存在しないはずの「ターミナル0」が羽田に出現、なぜ?--異業種連携で「未来の空港」を研究開発へ

 羽田空港を運営する日本空港ビルデングは、空港設備を模した「実験フィールド」を備える研究開発拠点「terminal.0 HANEDA」(以後ターミナル0)を、羽田イノベーションシティ内にオープンした。快適なターミナル1、2、3を構築するための実験場との位置づけで、さまざまな異業種企業の参加を受け付ける。

terminal.0 HANEDA
terminal.0 HANEDA

 ターミナル0は、羽田空港のさまざまな課題に対して、オープンイノベーションで研究開発するための拠点だ。生み出されたその成果をターミナル1、2、3に反映させることを目指している。日常的に利用できるコワーキングスペースを有し、現時点で32社1団体1大学が参加。それぞれのノウハウや技術を生かして研究開発が行える。

 コワーキングスペースは開放的で、飛行機や旅客機などを眺められる場所もある。鍵付き部屋や、ウェブ会議専用の個室も備える。さらに、シャワーやサウナ、仮眠室を設置し、快適に働ける環境を整えている。

オープンイノベーション推進のため鍵付き部屋でもガラスは透明
オープンイノベーション推進のため鍵付き部屋でもガラスは透明
窓からは羽田空港の滑走路も見渡せる
窓からは羽田空港の滑走路も見渡せる
仮眠室やシャワー、サウナまで完備
仮眠室やシャワー、サウナまで完備

 さらにユニークなのは、ボーディングブリッジ、航空機内、保安検査場、ラウンジ、バゲージドロップといった空港機能を簡易的に再現した「実証フィールド」を備える点だ。参加企業はここで羽田空港のさまざまな課題への解決策を試せる。

実際の運航データを反映した案内表示
実際の運航データを反映した案内表示
日本空港ビルデングで事業開発部 事業開発課 副課長を務める池田篤氏
日本空港ビルデングで事業開発部 事業開発課 副課長を務める池田篤氏

 単に空港内を再現しただけでなく、その設備も最先端だ。例えばバゲージドロップ(自動手荷物預け機)は、空港外にも設置できるコンパクトな方式で、ホテルや主要駅で荷物を預けて、手ぶらで空港に到着できる。担当者は「現状は受託手荷物を空港内で預ける必要があるため、空港に1時間前に到着しなければならない」と課題を説明し、この手間をなくすことで利便性向上につなげる。なお、預けた荷物はホテルの係員や配送業者が空港まで運び飛行機に積み込まれる。

空港外に設置できる自動手荷物預け機
空港外に設置できる自動手荷物預け機

 旅の支度でかさばるのが衣服だ。長期の旅行や出張ではスーツケースに入り切らず、空港の出発ロビーでギューギューに押し込んでいる人をよく見かける。ターミナル0には衣類を3分の1サイズにまで圧縮できるプレス機を設置。卓上に置けるほど小型で、ボタンを押すだけで衣類をコンパクトに圧縮できるサービスの実現をめざす。

衣類を3分の1のサイズにまで圧縮できるプレス機
衣類を3分の1のサイズにまで圧縮できるプレス機

 また、昨今は世界各国の空港がアート表現の場となっている。そこで、ターミナル0にもアートボックスを設置。アート作品等の展示、ギャラリー活用が可能。空港でのアート活用の検証なども行えるという。

アートボックス
アートボックス

 保安検査場のストレス低減にも取り組む。保安検査場は多くの旅客にとって緊張する場だといい、アートの展示や室温、香りなどで利用者のストレスをどう軽減できるか検証する。

保安検査場を再現したブース
保安検査場を再現したブース
アートや香り、照明などで利用者のストレスを低減できるか検証
アートや香り、照明などで利用者のストレスを低減できるか検証
保安検査が完了した手荷物はロボットがゲートまで運んでくれる
保安検査が完了した手荷物はロボットがゲートまで運んでくれる

 こちらはダイキンと共同開発した、心地よい風を不定期なリズムで出してくれる扇風機だ。「軽井沢の風」を再現しており、確かに心地よい、まるで春の屋外に居るような風を味わうことができた。

不定期な心地よい風が出てくる扇風機
不定期な心地よい風が出てくる扇風機

 そのほか、搭乗ゲートの電源付き座席、ゲートで飛行機を待ちながら買い物できるデリバリーロボット、マッサージチェアスペースに設置できる電位治療器など、空港のあらゆる要素が再現されていた。

座面の耐久性などを検証
座面の耐久性などを検証
マッサージチェアスペースに設置できる電位治療器
マッサージチェアスペースに設置できる電位治療器
空港ラウンジを模したスペースでは快適性を高めるガラスフィルムや空調を検証
空港ラウンジを模したスペースでは快適性を高めるガラスフィルムや空調を検証

 ターミナル0では上記フィールドを生かし、「保安検査場の改善」「空間デザインやアート」「ロボットを活用した省人化」「空飛ぶクルマや宇宙」「働き方の改善」をテーマに研究開発に取り組む。

参加企業や団体の一覧
参加企業や団体の一覧

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