FacebookによるInstagramの大型買収から1週間以上が経過したが、多くの人々はいまだにこの取引に戸惑っている。無理もない。この10億ドルの買収は、双方の弁護士団の間で数週間にわたって協議された結果ではなく、2人の最高経営者(CEO)によって48時間で決まったことなのだ。
とはいえ、FacebookとInstagramの慣例にとらわれない姿勢は、今に始まったことではない。それは2社について理解しておくべき多くのことの1つだ。この2社は、急速に変化するテクノロジ新興企業の世界の中においても、標準というよりは異質の存在である。
筆者は、数え切れないほどの記者やブロガーがその評価額を疑問視するのを見てきたが(それは理解できる)、なかにはこの買収をBernie Madoff氏の詐欺事件と比較する人さえいる(それはばかげている)。ともかく、この取引をめぐってはまだ多くの疑問がある。それに答えるには、両社の経営がどのように行われているのか深く理解する必要がある。
この記事では、Facebook、Instagram、そして両社の10億ドルの取引を理解するために必要な5つの非常に重要なポイントを取り上げる。
- Zuckerberg氏はFacebookを全面的に支配している。Facebookの誰もが認めるリーダーである同氏は、同社株式の28%を保有している。だが、Sean Parker氏やほかのFacebookの大株主との間で議決権の代理行使の契約を結ぶことで、Zuckerberg氏は議決権の57%を握っている。これはつまり、IPOの後でさえも、同氏は自分の意思決定について誰かに相談する必要がないということだ。それは、最高執行責任者(COO)のSheryl Sandberg氏やFacebookの取締役会であっても例外ではない。同氏がInstagramのCEOであるKevin Systrom氏と、買収取引を2日間でまとめ上げることができたのはそのためだ。
- 買収された時点では、Systrom氏はInstagramを完全に支配していた。同様に、Systrom氏は、買収前にはInstagramの約40%を保有していたため、ほとんどの意思決定を一方的に行うことができた。共同創設者のMike Krieger氏は約10%を保有していたため、2人の創業者で買収に関する決定を下すことができた。
- Zuckerberg氏は、取締役会で投票が行われるようにしたが、その投票は形式的なものだった。支配権の変更については企業の取締役会の投票が必要だが、Zuckerberg氏には自らに反対した取締役を投票によって締め出す力がある。別の言い方をすれば、Zuckerberg氏の言葉はFacebookでは絶対的なものであり、それは取締役会レベルでも同じだ。
- Instagramの買収は本質的に防衛的なものであり、攻撃的買収ではない。Instagramには売り上げがなく、従業員は13人しかいないにもかかわらず、買収額が非常に高いのはそのためだ。Facebookは独自のフィルターを作ることもできたが、それではInstagramが写真のためのモバイルソーシャルネットワークへと成長するのを止められないだろう。Facebookの活動の多くは写真共有や写真による交流を中心に展開しており、FacebookとしてはInstagramにその活動を脅かされるわけにはいかなかった。Zuckerberg氏には、Instagramを手つかずにしておくことは、今の段階で高額で買収するよりも、いずれ高くつくだろうと分かっていた。
- たとえ誰がInstagramを買収しようとも、利益相反が生じた。Instagramを買収する可能性のあった企業は数社しかなく、そのほとんどにはInstagramに投資している取締役か従業員がいた。例えば、Facebookの取締役のMarc Andreessen氏はInstagramに投資している。しかし、TwitterもInstagramを買収したがっていた。同社会長のJack Dorsey氏も、Instagramのエンジェル投資家として非常に有名な存在である。TwitterがInstagramを買収すればさらに面倒なことになったのではないだろうか。Zuckerberg氏が新興企業に投資しない理由はおそらくここにあるのだろう。
こうした事実を見ると、FacebookがInstagramを必要とした理由や、買収取引がこれだけ迅速に完了した理由がはっきりする。それゆえ、詐欺事件にからむ悪意ある陰謀を何の根拠もなく思い描くのが大好きな、Donna Kleine氏のような人物の言うことをまともに取り合う必要はない。
真実はこうだ。Zuckerberg氏はInstagramをFacebookに対する脅威と見なしていた。同氏はInstagramが大きくなる前につぶしておきたいと考え、この買収取引を成立させるよう動いた。そして自らの議決権を利用することで、迅速に実行できた。この取引に悪意や卑怯なところは見受けられない。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。