WWDC 2020で発表された最も重要なこととは?--Appleニュース一気読み

 6月15日〜6月28日のAppleに関連するCNET Japanのニュースをまとめた「今週のAppleニュース一気読み」。Appleは米国時間6月22日から、初のオンライン開催となる世界開発者会議「WWDC 2020」を開催した。各セッションは事前にApple Park等で収録され、基調講演は米国太平洋夏時間6月22日10時、プラットホームの現状と将来について触れるState of the Unionは同日14時から、個別のセッションは翌日以降、毎日現地時間朝10時に公開される形で進行した。

迫力ある基調講演

 基調講演、個別セッションを含め、これまでのステージ上で展開される発表形式ではなく、作り込まれた映像作品のような雰囲気で、特に基調講演ではソフトウェア開発のトップであるクレイグ・フェデリギ氏が、まるでアクションスターのようにSteve Jobs Theaterの中を駆け回りながら発表を展開した。

 Appleは2019年3月に発表したApple TV+で、独自のテレビ番組制作に取り組んでいる。明らかにそのクルーが関わっていると思わせるクオリティの映像は、他社が展開する発表会の中継を退屈なものへと追いやってしまうだろう。

Apple Silicon Mac

 今回の発表で最も重要だったのは、MacがIntelからApple Siliconへ、今後2年計画で移行することだった。これにより、Appleは独自設計のチップによって、Macを自由に成長させることができるようになった。

 プラットホーム変更は14年ぶりで、今回も古いソフトウェアのコードを自動的に書き換えるRosetta2や、新旧チップ双方をサポートするUniversal2アプリ、そして仮想マシン環境などが整備された。

 ただし、前回ほど開発者にとっての負担は重たくないかもしれない。

 そもそもマシンの性能が上がっており、コードを書き換えながら実行してもスピードが出ること、そしてすでに長年にわたって、iPhone/iPad/MacのアプリにおけるAPIなどの共通化によって、画面サイズやUI以外で大きな苦労がないこと、そしてSwiftUIによって、そのUI部分も一体的な開発を実現していることが挙げられる。

App ClipsとWidget

 Appleはこれまで、アプリ開発者に対して、アプリの機能を他から呼び出して活用できる用意する形で、端末上のアプリが協調してユーザーの問題を解決する姿を目指してきた。

 WWDC 2020では、アプリをより簡単に呼び出したり、必要な情報だけを表示し続けたりできる仕組みを取り入れた。ちなみにApp ClipsもWidgetも、Androidでは既に実現されていた仕組みであり、これらの対応は「キャッチアップ」と捉えるべきだ。

 たとえばSiri Shortcutsはその具体的なレシピを作る環境であり、これに対応できるアプリは、Siriからの声かけで、その役割を果たせる、「AI対応」のような誉れが得られる。ただし、レシピ作り自体が流行っているようには思えない。

 iOS 14では、アプリに内包される機能の一部をApp Clipsとして呼び出して、ユーザーが今目の前で必要な機能を呼び出せるようにする仕組みを作った。

 たとえばカフェの支払いをする際、そのメニューの支払いをiPhoneで簡単に済ませようとしても、今まではフルアプリをApp Storeで検索し、ダウンロードして、アカウントを作り、決済情報を登録して、やっと利用できる。

 これを10MBのミニアプリで即座に済ませる仕組みが、App Clipsだ。ユーザー登録はSign in with Apple、支払い情報はApple Payに限定されるが、いままで最速で5分はかかった作業を、30秒で済ませられる仕組みだ。

 Widgetも同様だ。ホーム画面にアプリの情報を表示できるようにし、アプリを起動しなくても一目で必要な情報を確認できる。1つのウィジェットに複数のアプリを重ねるスマートスタックでは、Siriがそのときの状況に応じて必要そうな情報を自動的に選んで表示させる。

 Appleはアプリ活用の拡大による経済圏の発展を目指している一方で、ユーザーに対しては「スクリーンタイム」機能で、スマホ画面をどれだけ見ているのかを明示し、その時間の削減を呼びかけている。こうした矛盾を解決する方法が、少しずつ整備されている印象を受ける。

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欧州、米国でApp Storeが反トラストの調査対象に

 Appleは世界のスマートフォン市場の15%に満たないシェアしか保持していないが、App Storeの売上高はGoogle Playの倍近くを維持してきた。しかしながら、課金の仕組みはApp Storeを経由したものに限定され、外部でのサービスを行う場合でも、価格を同一にするよう制限をかけた。

 Apple Payについても、他社製の電子決済の仕組みをiPhoneに入れることができない現状が続いている。これらに対して、欧州委員会は、競争法違反の疑いで調査に乗り出している。

 このきっかけを作っているのが、1年以上前のSpotifyの申し立てだ。Spotifyは、App Store外でより安い購入手段を消費者に知らせることを制限している点を指摘しており、今回の調査の焦点ともなっている。

 米国においても、同様の調査が行われることになる。Spotifyは欧州の企業であり、ゲートキーパーとなっている米国企業たるAppleの支配に対抗するという構図も加味する必要がありそうだが、米国での調査はGoogleとの比較となるため、Appleプラットホームの閉鎖性を指摘されると弱い部分がある。

 Appleはタダ乗りを許容すべきではない点、ユーザーの体験とプライバシー保護の観点、そして先日発表された経済圏と雇用への貢献から、妥当性を指摘するこれまでの主張を行うものと考えられる。

欧州委員会、「ApplePay」と「App Store」を競争法違反の疑いで調査へ (6/17) アップル「App Store」への反トラスト調査、米国でも検討か (6/25)

接触通知アプリ、世界に拡がる

 AppleとGoogleによる新型コロナウイルスの接触通知アプリが各国でスタートしており、ドイツでは公開初日で650万ダウンロードを達成した。日本でも6月22日の段階で326万ダウンロードを達成し、広がりを見せている。

 このアプリは、Apple・Googleが共同で開発したAPIを、各国・各地域の公的機関に限って提供し、Bluetoothを使ったすれ違い通信を活用して、濃厚接触のログを作り、新型コロナウイルス患者が自己申告することで、ログに残っている人に感染の可能性を通知する仕組みだ。

 日本でも当初、そして英国でも独自の接触通知アプリを構築しようとしていたが、iOSのセキュリティ制限に阻まれ、断念せざるを得なかった経緯があり、個人情報や位置情報を特定しない形での接触通知アプリは、結果的にApple・GoogleのAPIに統一されつつある。

 その一方で、一旦収束しビジネスなどの再開に踏み切っていた米国では、再び感染拡大が確認されつつある。Appleは営業を再開した直営店のうち、アリゾナ州、フロリダ州、ノースカロライナ州、サウスカロライナ州の11店舗で再び閉鎖せざるを得なくなった。

ドイツの新型コロナ接触通知アプリ、公開後1日で650万ダウンロード達成 (6/19) 英、独自のコロナ接触通知アプリを断念--アップルとグーグルの技術を採用 (6/19) 新型コロナ接触確認アプリ「COCOA」が326万ダウンロード--配信から3日で (6/22) アップル、米国の一部店舗を再閉鎖へ--新型コロナ感染拡大で (6/23)

その他

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