ソフトウェアの自動更新--ユーザーのメリットを考える - (page 4)

文:Stephen Shankland(CNET News) 翻訳校正:川村インターナショナル2011年01月07日 07時30分

 ただし何十台、何百台、あるいは何千台というコンピュータの管理を任されている人々にとって、自動更新の有効化はそれほど簡単な選択肢ではない。

 スティーブンス工科大学のJennifer Bayuk氏は「企業のIT管理者は自動更新を実行するソフトウェアをブロックするために、ありとあらゆる対策を講じている。なぜなら、自動更新によって、ユーザーが必要とするほかのソフトウェアが機能しなくなってしまうことが往々にしてあるからだ。企業のIT管理者は『ソーシャビリティテスト』と呼ばれるテストを頻繁に実施して、さまざまなソフトウェアが1台のマシン上で調和して動作することを確認する。自動更新を実行するソフトウェアは、そうした企業のデスクトップ展開戦略の完全性を乱すものだ」と述べた。

ウェブ、Chrome OS、携帯電話

 自動更新の時代を最も野心的に具現化しているのはGoogleの「Google Chrome OS」かもしれない。Chrome OSは、ユーザーの目に見えないところにあるLinux OS上のソフトウェアではなく、ウェブ上のアプリケーションを実行するブラウザベースのOSだ。「Google Chrome」と同様に、Chrome OSにもPDFリーダーとAdobeの「Flash Player」という2つの一般的なプラグインが内蔵されている。したがって、Chrome OSもそれらを更新する役目を引き受けることができる。

 Chrome OSでは、Googleは更新を自動的に送信する。Googleは、ソフトウェアを最新の状態に保つ作業はユーザーの責任であるべきではないと主張している。

 Chrome OSとウェブアプリケーションの組み合わせの場合、ウェブアプリケーションとネイティブアプリケーションの境界線は曖昧だ。ウェブサイトにおいて、自動更新の時代は既に十分に確立されている。米YahooやFacebook、Twitter、Googleのような企業は、ユーザーに新バージョンのサイトへオプトインする機会を提供しているが、舞台裏ではユーザーの許可を得ることなく非常に多くの変更が施されており、旧バージョンは結局、段階的に消えていくことになる。

 Chrome OS上のウェブアプリケーションは、誉れ高いブックマークから、ネット接続不要で機能するアプリケーション、さらにはブラウザに新機能を提供するブラウザ拡張まで、さまざまなものがある。ただし、これらのメカニズムはすべて自動的に更新することが可能だ。

 Googleは「Android」でも同じ方向に進んでいる。Androidの最近のバージョンでは、ユーザーはアプリケーション自体が自動的に更新を実行するのを許可することができる。筆者が試してみたところ、ほとんどのアプリケーションでその機能の有効化に時間はかからなかった。

 Chrome OSやスマートフォン、ネット接続型テレビ、衛星ナビゲーションシステム、自動車のファームウェアは、ソフトウェアがパーソナルコンピュータという比較的狭い領域を越えて拡大していることを示している。今日の更新に関する問題と、これらの新しい電子機器をあわせて考え、さらにこうした新しいデバイスの多くの限られたユーザーインターフェースを考慮すると、ソフトウェアを最新の状態に保つ作業の責任はユーザーが負うべきという考えを支持するのはますます難しくなる。

 筆者は非互換性や企業に対する不信感、新しいマルウェアの拡散経路、ユーザーに対する差し出がましい監視など、自動更新の時代によって引き起こされる可能性がある懸念を数多く想像できる。しかし、総合的に見るとリスクよりも利点の方が多いというのが筆者の考えだ。ソフトウェアが流動的に、そして常に改善される世界を楽しみにしている。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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