タリバンはSNSを「武器」にする方法を心得ている

Katie Collins (CNET News) 翻訳校正: 編集部2021年08月26日 07時30分

 8月16日の朝、BBCのニュース番組の生放送中に、ジャーナリストのYalda Hakim氏のスマートフォンにタリバンの広報担当者、Suhail Shaheen氏から着信があった。Shaheen氏は、Hakim氏と英国の視聴者たちに対し、カブールの人々は安全であり、20年ぶりに首都を奪還したタリバンが誰かに復讐することはないと語った。

タリバンの兵士
8月16日、何千人ものアフガニスタン人が首都カブールから逃げ出そうと急ぐ中、ハミド・カルサイ国際空港近くにはタリバンの兵士の姿があった。
提供:Haroon Sabawoon/Anadolu Agency(Getty Images)

 Shaheen氏は生放送中の西側ジャーナリストに電話をかけるだけではない。同氏はTwitterを駆使する数少ないタリバン幹部の1人でもあり、タリバンの意向について数十万人のフォロワーにツイートで発信を続けている。タリバンは、米軍の撤退により、ここ数カ月で再びアフガニスタンで復権した。

 Shaheen氏は過去2日の間Twitterで、タリバンの兵士は家屋内への侵入を禁じられており、兵士が若い女性に結婚を強制していたという報道は「悪意ある宣伝」だと説明した。Shaheen氏がTwitterで語るタリバンの行動と意図についての話は、アフガニスタンで起きている暴力虐殺に関する報道、およびアフガニスタン国民のパニックや恐怖の様子と食い違っている。アフガニスタン国民の多くは、ここ数日間、国から逃げ出そうとしている。

 Shaheen氏のTwitterという存在および、同氏のツイートと報道の不一致は、TwitterをはじめとするSNS企業が現在進めている過激派やテロ組織との戦いにおける、驚くべきひずみの一例だ。SNS企業は、自社のプラットフォームがテロ組織による人材募集や偽情報拡散に利用されないように戦っている。だが、タリバンはソーシャルメディアを使って世界中のオーディエンスに向かって率直に語りかけ、正当性を確立しようとしているようだ。そして、これにどう対処すべきか戸惑っている企業があるのは明らかだ。

タリバンの英語を使う広報担当者、Suhail Shaheen氏のTwitterアカウント
タリバンの英語を使う広報担当者、Suhail Shaheen氏のTwitterアカウント。
提供:米CNETによるスクリーンショット

 少なくとも、TwitterにはタリバンのメンバーによるTwitterの利用を禁じるポリシーはないようだ。同社は、評価の分かれる著名人がTwitterで発言するのを許すかどうかという議論には慣れているはずなのだが。2020年、Donald Trump氏米大統領(当時)のアカウントを停止したにもかかわらず、なぜタリバンの代表者らには発言の場を提供するのかという問題に直面している。Twitterは同社の対応方針について、「迅速性を維持する」ため状況がすぐに変わる可能性があると述べたが、現在のところタリバンはツイートを続けている。

 Twitterは、世界の政治的指導者のための、公共の利益に関するフレームワークを採用している。このフレームワークにより、公共の利益にかなう場合は、政治的指導者のツイートはルールに違反していても認められる。タリバンの広報担当者は政治的指導者でも、「指導的立場に選出」された人物でもない。とはいえ、Twitterがこのフレームワークを利用して、(Trump氏のアカウント停止の理由になったような)暴力の扇動にTwitterを利用しない限り、タリバンがアフガニスタン国民や外の世界とTwitter上でコミュニケーションし続けられるようにしているという可能性はある。

Twitterはタリバンの微笑みの仮面

 タリバンが前回覇権を握った2001年には、SNSはなかったがプロパガンダはあり、タリバンにはプロパガンダのエキスパートがいた。20年後、タリバンはその戦略をデジタル時代に合わせてアップデートした。

 非営利の政策研究団体Afghanistan Analysts Networkの共同創設者、Martine van Bijlert氏はブログで、アフガニスタンの都市や地方が次々と陥落していったここ数カ月、注意深く見れば「慎重にキュレーションされた」親タリバン的投稿がSNS上に溢れていたと述べた。そうした投稿は、「法と秩序を伝え、安心させつつ脅すことを目的とする意図的なメディアエンゲージメント戦略」を示しているという。

 The New York Times(NYT)によると、タリバンがアフガニスタンの首都カブールを占領した後、Twitter上に数十件の親タリバンアカウントが出現し、兵士の勝利を祝福するタリバンの指導者たちを撮影した5本の動画をシェアした。これらの動画は公開後24時間で50万回以上再生された。

 NYTは、TwitterとFacebookには8月9日以降、タリバンと関わるアカウントとFacebookページが新たに100件以上出現したことを確認した。タリバン指導者のものを含む数十件の親タリバンアカウントは、数カ月あるいは数年の間休眠状態だったが、過去数週間に動きが活発になったとNYTはみている。

 Facebookは、タリバンに同社のサービス利用を認めるかどうかについて、以前からポリシーを持っている。同社の広報担当者は次のように述べた。「タリバンは米国の法律の下、テロリスト集団と定義されている。当社はコミュニティー規定の危険な団体に関するポリシーの下、タリバンを当社サービスから排除する。つまり、タリバンおよびタリバンの代理によるアカウントを削除し、タリバンに対する称賛や支援を禁止する」

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