やはり、「いつか来た道」なのだ。さらに言えば、アナログ製品とは異なり、製造技術も移転しやすいデジタル製品では、製造技術による競争優位性を維持できる期間が著しく短いことは以前から指摘されてきた。
これまで通りの「モノづくり」ではもうどうしようもないことは明らかだった。にもかかわらず、それを超えるための手段を求めたとき、デジタルという手段が誤って目的化され、デジタルであればよいという認識がはびこるようになった。結果は、「いつか来た道」なのだ。
そして、いつか来た道をこれまでのようにゆっくりと歩むのではなく、一気に駆け抜けるように、そしてより多くの追従者を非常に近距離にして、あるいは先頭を譲りながら走破してきた薄型ディスプレイ事業を抱える家電メーカーたちは、ここにきて各社ごとに異なる選択肢をとった。
それは、規模の経済を求め競合と連携するもの、他社のものを引き受けてより集中を強め、相方は売却により事業撤退するもの、それとは別に、競争自体に参画することを放棄したものである(表1)。
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薄型ディスプレイでは、従来、大型はプラズマ、中小型は液晶という住み分けができてきたとされる。しかし現在、第7世代(基板サイズ1.87×2.2メートル)や第8世代(同2.1×2.4メートル)といった超大型液晶の製造工場の稼動も目前であり、その境目はぼやける一方だ。
新たな技術の投入で更なる混迷も
加えて、動画表示能力や省電力性に優れ、大型化も容易なSED(表面電界ディスプレイ)やより薄型化が可能で映像精度が高い有機ELなどの新技術ディスプレイも市場投入を目前にしている(表2)。
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大型化に幾多の問題が存在する有機ELは別として、SEDについてはキヤノンと東芝が年内の発売を前提として総額2000億円の生産体制を整備することを発表している。今後、プラズマ、液晶、SEDの3つの技術にどのような戦略で望むのかで、更なる選択肢が生じてくるだろう。
なんのための薄型ディスプレイなのか
しかし、ふと冷静に考えてみると、巨額の製造設備投資が必要な薄型ディスプレイを巡る多種多様な技術や戦略が存在するものの、その行き着く先は家庭内という市場であり、基本的にはTVという商品設定でしかないことに気が付く。
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