だがTwitter上では、タリバンのアカウントが世界を安心させようとするメッセージを投稿している。書籍「The ISIS Peril」(未訳)の著者、Kabir Teneja氏はGlobal Network on Extremism and Technologyのブログで、Twitterを利用する3人の主要なタリバン関係者を指摘した。「イスラム首長国」の広報担当者のZabiullah Mujahid氏、ドーハの政治事務所の広報担当者のMuhammad Naeem氏、そして英語圏のメディアとのコミュニケーションを担当するShaheen氏だ。本稿執筆現在、3人のTwitterのフォロワー数は合わせて84万5000人以上だ。
米CNETはShaheen氏に接触を試みたが、Twitterのアカウント所有者の身元を確認することはできなかった。だが、アカウントのプロフィール画像はテレビ出演や記者会見のものと一致しているように見える。また、カブールのタリバンを代表して公式声明を発表しているように見える。
インドのデリー在住のTeneja氏はメールで、これらの3つのアカウントは「接触することを恐れている世界に対し、タリバンは対話し、質問に答え、自分たちを表現することをいとわない、他を受け入れる集団であるとアピールしている。これが、あらゆる手を尽くして正当性を生み出そうとするタリバンだ」と述べた。
だが、アフガニスタンに住む多くの女性にとって、タリバンがTwitterで語ることは、彼女たちがこの組織について知っていることと一致してはおらず、恐怖を和らげる効果はほとんどない。カブール在住の22歳の学生、Aisha Ahmadさんはメールで「彼らはTwitter上では非常に優しそうだが、現実世界では容赦ない。彼らはTwitter上で100万回以上嘘をついている。Twitterはタリバンにとって微笑みの仮面のようなものだ」とした。
教師で活動家のPashtana Durrani氏も、タリバンがTwitterで語っていることを信頼せず、「正当性を認めさせようとしている」と同組織を非難する。同氏はWhatsAppの音声投稿で「みんな、タリバンの言うこととやることは別物だということを理解しなければならない。そして、やつらが自分たちのやり方に戻らないよう、行動を起こさなければならない」と語った。
タリバンが女性の権利を支持するまでは、彼らがTwitter上で展開しているPR戦略が奏功することはないとDurrani氏は考える。だが、タリバンが言っていることの真偽を証明できない以上、Twitter上の公式声明が無批判で報道される危険性は残る。
西側メディアが急激に変化するアフガニスタンの現状を正確に報じようと苦戦する中、Shaheen氏の英語でのツイートは特に情報を歪める可能性を持つ。BBCの特派員を呼び、CNNのChristiane Amanpour氏にインタビューさせるなど、タリバンが外国のマスメディアと非常に容易に関わっているという事実は、Teneja氏とvan Bijlert氏が懸念する、国際舞台でのイメージを管理するための練られた戦略があることを示している。
Twitterにおけるタリバンの存在は、対外的なメリットだけを狙ったものではない。身元の特定を恐れて匿名を求めたアフガニスタン人のある学者は、タリバンのツイートのほとんどが、現地語のパシュトゥー語とダリー語によるもので、英語のツイートは最も重要な発表だけであると指摘した。「タリバンはTwitterをうまく使って、最初にアフガニスタン人に、それから海外の人々に、自分たちの政治的な情報を広めている」とこの学者は語った。タリバンはここ数カ月、WhatsAppなど他のSNSやメッセージサービスも使い、アフガニスタンの人々とコミュニケーションをとっている。
この記事を書くにあたって取材した複数の人々が、タリバンの公式アカウントによるツイートはパキスタンに拠点を置く複数のアカウントによって拡散されていると指摘した。タリバンの評議会の多くはパキスタンにある。Teneja氏は「サポート用に設計された宣伝ネットワークがあるかどうかは分からないが、パキスタンのアカウントのネットワークはかなり有機的に見える」と語った。
タリバンの言葉とは裏腹に、タリバンの兵士がアフガニスタン全土で犯している暴力的な残虐行為の報道と、タリバンが選挙を行わずシャリーア(イスラム法)に基づいて統治しようとしていることは、よく知られている。Twitterについては、タリバンの広報担当者による同社プラットフォームの利用をいつまで許容し続けるのかという疑問は残る。同社がタリバンをプラットフォームから排除するとしたら、何が転換点となるのだろうか。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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