日本電気(NEC)は自社のオウンドメディア「wisdom」と連携して、幅広いビジネス情報や同社のソリューション導入事例、イベント情報、プレスリリース、動画などの各種コンテンツを配信するBtoBアプリ「NECアプリ」を提供している。
当初は自社開発を選択した同社だが、その後アプリ開発・運用・分析をクラウドで実現する「Yappli(ヤプリ)」を選んだ。その背景には、NECが抱えるマーケティングへの課題があったーー。
「企業のブランド構築と営業成績を高めるには、顧客の関心をまずは引かなければならない」と語るのは、NEC IMC本部 メディア・デジタルマーケティンググループの北原則子氏。同社は前者の課題に対して専任チームを用意し、社会動向や競合他社を調査。後者の課題もデジタルマーケティングを活用して注力している。
以前は営業部門が一対一で顧客に向かい合う「ハイタッチセールス」が主流だったが、すでに顧客はインターネットなどから事前に情報収集するのが当然の世の中だ。そのため、同社は情報システム部門に偏っていたアプローチを拡大し、「現場の課題感」を意識したスタイルに変化しているという。
インターネット経由での情報発信に注力するNECだが、くまなく情報を発信しても営業成績に直結しないのは当然である。そこには市場細分化後に対象を絞ってマーケティングを展開するターゲティングが欠かせない。当然同社も自社の長短や環境要因を加味しているが、そのチャネルの1つとして選んだのがスマートフォンアプリだった。
このアプリがデビューしたのは、2016年に開催されたイベントでの顔認証システムの体験のためである。同社は「当日登録では混雑を招きかねないため、事前登録するアプリを自社開発」(北原氏)した。しかし「それだけで終わらせるのはもったいない」と、ビジネスに役立つ情報や事例など各種コンテンツを付加させた「NECアプリ」誕生に至る。
以前からウェブなどを介した情報発信はしていたNECだが、各種マーケティングツールで閲覧状況などを分析してみると、思いのほかPCとスマホを併用していることを確認。そのデータから、BtoBであっても「スマホ閲覧(環境を用意すること)の重要性に気付いた」と北原氏は振り返る。
それまで自社でアプリを開発したNECだが、UIの変更など煩雑な開発に限界を感じ、2017年に開発基盤をクラウドサービスのYappliへと移行させた。一見すると不思議な組み合わせに見えるだろう。大手ITベンダーは内製する傾向にあるからだ。
その点について同社は、「クラウドサービス利用時は自社グループ内に同種のサービスがないか探すルールがある。(外部のクラウドサービス利用時は)ガバナンス部門のセキュリティーチェックが厳しいものの、正しく申請すれば使用できる」(北原氏)と説明し、大手企業でも変革が進んでいる状況をつまびらかにした。
北原氏はYappliを選択した理由の1つに「BtoB向け」が大きかったと振り返る。他のクラウドサービスはBtoCを前面に押し出しており、選択肢から漏れたそうだ。また、契約社数も選択要素の1つだった。「クラウドサービスは先行投資型ビジネスのため、契約社数が多くないと機能に対する投資が難しい」からこそNECはYappliを選んだ。
同社は「新しい情報をスムーズに提供可能になったのは大きい。(新スマホ登場にともなう)画面サイズの最適化など先に対応してくれるため、運用負担やコストも軽減できた」(北原氏)と感想を述べた。前述のとおりNECアプリは、各界著名人などを取り上げるビジネスオウンドメディアwisdomの情報素材も配信しているが、いくつかの課題を抱えている。特定の記事に興味を持ったユーザー情報の取得や記事に対するコメントを開始した場合の運用体制、プッシュ通知の最適化など北原氏はNECアプリが持つ課題を連ねた。
現在NECアプリのアクティブ率は3割と、企業系アプリとしては非常に高い数字を誇る。北原氏は「(プッシュ通知機能があるため)つい押してしまうのかも」と冗談を交えながら、新体制による具体策を講じている最中だと語る。配慮が必要な個人情報と記事のひも付け、ユーザーの属性情報や閲覧情報を基にした興味範囲など踏まえて、ユーザーが望む記事の発信を目指している。
イベント期間以外でも着々とダウンロード数を重ねるNECアプリだが、タッチポイント拡大には特別努めていないという。「(アプリをダウンロードする)特典を用意しないと、BtoBアプリのダウンロード数は増加しない傾向がある。営業が顧客と会話するときの話題にすることが多いため、増えているのかも」(北原氏)と同社は推察する。
同社が2018年に開催したイベントでもダウンロード特典を用意して挑んだところ、TwitterやFacebookによる申請よりもアプリが上回った。単にイベント用だったNECアプリだが、Yappliというプラットフォームを活用することで、着実な進化を実現しつつある。
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