2010年は「3Dテレビ」元年--キワモノから市場形成へ離陸 - (page 2)

3Dテレビの前哨戦はすでに始まっている

 10月に開催されたIT・家電エレクトロニクスの総合展「CEATEC JAPAN 2009」では、パナソニック、ソニー、シャープなどがこぞって3D対応の薄型テレビの試作機を出品していた。各社ともに製品版に近い50〜60V型のテレビを展示し、3Dテレビの前哨戦がすでに始まった、という印象だ。特に映画コンテンツ産業との繋がりが深いパナソニックとソニーからは、3Dに賭ける強い意欲が感じられた。

 3Dは映像機器における新製品だが、左右の視差のある映像を交互に表示し、これを液晶シャッタ付きのメガネで見る、という基本原理は以前からあるものだ。1980年代にVHD(アナログのビデオディスク)の3D機能として製品化されたが、画質や見やすさに難があり、普及には至らなかった。

 しかし、今回の3D対応には以前にないブレイクスルーもある。それはフルハイビジョン対応による画質とリアリティの向上である。従来の3D映像は、左右の映像を表示させるため、解像度が半分に落ちてしまい、フレームレート(コマ送り)も半分になる場合があるために、フリッカー(ちらつき)が多く、見にくい3D映像になっていた。

 これに対して、今回の3D映像はフルハイビジョン&フルフレーム対応で、Blu-ray Discに右目用、左目用のフルハイビジョン2ストリーム(1080P毎秒60フレーム×2)の映像が記録されているという。この両映像を交互に毎秒120フレームで表示する。

 差分的なエンコードを実施することによってデータ量は通常の約1.5倍に抑えられるため、Blu-ray Discに長時間の3D映画などを記録できる仕組みだ。もちろん、地上デジタル放送など現在のコンテンツを視聴する際は、通常どおり2D(メガネなしの2次元)で視聴できる。

 実際に3D映像を視聴してみると、フルハイビジョン対応の効果は大きく、ハイビジョンの質感や色彩のリアルさが3Dのリアリティを大きく後押ししていることが実感できる。3D映像はともすると、芝居の書き割り(板で作ったセット)のように段差に見えてしまう場合もあるのだが、これもフルハイビジョンの描写力でリアルな立体に感じられるのである。

映画、ゲームと対応コンテンツは幅広く用意

 3Dの本格対応は、ハードウェアや規格の進化による部分が大きい。左右の映像を高速表示できるテレビ機能、通常の約1.5倍になる3Dのハイビジョンデータを記録できる大容量のBlu-ray Discなど、ハードウェアの条件が整ったことが3D化を後押ししている。

 規格面でも、Blu-ray Discへの3D記録を定めた拡張規格が、BDA(Blu-rayDiscAssociation)によって2009年中に策定予定。3D対応テレビと3D対応Blu-ray Discプレーヤーを繋ぐインターフェースHDMIの規格も、5月に発表された次世代のHDMI1.4では3D対応が発表されている。

 ハードウェアとともに、3Dコンテンツの盛り上がりも3D化を後押ししている。米国では3D映画が好評で、3D対応の映画館が急増し、一般の映画以上の集客力を達成している。ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーションピクチャーズグループは、今後のCGアニメーションをすべてを3D対応にするなど、コンテンツメーカーも意欲的だ。こうしたトレンドは日本にも波及しつつあり、国内でも3D映画の公開数が急増している。

 テレビの進化の歴史を振り返ると、テレビ放送の規格を後追いする形でTVのハードウェアが作られる、というのが定石であった。これに対して今回の3D対応は、放送以外のパッケージメディアとの連携である点が新しい。また規格の後追いではなく、コンテンツメーカーと家電メーカーが連携して新機能を作る点も、今までにない特徴といえるだろう。

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