近年、MAやDMP、AIなど、デジタルテクノロジの進化が著しくなってきている中、デジタルトランスフォーメーションに積極的に取り組んでいる企業ではすでに様々なマーケティングテクノロジの導入が進んでいます。そして導入が進まない企業とはテクノロジ活用における差の開きがどんどん大きくなっているのが現状です。
本稿では、そのような企業のテクノロジの導入実態と今後の展望、および導入に向けた取り組み方についてご紹介していきます。
現在、多くの企業が「顧客体験向上」のために最新のデジタルテクノロジの実装を通じてシステムを先進化するとともに、それを使いこなすだけのスキルを自社内に醸成することをデジタルトランスフォーメーション(DX)として定義し、取り組み始めています。一方で、その取り組みはまだまだ道半ばという実態も見えてきました。
電通デジタルが委託し、Forrester Consultingが実施した調査(電通デジタル委託 Forrester Consulting社 ソートリーダシップ報告書 2017年8月「日本におけるデジタルトランスフォーメーションおよびデジタルマーケティングに関する実態調査:2017年度」を基に作成)によると、いま企業が考える自社のビジネスに関する優先事項として「顧客体験向上」を挙げる企業が83%と最も多く、その「顧客体験向上」というビジネスゴールに向けて、89%の企業がデジタルトランスフォーメーションに取り組んでいることがわかりました。そのうち取り組みがひと段落したと考えている企業(以下、デジタルトランスフォーメーション先進企業)は11%で、残りのほとんどの企業がいまだ取り組み中あるいは計画中というのが実態です。
デジタルトランスフォーメーションにおける具体的な取り組みとしては「業務システムを先進化」し、それを使いこなすだけの「デジタルスキルを向上させる」ことを主領域として考えている企業がいずれも42%とトップの回答となっています。また、それを成功させるための主要因としては「組織におけるデジタルイノベーション文化の醸成(49%)」、「主要なデジタルテクノロジの実装(42%)」が上位項目として挙がってきています。
このような実態を踏まえて、すでに企業が実装している、またはこれから実装していこうと考えているデジタルテクノロジにはどのような傾向があるのかについて詳細にみていきます。
現状、企業に実装されているテクノロジ(図1)をみていくと、「SFA/CRM(顧客管理システム)」は約8割の企業が導入済みと回答しており、次いで高いのは「データ解析」や「Web解析」などの分析基盤系のプラットフォームであることがわかります。
一方で、マーケティングオートメーション(以下MA)やデータマネジメントプラットフォーム(以下DMP)、AIなど話題のテクノロジの導入については、実はまだ2割にも満たないという現状が見えてきました。
また、デジタルトランスフォーメーション先進企業に絞ってみると、他の企業よりも全体的に各テクノロジの導入割合が高く、特にBI、CMS、MA、ソーシャルリスニングなど多分野でのテクノロジが60%前後と高い傾向がみられます。やはりデジタルトランスフォーメーションへの取り組みが進んでいると考えている企業は、すでに様々なテクノロジを取り入れた活動を行ってUX向上に努めていることがわかります。
次に、「今後1年以内に実装予定のテクノロジ」(図2)を見ていきます。実装予定のテクノロジとしては「BI」、「MA」が40%前後で高い傾向となっています。また、デジタルトランスフォーメーション先進企業では、「AI」「DMP」を導入予定とする回答の割合が40%前後と他の企業より高く、これらいま話題のテクノロジは今後1年以内に導入すると回答している企業が多いことがわかります。
上記から、デジタルトランスフォーメーション先進企業を中心に、DMPで企業内外にあるデータを統合管理するとともに、そのデータをMAやAIに連携活用して、マルチチャネルでOne to On eのピープルドリブンなコミュニケーションを実現していこうとしていることがわかります。さらにBIダッシュボードによって経営やマーケティングのKGI・KPIを見える化し、PDCAを効率的・効果的に回していくという形が今後各社の目指す「デジタルテクノロジにおけるありたき姿」となっていることが浮き彫りになりました。
しかし、BI、MAやDMPなどの最新テクノロジをすでに導入した企業でも、うまく活用できていないという話を耳にしたことはありませんか?実際にそういったテクノロジ運用の改善コンサルティングに関する相談が当社にも多数寄せられています。同様の悩みは、これからテクノロジを導入しようとしている企業にも出てくる可能性があると言えそうです。ここからはテクノロジ活用がうまくいっている企業とそうでない企業の特徴について事例も交えながらご紹介します。
最新テクノロジを導入してもうまく活用できていない企業の特徴としては以下が挙げられます。
一方で、うまくいっている企業に共通する特徴としては、以下が挙げられます。
我々が運用改善のコンサルティングを行う際には、まずこのような「テクノロジをうまく活用している企業の特徴」を説明した上で、クライアント企業の取り組み状況と照らし合わせてどこに課題があるかを整理し、その課題の解決へとつなげていきます。導入からご支援する場合には、プロジェクトの最初の段階から上記の特徴を踏まえたプランニング、開発を行っていきます。
ここで具体的なテクノロジ導入に失敗したケースをご紹介します。
相談内容
MAを導入してシナリオ配信を実施しているものの、従来実施していたメール一斉配信と比べて大して差が見られず投下コストに対して導入効果が実感できていない。きちんと効果的な活用ができるようにシナリオや運用方法を見直したい。
ヒアリングから見えてきた課題
・なんとなく「今のマーケティング活動が高度化されるだろう」という思いが先行して導入を決めたため、MAを通じて成し遂げるマーケティングゴールが不明瞭であった。
・複数のMAを比較したものの、仕様の違いを深く理解せずコスト重視でツール選択をした結果、データのつなぎ込みにあたって顧客データベース側の改修が必要となり、システム部門との調整がうまくいかず一部データが連携できない状況となった。
・シナリオ設計は普段取引のあるマーケティングパートナーに依頼し、MAの導入は別のMA取扱いベンダーに発注したが、両者を連携して進めるような体制づくりが出来ていなかった。
――いかがでしょうか。過去のテクノロジ導入を振り返ってこのような状況に心当たりがある方や、これから導入するにあたって不安を感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
前述したようにテクノロジ導入を成功に導くには、なぜそのテクノロジを導入するのかを考える戦略フェーズが非常に重要となります。その戦略に基づき設計・実装、運用PDCAまでの一連の流れをきちんと意識してプロジェクトに臨むことがポイントです。
具体的には、まずは自社のビジネスゴールや現状のシステム、データ構成、体制を正確に理解したうえで、導入しようとしているテクノロジの役割を明確化します。それを踏まえて最適なパートナー・テクノロジを選定し、ゴールや役割をパートナーとも共有したうえで、設計・実装および運用設計を行っていくことが、テクノロジ導入を成功に導くカギとなります。
特に、新しいテクノロジを導入していく場合、どうしても社内の体制やリテラシーが不十分になってしまうことがあります。その際に、戦略、プランニング、開発といった各工程について目先のコスト重視で安易に別々のパートナーに依頼したり、テクノロジの仕様をよく理解しないまま導入を決めたりすることは失敗のリスクとなります。
これからも様々な分野でテクノロジは日々進化していき、企業のビジネス、顧客体験の向上を下支えする大きな武器となっていくことは間違いありません。その武器を最大限有効活用し、「この導入は成功だった」と判断できるようにしていくためにも、今回お伝えしてきたような内容を参考に、これからのテクノロジ導入を進めていっていただけると幸いです。
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