これは、Appleやサムスン、Microsoftなどの競合他社とは大きく異なるアプローチである。それらのライバルはすべて、生産性とエンターテインメントのいずれか、または、その両方に重点を置いてきたからだ。Pixel Tabletは、タブレットに対する洗練された解釈である。Googleを他社と差別化する要因になり、iPadと直接競合するのではなく、別のユーザー層に訴求できるかもしれない。Consumer Intelligence Research Partnersの2021年のデータによると、Googleは米国で2番目に大きなスマートスピーカーブランドであるという。ということは、タブレットとしても機能するGoogleのスマートホームデバイスに対しては、少なくとも一定の需要が存在する可能性があるということだ。Pixel Tabletが成功すれば、Googleは、ホームスピーカー市場を支配する最大のライバルであるAmazonとの競争において、有利な立場に立てるかもしれない。
しかし、Googleがタブレットの世界で存在感を発揮するのに苦労してきたことも忘れてはいけない。2018年の「Pixel Slate」では、タブレットと「Chromebook」の体験を組み合わせようとしたが、人気の面で、iPadはおろか、サムスンの「Galaxy」タブレットにさえ及ばなかった。Androidタブレットは全般的にソフトウェアやアプリの互換性が低いとして、批判にさらされてきた。Googleはこのところ、タブレット向けに特別に設計された「Android 12L」でこの問題に対処しようとしている。
また、Googleには、人気を得られなかった製品の開発を終了してきた歴史があり、短命に終わるかもしれないデバイスへの投資が敬遠される可能性もある。同社が2017年に発表したAI搭載カメラ「Google Clips」を思い出してほしい。約2年後の2019年には、この製品の開発は終了してしまった。さらに最近では、The Vergeの報道によると、Googleはコスト削減策の一環として、Chromebook「Pixelbook」の次期モデルの開発を中止し、開発チームを解散したという。
Pixel Tabletが成功すれば、タブレットとスマートホームハブを別々に購入する必要がなくなり、それらのデバイスの購入を検討しているユーザーに大きな価値を提供するかもしれない。また、これにヒントを得て、Googleのライバル企業がタブレットとスマートホームデバイスに対する自社のアプローチについて、より創造的に考えるようになる可能性もある。しかし、同時にそれは、タブレットのあるべき姿が常に変化していることの証左でもある。
確かに、サムスンには、Appleと同じように、生産性とエンターテインメントの間で揺れ動いている従来型のタブレットがたくさんある。「Sペン」が付属する「Galaxy Tab S8」シリーズがそれを証明している。
しかし、同社には、タブレットの長期的な進化に対するビジョンもある。折りたたみ式デバイスへの投資は、同社がフレキシブルディスプレイ搭載デバイスを、モバイル業界の今後の方向性の重要な一部と考えていることを示唆するものだ。第4世代に到達した「Galaxy Z Fold」シリーズがそのことを最も雄弁に物語っている。Galaxy Z Foldは、サムスンが2019年に発売した初めての折りたたみ式スマートフォンであり、サムスンがスマートフォンとタブレットを組み合わせるというアイデアに何年も前から大きな可能性を見いだしてきたことを示唆している。
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