Googleの会長であるEric Schmidt氏は聡明な戦略家で、真意を計るのが困難なこともよくあるため、同氏のコメントは詳細に分析しなければならない。思わず口に出た失言として聞き流してもよいコメントもあるが、Googleの内情を知るヒントとなる発言もある。
Schmidt氏はロンドンで現地時間5月18日、報道陣に対し、Googleは海賊版商品の不正売買の疑いがあるサイトをウェブから排除しようとする米政府の取り組みに反対すると述べた。このコメントには、メディアコングロマリット各社や米連邦議会議員はおろか、Googleの幹部陣までもが大きな衝撃を受けたようだった。Googleがオンライン広告で前例のない成功を収めた10年間にわたって最高経営責任者(CEO)を務めたSchmidt氏は、2週間前に米国議会上院に提出された「PROTECT IP」と呼ばれる法案に言及して、先の発言をした。
この法案では、米司法省によって知的財産権を侵害していると判断されたウェブサイトを排除する権限が、米連邦法執行機関に付与される。検索エンジンや決済サービス、広告会社はそうしたサイトとの金融取引の停止を命じられる可能性がある。英国の新聞The Guardianによると、Schmidt氏は同法案が言論の自由に影響を及ぼす可能性を問題視しているという。同氏は報道陣に対し、次のように述べている。「xを行うために(ドメインネームシステム、ウェブサイトに接続できるようにするプロトコル)を要求する法律が存在して、上下両院で承認され、米大統領が署名したとしても、われわれは異議を唱え、戦いを続けるだろう」
Schmidt氏は、あらゆる政府がサイト運営者に著作権侵害の疑いをかけることで反対意見を封殺できるようになってしまう、と警告した。同氏はそうした法律を中国のような抑圧的な政府を持つ国々の制定法になぞらえた。今回の件で驚いた著作権保有者にとって、Schmidt氏のメッセージは明確だ。同氏が非難している法案は、大小の著作権保有者がオンラインでの知的財産盗用を取り締まる上で極めて重要と考えているものであり、またGoogleのほかの幹部がほんの1カ月前に条件付きで支持を表明したものでもある。裏切られた感じた人もいるだろう。
「これは、Googleが著作権窃盗を深刻な問題と考えているという(オンラインでの著作権侵害について調査する米下院小委員会が召集した公聴会で、同社ゼネラルカウンセルのKent Walker氏が行った)証言と矛盾する」。音楽レーベルの業界団体である全米レコード協会(RIAA)は声明でこのように述べた。この声明には、Googleが著作権侵害防止の取り組みをやめるのなら、「Google TV」やYouTube、そして先ごろローンチしたクラウド音楽サービス向けのコンテンツの取得も諦めることになる、との含みもある。Googleがより多くのプロフェッショナル作品のライセンスを求めるにつれて、著作権侵害防止の取り組みを強化するようクリエーターの圧力が強まっている。
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