アプリストアというモデルは、ソフトウェアビジネスの進化競争で勝利しつつある。OSメーカーは、特にモバイルデバイスでこのモデルから継続的に利益を得ている。しかしこのたび、Facebookがこのモデルを活用する方法を見いだした。同社にはソーシャルネットワークのプラットフォームはあるが、独自のOSはない。
Facebookのようなプラットフォームにとって課題となるのは、既存のほかのアプリストアよりも優位に立つストアを構築しなければならないことだ。AppleのApp Storeを超えるようなストアを構築するのは特に難しい。App Storeはユーザーにとって、「iOS」デバイスにアプリを追加する唯一の合法的手段である。Facebookは、ストアそのものを開設するというよりも、半分はストアで、半分はショーケースというような、複合型のマーケットプレイスを開設するつもりだと発表している。
Facebookは、次の3種類のものを「売る」(差し当たりこの語を使わせてもらう)予定だ。
1. ほかのストアにあるモバイルアプリへの誘導。「App Center」には、iOSや「Android」向けのモバイルアプリが掲載されるが、販売はされない。App Centerでは代わりに、ほかのストアでこれらを購入するよう促される。Facebookは、ほかのストアでのアプリ販売からは収入を得ない。
それでもFacebookにとっては大きな利点がある。同社は、Facebookログインを使用するソーシャルアプリを宣伝できる(Facebookログインの使用はApp Centerに掲載されるための条件だ)。そしてたとえログイン機能だけであっても、Facebookのネットワークを使うユーザーが増えるほど、Facebookにはユーザーに関するデータが蓄積され、より的確にターゲットを絞った広告の提供が可能になる。さらに重要なこととして、ユーザーがFacebookアカウントを使ってアプリにログインしている間は、別のシステム、例えばGoogleのログイン機能やTwitter(AppleはiOSでTwitterを優遇している)によるログインを使用していないということになる。FacebookのApp Centerは、ほかのソーシャルネットワークの成長を阻止する巧みな方法だ。
2. 「Connect」機能を使う無料のウェブアプリへの誘導。Facebookは、PinterestやSpotifyなど、Facebookのログインプラットフォームを使用する、ウェブ上のFacebook連携サービスの成長も促進するだろう。この場合にも、ユーザーがFacebookアカウントを使ってログインすることにはメリットがある。さらに、Facebookログインを使っているのであれば、こうしたサードパーティーのウェブサイト企業はFacebookネットワーク上で宣伝されることとなり、大きな後押しを受けられる。
3. 有料のウェブアプリ。では、Facebookが実際にサイト上でユーザーに販売できるものとは何だろうか。それはプラットフォームに依存しないアプリ、つまりHTML5アプリだ。Facebookは、アプリの売り上げの30%を手数料として徴収する(なお、Microsoftの手数料はこれより少ない)。Facebookはここから多少の収入を得るだろうが、同社にとっての真の成功はアプリの売り上げではない。開発者に専用OS向けのアプリではなく、プラットフォームにとらわれない標準であるHTML5に対応したアプリを構築させることだ。
プラットフォームの支配は、長い間駆け引きが続いており、特にAppleに関しては重要である。あるアプリケーションが動作するモバイルプラットフォームは、ユーザーについてのデータを集める手段であり、広告料を集められる場でもある。iOSアプリならば、Appleのシステムにデータを供給する。しかしHTML5アプリがFacebook経由で販売されれば、Appleのみに適用される広告や収益化の要件を迂回でき、ユーザーの活動データをFacebookが代わりに集めることもできる。
FacebookのApp Centerの取り組みは、ソーシャルアプリ開発者にとって素晴らしいものだ。Facebookストアはネットワーク化されていないアプリとの競争がないため、ほかのストアよりもソーシャルアプリの人気を簡単に高めることができる。しかしFacebookにとっては、開発者以上にメリットがある。App Centerはソーシャルウェブを、さらに具体的に言えばモバイルデバイスでのソーシャルエクスペリエンスを制御するための策略だ。
AppleがApp Centerを利用する可能性さえある。App Centerは優れたアプリを宣伝する新たな手段である一方、Appleのモデルはアプリ販売から収入を得るものだからだ。
Facebookはアプリ販売から利益を獲得する必要はない。同社は、ユーザーや、アプリ上でのユーザーの活動から収入を得る方法を知っている。App Centerは好機をとらえた、賢明なイニシアチブだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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