アップルのスマートホーム事業は成功するのか--2022年は運命の分かれ目

David Priest (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2022年03月10日 07時30分

 Appleは、良くも悪くも、常にマイペースの歩みを続けてきた。広く知られているように、「Mac」や「iPod」のときも、その後の「iPhone」のときも、その大胆な戦略は功を奏している。今では、同社の異色のスタイルと、ときに予想を裏切る手腕は、同類の企業の中で異彩を放っている。Amazon、Google、そしてFacebookさえもが有望な開発企業の買収を競い、ハードウェア製品の幅を広げながら、かつてなく多様な製品ポートフォリオを管理して他社に打ち勝とうとしている中、Appleは相変わらずコンピューター、スマートフォン、タブレットの開発に終始している。もちろん、「App Store」や一連のメディアおよびストリーミングプラットフォームも運営しているが、それくらいだ。2014年にBeatsを買収してヘッドホン事業に進出したのは、同社としては数少ない、全く新しいハードウェアカテゴリーへの投資だった(もっとも、Appleはそれ以前からイヤホンを開発している)。

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HomePod Miniは恐らくAppleが真剣にスマートホーム市場での競争を意識して発表した唯一の製品だ。
提供:Chris Monroe/CNET

 確かに、Appleのコンピューターとスマートフォンへの忠実な姿勢が賢明だったことは、これまでの結果に出ているし、ソフトウェアに対するアプローチも利益につながっている。だが、スマートホーム戦略に関しては、それほど成功していないことは明らかだ。Appleはスマートホーム市場に、それなりに力を入れてきた。家電器具を統合する「HomeKit」に力を入れ、市場でもひときわスムーズな、信頼性も安全性も高いプラットフォームを送り出した。

 しかし、そのHomeKit(「HomeKitセキュアビデオ」はなおのこと)を活かすのに必要なハードウェアの開発をサードパーティーに頼っていることで、Appleは国内の一般家庭市場に足場を築く大きなチャンスを失ってしまった。2022年現在、AmazonとGoogleはスマートスピーカーの分野で、ほぼ難攻不落の市場支配を確立している。事実上、Appleが他社に地歩を譲った分野であり、そうなった原因は、「Siri」を発表から数年の間放置気味にしていたこと、そして手頃なスマートスピーカーを2020年までリリースしなかったことだ。しかも、ソフトウェアの優位さえ失われつつある。スマートホームの新しい共通規格「Matter」が、HomeKitの得意とする機能の多くを、業界全体で標準化しつつあるからだ。

 Appleに残された選択肢は2つある。1つは、何年にもわたって「Alexa」や「Googleアシスタント」を搭載した製品に慣れ親しんできた消費者を、自社のブランド力によって、これからでもAmazonとGoogleから取り戻せると信じること。もう1つは、2022年と2023年のうちに、この市場にもっと本格的に乗り出して、既存のハードウェアとしてiPadを活用し、防犯カメラやブロードバンド対応ハードウェア製品の土台を固めることだ。

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Appleのエコシステムは信頼性が高くセキュリティがしっかりしているが、サードパーティー製のデバイス頼りだ。
提供:Schlage

AppleはMatterをどう迎えるのか

 スマートホーム市場は、一見するとシンプルそうな疑問によって、不均衡な形に発達してきた。こんなにたくさんの小型のデバイスを、バッテリー切れにならずに動かし続けるには、どうすればいいかという疑問だ。単純な疑問に思えるかもしれないが、バッテリー駆動のガジェットをWi-Fiで接続すると、バッテリーの減りは極端に速くなる。そうした知見からBluetooth Low Energy、Z-Wave(IoTの無線規格)、ZigBee(近距離無線規格)が生まれ、さらには各社固有の通信プロトコルも次々と登場して、接続したままデバイスのバッテリー持続時間を伸ばす結果になったのだ。

 だが、そのために接続網が混沌とし、セキュリティ標準が乱立した結果、統合という点は非常に難しくなった。AmazonとGoogleは音声アシスタントのAPIを公開するという気前の良いアプローチをとり、開発者がそれぞれのデバイスをAlexaやGoogleアシスタントに接続できるようにした。その結果はまちまちだった。「Amazon Echo」や「Google Nest Mini」と連動するデバイスは多数あるが、その多くは品質も信頼性も疑わしい。

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