WHATWGはオープンメーリングリストとして始まったが、創設者と意思決定者は全員ブラウザメーカー(当初はOperaとMozilla Foundationで、後にAppleが加わった)の関係者だった。今では実質的にW3CとWHATWGの両方がHTMLの管理に関わっている。その重要人物の1人がIan Hickson氏だ。Operaの元従業員で現在はGoogleに勤務するHickson氏は、W3CとWHATWGの両団体が保持する幾分異なるバージョンのHTMLのエディターを務めている。
Hickson氏は1月、WHATWGでHTMLは「生きているドキュメント」になったと宣言した。つまり、ニーズに応じて絶えずアップデートされる仕様という意味だ。Hickson氏は、不要になったバージョン番号を捨てて、「HTML5」という用語の代わりにシンプルな「HTML」を採用した。同氏はW3Cもこれに続くことを期待しているという。
だが、W3Cがそれに従うことは期待できない。
Jacobs氏は、W3Cは常に標準を改訂してきたと述べる。「だからといって、誰もが仕様のナイトリービルドを欲しているわけではない」という。Jacobs氏が言及しているのは、プログラマーの最新パッチを追加するためにソフトウェアの新しいテスト版を毎晩構築するソフトウェア開発の慣習のことだ。「われわれは標準の安定版も公開している。要求される相互運用性の水準の高さから、そうした安定版を必要とするコミュニティーもあるからだ。われわれは革新と安定性の両方を重要視している。それらは相容れないものではない」(Jacobs氏)
ほかにも、知的財産権という要素がある。具体的に言うと特許権だ。W3Cの仕様策定に参加している人々は、自分たちが所有する特許権の侵害を理由に、仕様を実装する人々を訴えないことで合意している。多くの特許権リスクがあるテクノロジ業界において、多少は法律面での安心感を得られる要素だが、厳密に言うと、その合意内容は仕様の最終版にしか適用されない。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
OMO戦略や小売DXの実現へ
顧客満足度を高めるデータ活用5つの打ち手
企業や自治体、教育機関で再び注目を集める
身近なメタバース活用を実現する