's lack of seriousness, according to Michael Pachter, an analyst for Wedbush Securities.
Zuckerberg's Hoodie a 'Mark of Immaturity,' Analyst Says - Bloomberg
For Zuckerberg Types, Executive Pinstripe Hoodies
GigaOMのOm Malik氏によると、New York TimesやCNNなどでも、この話に便乗する記事を出していたという。
すでに周知のとおり、ハーバード大の経済学部でLawrence Summers氏(クリントン政権の元米財務長官、その後ハーバード学長。映画「ソーシャルネットワーク」でも「双子のウィンクルボス兄弟を学長室から追い出してたヤツ」として登場)から卒論指導を受けたのが縁で、世界銀行から財務省とSummers氏の補佐官を務めた。その後、McKinsey経由でGoogleに入社、2008年3月からFacebookのCOOを務める。
複数の記事を通した印象は、「学級委員」タイプのしっかり者、才媛、姉御といった感じか。
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