アップルのスマートホーム事業は成功するのか--2022年は運命の分かれ目 - (page 3)

David Priest (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2022年03月10日 07時30分

 しかし、もしAppleのスマートホームハードウェアがHomePod Miniだけなのであれば(「Apple TV」も含めるかどうかは議論の余地がある)、NestのメッシュネットワークやEeroのルーターを検討するハードルは、一気に下がるだろう。そうなれば、GoogleやAmazonと連動するホームセキュリティを考えるのは当然だし、次にはGoogleアシスタントやAlexaを搭載するスマートスピーカーも、断然有力な候補となってくる。

 平たく言えば、Appleがこの市場に不在だったばかりに、Appleユーザーにとって、他の選択肢の検討がひどくやりやすくなってしまったということだ。

Appleはどうするのか、何ができるのか

 Appleが2007年にiPhoneを発売してから5年後、米国人のスマートフォン所有率は39%だった。2021年には、その割合は倍以上の85%に達している。

 Amazon EchoでAlexaがデビューしてから5年後、米国人のスマートスピーカー所有率は約25%だった。今、われわれは、音声対応スマートホームの第2ステージが始まった段階にいる。

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もはやHomeKitはAppleのスマートホーム事業の推進剤にはならない。MatterはHomeKitの機能のほとんどを実現してしまう。
提供:Screenshot/Apple

 そうなると、問題はAppleがテクノロジー企業として成功し続けるかどうかではない。その点は問題ないだろう。問題は、スマートホームにおける次世代の音声統合で優位に立てるのか、それとも、他社が進路を拡大していく中で、独自路線を進み続けるのか、ということだろう。

 「われわれは、スマートホームのアクセサリーについて、セキュリティとプライバシーを妥協することなく、すべてが連動し、ユーザーに多くの選択肢を与えて相互運用性を確保するものでなければならないと考えている。だからこそ、新しいMatterの策定とサポートに協力している。現在HomeKitのアクセサリーをお使いのAppleユーザーが享受しているのと変わらないレベルのセキュリティ、プライバシー、使いやすさを、スマートホームのあらゆるアクセサリーが備えられるようにするためだ」。Appleの広報担当者は、こう話している。

 具体的なことは分からないものの、HomeKitとAppleのスマートホーム製品を初期の頃から追いかけてきた者として、言いたいことがある。1つは、2022年のAppleから現実的に予想される展開に関すること、そしてもう1つは、スマートホームという市場でそれなりのシェアを競合他社に奪われたくないのであれば、Appleが今から数年のうちに積極的に追求すべきことだ。

 既に強力なHomeKitセキュアビデオプラットフォームが、万全に暗号化されたクラウドストレージを「iCloud」ユーザーに提供していることを考えると、今はAppleにとって、動画対応ドアベル、あるいはそれ以外に何らかの防犯カメラを発表する好機だろう。とりわけ、2022年は好機だ。というのも、Matterは最初のうちは動画デバイスをサポートしないからだ(ただし、Matterの最高経営責任者(CEO)によると、遠からず対応する予定だという)。筆者にも、熱心なAppleユーザーながらRingのドアベルを玄関ポーチに設置している知人が何人かいる。ストレージにはiCloudアカウントを所有しており、HomeKitセキュアビデオの映像は実質上無料で保存できるのだが、その人たちはRingのようなメジャーなブランドのデバイスが提供する、より洗練されたユーザーエクスペリエンスを好んでいるのだ。そういう顧客層が、Apple製品の登場を待ち続けている。

 最後に、確率は最も低い予測になりそうだが、Appleにとって最大の課題は、最終的にWi-Fiということになるはずだ。スマートホームの開発企業なら以前から分かっているように、ルーターはスマートホームのエコシステムにとって、発展を左右する極めて重要な要因だ。それを考えれば必然的に、ルーター開発への投資が、Appleにとって長期的に意味をもつ。ルーターを頂点とするトップダウンのアプローチがあってこそ、同社の統合型のウォールドガーデンは、ひときわ有効に管理されるからだ。多くのAppleファンにしてみれば、Appleのルーターへのアップグレードは迷う余地のない選択肢になるだろう。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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