E3が見たゲーム業界--巨大見本市を通して振り返る変遷(第1回) - (page 2)

文:Giancarlo Varanini(GameSpot) 翻訳校正:川村インターナショナル2009年07月16日 07時30分

E3 1996--価格こそ正義

 およそ2年かけて、任天堂は北米市場で「NINTENDO 64」をお披露目する準備を整えていた。任天堂は1995年11月の任天堂スペースワールドにおいて、NINTENDO 64本体および「スーパーマリオ64」と「星のカービィ」の初期プレイアブル版は発表済みであったが、E3では数あるタイトルの中でもスーパーマリオ64、「スター・ウォーズ 帝国の影」「Killer Instinct Gold」「ウェーブレース64」「パイロットウィングス64」「ブラストドーザー」といったタイトルをほぼ完成状態のプレイアブル版で大々的に展示した。だが、やはりスーパーマリオ64が一番人気であり、マリオがシームレスに3D空間内で動く姿だけでなく、画面上で表現される秀逸な特殊効果のすべてに来場者は肝をつぶした。

NINTENDO 64発売時の看板キャラクター。 NINTENDO 64発売時の看板キャラクター。

 その最たるものはマリオが「ターミネーター2」風の液体金属のプールに飛び込むシーンで、見る者から驚嘆の声が上がった。その一方で、周辺機器の「64DD」(NINTENDO 64本体の下部に取り付ける、書き換え可能なディスクドライブ)も依然としてブースの片隅にしっかりと展示されていた。実際、Nintendo of Americaの当時のエグゼクティブバイスプレジデントであったPeter Main氏は、E3の数カ月前にマスコミ各社に手紙を送り、NINTENDO 64を宣伝するとともに64DDを北米で発売する予定であることをアピールしていた。

 もちろん、セガとソニーも、おのおののハードウェアについて注目すべき発表を行った。まず、両社はハードウェアの値下げを発表し、セガサターンもPlayStationも小売価格200ドルとなった(任天堂もバーチャルボーイの100ドルへの値下げを発表したのだが、これはこの製品の不幸な将来を暗示していた)。この発表は、各社がE3で大幅な値下げ発表を行うようになった最初の事例となった。次に両社は、その後それぞれのゲーム機を代表することとなる新たなシリーズ作品の発表を行ったが、E3 1996という枠組みの中では、マリオの初3D化に対する競争相手としての意味合いがかなり強かったといえる。

ソニーが初めてマスコットを起用したゲームは、そのグラフィックで人々を驚かせた。 ソニーが初めてマスコットを起用したゲームは、そのグラフィックで人々を驚かせた。

 その2つの新しいゲーム、PlayStationの「クラッシュ・バンディクー」、セガサターンの「ナイツ」は、おおむね好意的な反応を得た。だがそれも、両タイトルがマスコット的なキャラクターを主人公としたフル3D作品であったためで(両キャラクターとも、マリオほど自由に動き回れなかったが)、必然的にスーパーマリオ64と比較されることとなった(中には、ナイツの広大すぎるフィールドに対して困惑する者もいたが)。こうした比較のなか、多くの人々の頭にはあるキャラクターが浮かんでいた。そう、青い毛をしたセガのマスコット、ソニック・ザ・ヘッジホッグである。フル3Dのソニックのほうが、マリオとのマスコットキャラクター対決にふさわしいのではないか。期待に応えるかのように、セガは「Sonic X-treme」の映像をブースで展示した。セガサターンでフル3Dのソニックがプレイできると喜ぶ者も多かったが、その映像はすでに発売中の「バグ!ジャンプして、ふんづけちゃって、ぺっちゃんこ」の焼き直しのようであった。残念ながら、最終的にSonic X-tremeは開発中止となり、セガのマスコットが3Dゲームとしてセガサターンに登場することはなかったのである。

Appleが最後にゲーム事業に乗り出したのはいつだったか。 Appleが最後にゲーム事業に乗り出したのはいつだったか。

 セガサターン、PlayStation、NINTENDO 64による派手な宣伝合戦には他社の入る余地はほとんどなかったが、そこに割り込んできたのがAppleとの共同開発プロジェクトによる「ピピンアットマーク」を正式発表したバンダイであった。ピピン@アットマークは割安なMacintoshといった代物で、ゲームプレイとその当時のインターネット技術の活用を目的としたものであった。当初、ピピン@アットマークはゲーム機という扱いではなかったが、世間的にはほかのハードウェアとの比較を余儀なくされ、600ドルという価格がやや実勢にそぐわないとみなされた。

E3最優秀コメント:
 「『シボレー』と『キャデラック』の違いと同じだ。自分が5000ドルでシボレーを売っていて、他人がキャデラックで参入してきたら、自分の車を実際の価値に即して値下げするべきだろう。セガとソニーの行為は、シボレーは5000ドルでは高すぎた、と暗に認めただけだ」
-Nintendo of Americaの元会長であるHoward Lincoln氏は、NINTENDO 64の価格もPlayStationとセガサターンの値下げに合わせるべきだという意見を一蹴(いっしゅう)した(The Journal Recordより)

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