NTTドコモとauが発売した、サムスンの折りたたみスマートフォン「Galaxy Z Fold5」と「Galaxy Z Flip5」が好調だ。
販売価格(以降、価格は全て税込)は、ドコモオンラインショップのケースで、Galaxy Z Fold5が25万7400円、Z Flip5が16万820円。割賦購入&端末返却が条件の「いつでもカエドキプログラム+」を利用すれば約半額とはいえ、ハイエンドモデルの中でもトップクラスの高価格帯。にもかかわらずメーカーによれば、約1週間の予約台数は前モデル比191%に達したという。
サムスンが初の折りたたみスマホ「Galaxy Fold」を、日本で発売したのは2019年秋のことだ。縦型の「Galaxy Z Flip」は、その翌年の2月の発売。その名前からもわかるように、Galaxy Z Fold5、Z Flip5はどちらも5世代目にあたる。両モデルを1週間ほど使ってみて感じたのは、まさにその世代の積み重ねによる、折りたたみスマホとしての「洗練」だ。
まずは、それぞれのスペックからチェックしていきたい。いずれもCPUには「Snapdragon 8 Gen 2 for Galaxy」を搭載。Galaxy Z Fold5はRAM12GBにストレージは256GB、512GB、1TBの3モデルが用意されている。うち512MBはドコモとau、1TBはauのオンラインショップの限定販売だ。
Galaxy Z Flip5はRAM8GB、ストレージは256GB、512GBの2モデルがあり、512GBはauのオンラインショップ限定。どちらもSDカードスロットは搭載していないが、SIMは物理カードとeSIMに両対応している。カラーはGalaxy Z Fold5が「アイシーブルー」「ファントムブラック」の2色(モデルによってファントムブラックのみ)。Z Flip5は「クリーム」「ミント」「グラファイト」「ラベンダー」の4色展開だ。
Galaxy Z Fold5は折りたたんだ状態で、約6.2型(2316×904、HD+)のカバーディスプレイ、開いた状態で約7.6型(2176×1812、QXGA+)のメインディスプレイが利用可能。Galaxy Z Flip5では約6.7型(2640×1080、FHD+)のメインディスプレイに加えて、約3.4型(720×748)のサブディスプレイを利用できる。
メインディスプレイはどちらも、120Hzのリフレッシュレートに対応。いずれのディスプレイも高精細で、太陽光下でもしっかり認識できるくらい明るい。
生体認証は、電源ボタンを兼ねる指紋認証と、顔認証をサポート。バッテリーはGalaxy Z Fold5が4400mAh、Z Flip5が3700mAhとなっている。約1週間の試用期間中、1日の途中で電池切れになるようなことはなかったが、ディスプレイサイズを考えると余裕のある容量とはやや言い難い。また、どちらもIPX8相当の防水性能を備えている一方で、防塵規格に準拠していないのは前機種と同様だ。
スペックからは大きな進化を実感できないかもしれないが、5世代目だからこその洗練が感じられる点は随所にある。例えば、今回大きく変更されたヒンジもそのひとつ。どちらの端末も折り曲げたときに余計な隙間が空くことなく、側面がピタッと閉じるようになった。
実は、極薄の有機ELディスプレイに強く折り目をつけることなく閉じるには、ティアドロップ型の隙間を作る必要がある。このため前機種までは両モデルとも、折り曲げたときにわずかながら隙間ができる構造になっていた。今回は外観的にはピタッと閉じながらも、中ではちゃんと隙間を維持できる、新しい機構のヒンジが採用されている。
ピタッと閉じるのは見た目にもスマートだし、使っていても気持ちが良い。ディスプレイの開閉は1日に何度もすることなので、このちょっとした気持ち良さが案外重要だ。それだけでなく隙間がなくなった分だけ、両モデルとも閉じたときのサイズが、前機種に比べてスリムになっている。
Galaxy Z Fold5はタブレットに近い約7.6型のメインディスプレイを折りたたむことで、スマホサイズで持ち歩ける端末だ。外側に約6.2型のカバーディスプレイがあり、閉じたままでもスマホとして使える。スリムになったことで、この閉じた状態のときの操作がしやすくなったように思う。
一方のGalaxy Z Flip5は約6.7型のスマホを、よりコンパクトに持ち歩ける端末。今回外側のサブディスプレイが約3.4型まで大きくなったことで、閉じた状態でも小さいスマホのように使えるようになった。大きく見やすい専用のウィジェットから、カレンダーや天気をチェックしたり、電話をかけたり、タイマーやレコーダーといった機能が利用できる。
サブディスプレイで使えるアプリもある。ただし、これはまだ試験的な機能なので対応するものは少ない。筆者の試した限りでは、「マップ」「YouTube」のほか、「LINE」「Netflix」が利用できた。LINEは文字入力もできるし、マップは検索からルート案内まで可能。今後、対応アプリが増えてくればGalaxy Z Fold5と同様に、普段は片手操作ができるコンパクトなスマホとして使いつつ、大画面での操作が必要なときは開くといった使い方ができそうだ。
使い勝手でもうひとつ言及したいのが、Galaxy Z Fold5の約7.6型の大画面を活かすマルチタスク機能だ。画面下に表示されるタスクバーから、ドラッグ&ドロップの簡単な操作で、同時に3つのウィンドウを開くことができる。
画面の分割表示は、もはやAndroidスマートフォンでは当り前の機能だが、Galaxy Z Fold5のそれは特に自由度が高く、直感的かつ実用的だ。スライラスペンの「Sペン」と組み合わせるとさらに、撮影した写真にWEBからコピー&ペーストした情報を添付してメールするとか、さまざまなデータを組み合わせたメモを作成するといった作業がはかどる。
Sペンは、「Galaxy S23 Ultra」のように本体に収納することはできないが、代わりにSペンが収納できるケースが販売されている。こうしたケースは前機種にもあったが、ペンを取って付けたようなデザインで、スマートとは言い難かった。今回、専用の「Galaxy Z Fold5 Slim S Pen Case」では、付属のSペンがぐっとスリムになっていて、嵩張ることなく携帯できるようになった。これもうれしい進化点のひとつだ。
このほか、折りたたみならではの使い勝手として、Galaxy Z Fold5、Z Flip5とも、ラップトップPCのように90度に折り曲げての動画視聴や、ビデオ会議がやりやすくなっている。動画視聴やビデオ会議などの際にディスプレイを折り曲げると、アプリが対応している場合は上半分にコンテンツを表示。下半分には操作パネルなどを表示する「フレックスモード」が利用できる。スタンドなどがなくても端末を固定できるのは、フレキシブルに曲がるヒンジを備えた、折りたたみスマホならではだ。
最後に両モデルのカメラについても触れておきたい。Galaxy Z Fold5は約5000万画素(F値1.8)の広角、約1200万画素(F値2.2)の超広角、約1000万画素(F値2.4)の光学3倍、デジタル30倍の望遠という3つのカメラを搭載する。カバーディスプレイに約1000万画素(F値2.2)のインカメラが用意されているほか、メインディスプレイ側にも約400万画素(F値1.8)のインカメラが備わっている。
5つのカメラが使えるだけでなく、「EXPERT RAW」アプリを使用すれば多重露光撮影も可能。また、開いた状態でカバーディスプレイをオンにすれば、画面を確認しつつ高精細なメインカメラでセルフィ―が撮れるなど、多彩な撮影ができる。デジタル30倍はさすがに画質が厳しいが、Galaxy Sシリーズ同様にカメラの満足度は高いと言える。
一方のGalaxy Z Flip5は、約1200万画素(F値1.8)の広角、約1200万画素(F値2.2)の超広角の2つのカメラと、約1000万画素(F値2.2)のインカメラを搭載。約3.4型のサブディスプレイを見ながら、メインカメラで高精細なセルフィーが撮れるほか、広く背景を入れたいときや、グループでセルフィーを撮りたいときは、ラップトップPCスタイルで端末を固定した撮影もできる。こちらも折りたたみを活かした、フレキシブルな撮影が可能となっている。
最後に、折りたたみスマホの醍醐味は、大画面と携帯性という相反するニーズのどちらにも応えられることだろう。携帯性を考えれば、スマホの大画面化はそろそろ限界で、その先に進むには折りたたむしかないのかもしれない。実際に「Google Pixel Fold」や「motorola razr 40 ultra」のように、日本でも他社の追随が始まっている。これからも機種は増えていくだろう。
その中にあってGalaxy Z Fold5、Z Flip5には、カバーディスプレイとメインディスプレイをシームレスに切り替えられるユーザーインターフェース(UI)や、大画面を活かしたマルチタスク、フレックスモードなど、その使いやすさにおいては一日の長がある。バッテリーや防塵などもうひと頑張りを期待したい点もあるが、5世代目を迎えた折りたたみスマホは、大きく一歩、完成形に近づいたように思う。
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