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調査結果から読み解くコロナが世界に与えた影響--日本では「Chromebook」需要が急伸

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コロナ禍で明暗がわかれた分野

 2019年末、中国の武漢で謎の肺炎患者が大量に発生しているとの情報があり、あっという間に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックという大問題に発展した。世界各地で外出自粛や都市封鎖(ロックダウン)といった対応がとられ、人の動きが止まってしまった。そのため、人々が出かけることによって利益の得られる飲食業界や旅行業界は大打撃を受けている。

 一方、逆に需要が高まって活況を呈している分野も存在する。たとえば、NPD Groupの調査によると、米国では2020年1月から9月にかけて、パン料理を解説した書籍の売上げが前年同期間比145%増、料理レシピ本の売上げが同15%増えたそうだ。また、一時的に売上げの減少したDIY関連店舗だが、状況は急速に回復しつつあり、多くの人が自宅でパンデミック収束後にDIYしたいとの意向を示している、との調査結果もある。外出できなくなった人々が、自宅で快適に過ごそうと考えて巣ごもり消費を盛んにしているのだろう。

 その裏付けとなるデータは他にも存在する。IDCは、2020年は家庭向けスマートデバイスの世界出荷台数を前年比4.1%増と予測したのだ。消費者がバカンスや旅行、外食などに向けていた出費をスマートホームデバイスへ振り分けるからだという。さらに、自宅で過ごす時間の増えた人々のあいだで健康志向が高まり、フィットネスに活用可能なウェアラブルデバイスに対する需要が増えるらしい。IDCは、2020年の出荷台数を全世界で同14.5%増と予想している。

情報接点や消費行動がオンラインへ移動

■ECサイトの利用が増加


 新型コロナの影響は、オンラインにもおよんだ。こちらは日本のデータだが、「YouTube」でセルフカット(自宅散髪)や自宅エクササイズ、家庭菜園、料理の作り置きに関連する動画の視聴回数が増加した。家庭で過ごす時間を快適にする情報への需要が高まったせいだろう。

 もちろん、純粋な消費行動もオンラインへ移行した。通販サイトで買い物する人の数や頻度が増え、ECサイトのアクセス回数が急増したのだ。Comscoreの調査によると、2020年に入ってからのAmazon.com、Walmart、Targetといった大手ECサイトに対する訪問回数は、3月9日から15日までの1週間がその時点で最高を記録し、前週比3.8%増となった。特に、年末商戦と重なる感謝祭からクリスマスの期間は、大きく前年を上回っている

 ただし、オンラインショッピングに対する情熱が高まると、それをサイバー犯罪者たちは利用しようとする。Check Point Software Technologiesの調査では、11月に入ってフィッシングメールが倍増したという。詐欺の被害に遭ったり情報を不正取得されたりしないようにするため、不自然なほど好条件の特売に用心し、パスワード再設定を促すメールは疑う、といった対応が有効だ。

■フードデリバリーの利用も増えたが


 コロナ禍によって外出が難しくなった結果、「Uber Eats」「DoorDash」「Postmates」といったフードデリバリーの利用も増加した。NPDが英国の消費者を対象に実施した調査では、2020年1月から10月において、フードデリバリーの利用回数が前年同期間比14%増、支出額が同40%増と急成長したという。

 もっとも、外食を特別な体験と考える人は多く、NPDの同じ調査において、回答者の58%がロックダウン解除後にはレストランへ行って食事をしたい、としている。確かに、新型コロナの影響でフードデリバリーの認知度は向上し、利用者が増えた。しかし、ワクチン普及などの効果で人々が再び外食しやすくなれば、フードデリバリー人気は落ち着くのではないだろうか。

自宅で暇つぶしといえば

■やはりテレビかゲーム


 Comscoreによると、米国で昼間にテレビを見る家庭が増えていたという。増加率の点では、今まで通勤や通学していたはずの時間帯である7時から8時と8時から9時が目立っていて、在宅勤務や自宅学習のため家にとどまる人が増えた影響だろうと分析した。

 自宅での暇つぶしといえば、かつてはテレビ視聴が主流だっただろう。もっとも今は、それがインターネット映像ストリーミング(OTT)サービスへ流れている。Comscoreが2020年3月前半の状況を調べたところ、コネクテッドTVやセットトップボックス/スティック経由のOOT利用が前年同期間に比べ2割から4割程度増えていた。たとえば、人気サービス「Netflix」の場合、米国では外出禁止令が初めて出された直後に1週間の平均利用者数が72%増えた、とNPDが報告している。

 巣ごもり消費は、ゲームにも向かっていた。NPDによると、米国ではゲーム市場の売上高が第1四半期に前年同期比9%増で史上最高の108億6000万ドル(約1兆1249億円)となった。専用のゲーム機だけでなく、PCやスマートフォン向けのゲームコンテンツも好調で、サブスクリプションサービスも利用が増えている。

 なお、ゲームコンテンツの売上高に限ると95億8000万ドル(約9923億円)、前年同期比11%増という状況だった。

■押し上げられるデータ通信量


 映像でもゲームでも、現代はインターネットで大量のデータをやり取りするものが多い。それ以外にも、自宅にいる時間が長くなったり、在宅勤務をするようになったりした影響で、一般家庭のデータ通信量が大きく増加していた。NPDが3月に調べた米国家庭の状況は、スマートフォンによるデータ通信の量が前年同月比75%増、前月比27%増になっていたそうだ。

 また、Comscoreは家庭で使われているデバイス別に使われたデータ量を分析している。2020年3月15日から17日と、2019年3月17日から19日を比べたところ、スマートフォンが53%増、ゲーム機が48%増、スマートスピーカーが44%増、映像ストリーミングデバイスが38%増、コネクテッドテレビが37%増、タブレットが33%増、PCが15%増と、軒並み大幅に増加していた。

人とのやり取りもオンラインへ

■Zoomが一躍有名に


 オンライン化したのは消費行動にとどまらない。対人コミュニケーションの多くもオンラインへ移った。ここで知名度を一気に上げたのは、間違いなくビデオ会議サービスの「Zoom」だ。会議や授業がZoomでオンライン化されただけでなく、友人とのパーティなどもオンラインで実行されるようになり、“オンライン宴会”も当たり前になった。

 興味深いところでは、米国では人材採用時の面接もオンラインが増えた。Gartnerが米国企業を対象に調べたところ、4月の時点でオンライン面接が86%で実施されていたという。

 なお、利用者の増えたオンラインショッピング同様、ユーザーが急増したサービスはサイバー犯罪者に狙われやすいので注意が必要だ。Checkは「Zoom」という文字列を含む怪しいドメイン登録が急増したことを指摘し、ESETは50万個を超えるZoomアカウントがダークウェブ上で販売されているとして注意を呼びかけた。

■当然高まるPC需要


 自宅での余暇にしろ仕事にしろ、今やPCを使う場面が多い。事実、PCに対する需要は新型コロナの当初から高まっていた。それなのに、Canalysのデータでは、2020年第1四半期の世界PC出荷台数は前年同期比8.0%減という大きな減少だった。これについてCanalysは、PC生産地のロックダウンや輸送業務の滞りが悪影響を及ぼした結果と分析している。在宅勤務など需要は急増したものの、COVID-19が供給に影を落としたのだ。

 しかし、工場が稼働再開し、輸送状況が改善すると、出荷台数は世界的に増えた。IDCによると、第3四半期は前年同期比14.6%増だった。日本も似たような状況で、低迷の続いていた国内PC出荷だが、電子情報技術産業協会(JEITA)のデータでは2020年4月に前年同月比5.3%増となり、一時的とはいえ反転した。特に、ノートPCは同11.4%増と好調だったのは、在宅勤務で持ち運びやすいノートPCが好まれたのかもしれない。

■日本ではChromebookが急伸


 日本のPC市場で注目すべきことの1つは、Chromebookの急伸だろう。MM総研は、2020年における国内Chromebook出荷台数が前年比10倍もの157.1万台へ急増すると予測したのだ。MM総研は、ノートPC全体の出荷台数を1196.5万台と見込んでおり、今までマイナーでほとんど知られていなかったChromebookが13%を占める勢力になるという。

 Chromebookがここまで増える要因として、MM総研は文部科学省のGIGA(Global and Innovation Gateway for All)スクール構想を挙げる。これは、2023年度中に全国の児童および生徒へ1人1台の端末を割り当てる4カ年計画の取り組みなのだが、新型コロナの影響でオンライン授業に対する必要性が高まり、急きょ2021年3月末までに目標を達成するよう大幅に前倒しされた。これを受け、教育機関がChromebookの大量導入を始め、このような予測となったのだ。

ポストコロナでもデジタル化の歩みは止まらない

 パンデミックが収束すれば、人々は再び街に繰り出し、レストランでの食事やパーティ、映画、音楽、スポーツなどを楽しむようになるだろう。そうすると、一時的に増加したフードデリバリーやストリーミングサービスの利用は落ち着き、家庭でのPC需要も低下する。

 それでも、デジタル化やオンライン化、ストリーミング化などで経験した利便性は、社会に受け入れられていく。在宅勤務やオンライン会議のメリットも、多くの人が実感したはずだ。日本でも脱ハンコの動きが加速し始めた。

 PCやインターネットといったICTが普及して、約20年といったところだろうか。新型コロナウイルスという予想もしなかったものが、世界や日本のICT推進を強く後押しした2020年だったといえる。

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