企業が生活者とコミュニケーションしていくには、何よりも「ストーリー」が重要です。この場合の「ストーリー」とは、相手の感情を動かすエピソードや仕組みを指します。
「chocoZAP」(チョコザップ)は、RIZAPグループが「簡単」「便利」「楽しい」をコンセプトに展開する低価格ジムです。2022年7月にスタートし、急速に店舗数を増やし続け、2024年5月には全国47都道府県への進出と、1500店舗を突破するまでに成長しました。
必要最低限のマシンしかないものの、以下の特徴からフィットネス初心者や運動に対して苦手意識を持つ人々に支持される要因となっています。
そもそも、この業態のアイデアは、コロナ禍で既存のジムが休業を余儀なくされた時期に、非対面型のジムをテスト運営したことがきっかけで生まれました。デジタル技術を活用し、入退会や予約を無人で行うことで人件費を削減し、安価で手軽に利用できるジムの運営が可能になると考えたのです。
さらに、セルフエステ、セルフ脱毛、セルフホワイトニング、セルフネイルなどの美容サービスを取り入れ、多様なニーズに応えることで、利用者からの支持を得ています。現在では、ワークスペースやシミュレーションゴルフなどの新たなサービスも提供し、その幅を広げています。
この成長の背景には、綿密なストーリー設計が存在します。
サービス開始前には、RIZAPの名前を一切出さずにマーケティング用の覆面店舗を47店舗出店し、サービス内容に基づく集客や継続率をA/Bテストで検証しました。その結果、集客や継続につながった、現在のサービス内容に至ったのです。
「chocoZAP」(チョコザップ)というネーミングも秀逸でした。コンセプトが明確に伝わり、覚えやすくかわいい名前なのに加えて、RIZAPを連想させ信頼感につながります。
chocoZAPオープン後には、チラシやウェブ広告で何をどのようにアピールすれば見込み客の心に刺さるか、キャッチコピーやデザインを変えてA/Bテストを実施しました。チラシは500パターン以上、バナーは4000種類以上を試したといいます。そのプロセスで効果的なメッセージを発見して訴求することが、短期間での成長につながっているといいます。
数カ月おきに、豪華な特典付きの入会金無料キャンペーンを実施していることも成長の要因になっていると考えられます。たとえば2024年7月1日~8月15日に実施された「夏得キャンペーン」では以下の特典がありました。
\おかげさまで2周年!夏得キャンペーン開催!/
— チョコザップ(chocoZAP) @1日5分からはじめられる初心者向け24hジムちょこざっぷ_公式 (@chocozap_) June 30, 2024
7月1日(月)〜8月15日(木)までのご入会で
夏キット(※1)期間中入会者全員にプレゼント
〈さらに、スタート応援‼︎〉
・入会金・事務手数料0円!
・スターターキット(※2)付き!
→お持ち帰り用のエコバッグも付いてきます… pic.twitter.com/AuAlkIW44X
前から興味を持っていた見込み客に対して、キャンペーンが後押しするような設計になっているのです。
入会してくれた会員を継続させる仕組みも考えられています。chocoZAPの手続きや入退館の管理すべてスマホのアプリで完結します。トレーニング頻度が下がると、動画を使って来館を促す仕組みもあります。来館を習慣化させることが、継続率を高めることにつながると考えるからです。この動画もいくつかのバージョンを作って、A/Bテストで効果を測定しています。
今後、さらに色々なサービスを提供することで、ジムに縛られずコンビニのような存在になるというストーリーを描いているとのことです。
このように、優れたコミュニケーションには必ずストーリーがあります。あなたの会社のコミュニケーションには、インタラクティブなストーリーがありますか?
この記事はビデオリサーチインタラクティブのコラムからの転載です。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果