“リアルさ”を追求した高画質撮影と処理は、VRステージングにも生かされている。RICOH THETAで撮影した空室の画像にバーチャル家具や小物を配置する、そこに3DCGの家具を配置するVRステージングは、CGでありながら実物感が重要視されるコンテンツ。リアルさを出すには、影やガラス、金属部分への映り込み、布の質感といった細部の作り込みが必須だ。
「ホームステージングは空室に家具や小物を置くことで、物件を魅力的に見せ、購入検討者に良い印象を与える手法。しかし、実際の家具をレンタルしたり、購入したりするのは時間も手間も資金もかかる。その部分をCGで担うことで、簡単かつ安価に物件の魅力を上げられる」と重山氏はVRステージングのメリットを説く。
リコーでは、1画像に付き3万4800円の「おまかせプラン」と、家具や小物の設置場所や色などを希望にそって作成する「カスタムプラン」(価格:要見積もり)の2プランを用意。サービス開始から5カ月程度だが、評判は上々だという。
「空室率を下げるためにホームステージングを取り入れたいが、借り主が決まった後の家具の処理にこまるなど、やりたいけれど大変というのが本音。そうした方にVRステージングをお見せしたところ『これはいいね。本物と見分けがつかないね』とのコメントをいただいた」と重山氏は不動産オーナーとのやり取りを紹介。さらに「大手不動産会社でも、ホームステージングを採用しているのは一部の地域や高価格の物件に限定されており、一般的な広がりが見えにくい」と続け、現状を話す。
稲葉氏も「ホームステージングの対象物件は限られており、その理由は時間と手間がかかるから。ある程度値の張る物件でなければ導入が難しい。しかし購入意欲の高いボリュームゾーンこそ、ホームステージングにより魅力的に見せたい部分。その要求にVRステージングであれば応えられる」と続ける。
重山氏はVRステージングのサービス導入にあたり、一般社団法人日本ホームステージング協会の認定資格を取得。インテリアコーディネートとの違いや販売するための部屋作りについて学んだ。
「リコーは光学系に自信があるが、インテリアやホームステージングといった分野の専門家がいなかった。であればきちんと自分で勉強したいなと。資格を取得するために学ぶうちにバーチャルの利点も見えてきた」(重山氏)と話す。
ファミリー層、カップル層の両方に通用する物件もあるが、リアルなホームステージングでは、どちらか一方のコーディネートを採用せざるを得ない。しかしCGであれば、両パターンを作って見せられるという。
CGのメリットが際立つホームステージングだが、重山氏は「実際に室内を内見して、家具の配置などを見られるに越したことはない。その場で営業担当者と話せるなど、滞在時間を伸ばす効果もあると聞く。しかし費用、手間(家具をはこんだり、鍵の受け渡しなど)、地域(地方などはホームステージング取り扱いの業者が少ない)が限られるといった3つの壁があり、多くの物件に導入することは不可能。そうした導入したいけれどできなかった物件でも可能にするのがVRステージング」と位置づける。
12月6日には、片付けから家具レンタルまでトータルでホームステージングを手掛けるサマンサ・ホームステージングと業務提携を発表。12月17日には、野村不動産アーバンネットがVRステージングを採用したことをリリースするなど、積極的な展開を見せる。
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