テクノロジ業界では、特許をめぐって誰かがほかの誰かを訴えることなく1週間が終わることなどない。
今回はFacebookが、自社の特許10件を侵害されたとして米Yahooを逆提訴している。もちろんこの動きは、自社の特許10件を侵害されたとしてYahooがFacebookを訴えてから、1カ月もたたないうちに行われたものだ。
Facebookの逆提訴に驚く人はいない。特許争いは、相手と同じ手段を用いて戦うのが常である。まして今回は、Yahooがこのような無用な争いを始めたことが原因となっているからだ。そして、Facebookが3月にIBMから750件の特許を購入したのも同じ理由である。Facebookは、急激にエスカレートしつつある特許争いにおいて、さらなる攻撃手段を必要としていた。
しかし、この2社が互いを訴える際の対象となっている特許のいくつかに、筆者は非常に驚いている。Yahooの特許の1つは、「ウェブページにおける広告の最適な配置」に焦点を当てており、一方Facebookの特許2件は「ネットワーク上でのユーザープロフィールの配信を制御するシステム」を対象としている。Yahooは、「ネットワーク上でのインタラクションの有効性を判断する手法」についての特許を保有しているが、「ソーシャルネットワークのメンバーのためにパーソナライズされた記事のフィードを生成する」特許はFacebookが持っている。
近ごろは、ほぼどんなことについてでも、ソフトウェアの特許が取得できるようだ。
ただし、特許をかき集めて、まるで備蓄されている核兵器であるかのように圧力をかけているのは、FacebookとYahooだけではない。この2週間で大きなニュースになった特許争いだけでも、Appleとサムスン、MicrosoftとMotorola、Research In Motion(RIM)とNXP、OracleとGoogle、TiVoとMotorolaなどがある。
歴史を通じて、特許は発明者の知的財産の保護と革新の促進において、重要な役割を果たしてきた。しかし、ソフトウェアの場合、特許の有用性は非常に限定的なものだ。さらに最近では、獲得した知的財産で小規模なテクノロジ企業を訴え、楽に大金を得るパテントトロールの存在によって、特許は単に革新を阻害するだけのものになってしまっている。
特許法は、常に変化し、急速に発展するソフトウェアの世界に合わせて作られたものではない。「記事のフィードを生成する」方法を発明することは、新しいタイプの燃料噴射装置や、宇宙飛行用の新しい超軽量合金を発明することは違う。しかし、ソフトウェアメーカーが特許の出願に必死になるのは、Yahooのような企業が自暴自棄になって訴訟を始めたときに採れる防御手段が、迅速な和解交渉に役立つような、独自の特許を備蓄しておくことくらいしかないからだ。
これは、テクノロジ業界における相互確証破壊だ。そして特許をめぐる状況は、危機に向かって刻々と進んでいる。その危機に比べれば、Stop Online Piracy Act(SOPA)をめぐる議論などたいした問題ではないように思えてくる。将来のいずれかの時点で、企業は和解のプロセスを省略し、法廷を利用して、ウェブ上の大手ドメインで広く使われている人気の機能を停止させるようになる。単にそのアイデアを最初に考えたことを示す特許を保有しているというだけでだ。そうなれば、米国政府や世界貿易機関にまで影響が及び、衝撃を与えることになるだろう。
筆者は、特許制度の危機は必然であり、避けられないと考えている。理由は簡単だ。危機を発生させることなく、大がかりな特許改革に取りかかろうとする政治的意思や圧力が十分にないからだ。
特許、訴訟、そして和解、というサイクルが当分終息しない理由はここにある。それではこのあたりで、「パテントトロールの見分け方」という特許を出願して、取得できるかどうか試してみるとしようか。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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