マーケ部門と営業部門がともに“納得”できるABMに--マルケト×ユーザベース協業の狙い

 アカウントベーストマーケティング(ABM)のマーケティングソリューションを展開するマルケトはこのほど、ユーザベースが展開する企業情報データベース「SPEEDA」やABMソリューション「FORCAS」と連携すると発表した。

 マルケトは、(1)高度なターゲティング、(2)エンゲージメントの構築、(3)効果の可視化・分析という3つの段階で、BtoBビジネスにおけるマーケティング部門と営業部門の戦略的な連携強化を実現。3月には外部企業とBtoBビジネスにおけるマーケティングエコシステムを推進することを発表している。

 一方のユーザベースは、企業内に蓄積されている見込み顧客の情報を統合管理するとともに、同社が保有する企業情報データベースをもとに業界の特徴などを関連づけし、より高度な分析によって成約可能性の高い見込み顧客の抽出を可能にするという。


マルケトのマーケティング本部 本部長である小関貴志氏(右)と、ユーザベース執行役員で子会社FORCASの代表取締役も務める佐久間衡氏(左)

 今回の協業によって、BtoBビジネスにおけるマーケティングのどのような課題に対処し、シナジーを生み出そうとしているのか。マルケトでマーケティング本部の本部長を務める小関貴志氏と、ユーザベースの執行役員で子会社FORCASの代表取締役も務める佐久間衡氏に話を聞いた。

変化する「マーケティング部門」と「営業部門」の関係

――まずは今回の協業の背景を教えてください。

小関氏 : BtoBビジネスにおけるABMの推進は日本だけでなく世界的に大きなトレンドになっています。背景にあるのは、テクノロジの進歩によるマーケティング部門と営業部門の関係性の変化です。

 かつては、マーケティング部門も営業部門もお互いの現場のことを理解しておらず対立構造が生まれていた。CRMで見込み顧客へのフォローに連携して取り組んでも、マーケティング部門は「せっかく送り込んだリードを売上にしてくれない」、営業部門は「売上に繋がる有力なリードを送ってくれない」という軋轢が生まれていたのです。そこで最近はもっといい形で協働しようという機運が高まってる。それがABMに注目が集まる背景にあるのです。


変化するマーケティング部門も営業部門の関係

 私たちは、ABMを「マーケティングと営業の協働により重点顧客からの収益最大化を目指す戦略的アプローチ」と定義しています。これは、大きな母数の中から「誰が買ってくれそうか」という絞り込みをする従来のマーケティングアプローチとは異なり、そもそも最初に「誰に売りたいのか」というターゲットを明確にしてマーケティングを展開するものです。最初のタイミングで、マーケティング部門と営業部門が一緒にターゲットを策定するので、高いROIが期待できるのです。

 逆に、今まで効果が出なかったのはマーケティング部門が選定したターゲットに、営業部門が本気にならなかったから。これはどちらかが悪いということではなく、最初にお互いの合意がないまま始めてしまっているところに課題があると思うのです。

 ABMを構成するステップには、できるだけ多くのデータを基に精度を高めていくターゲティング、キャンペーンの実施によるエンゲージメント構築、効果の可視化・分析という3つがありますが、マルケトが最も得意とするのはキャンペーンの運用管理に関する部分になります。ABMで最も重要なターゲティングに関しては、私たち単独で完成できるものではない。ひとことにターゲティングといっても、市場全体のポテンシャル、企業の財務状況、ビジネスの特徴といった情報は、私たちだけでカバーできるものではありません。


マルケトが考えるABMのスキーム

 海外ではすでに企業情報データベースを構築している企業が数多くありますが、そういったデータには日本企業の情報は入っていません。日本でもこうしたデータが活用できればと考えていたところで、FORCASのサービスと出会うことができ、「これが日本のデファクトスタンダードになるのではないか」と考えて協業するに至りました。

――確かに、これまでのBtoB営業はいかに多くのリードにアプローチして、有力な見込み顧客の商談を獲得するかという物量戦略のようなものでしたよね。

小関氏 : そうですね。ただ、営業担当者それぞれには必ずターゲット顧客というものがあって、会社四季報や業界動向などを参考にターゲット企業を決めて個々人で管理していたと思うのです。

――そうした作業をマーケティング部門と営業部門で協働できるソリューションとして提供するということですね。ではユーザベースのサービスにはどのような特長があるのでしょうか。

佐久間氏 : 私は10月にFORCASを分社化するまで、いわば企業情報版のGoogleと言える「SPEEDA」というサービスの開発に携わってきました。

 Googleの検索エンジンは非常に強力なサービスですが、ビジネスで利用するとオープンになっていない企業情報にアクセスできず、入手した情報を業務のアクションにすぐにアウトプットできないという課題がありました。そこで、私たちはクローズな企業情報を集めて、キーワードに対して企業・業界の有益な情報を提供するサービスを作ったのです。


SPEEDAの強みを語る佐久間氏

 こうしたサービスは、金融機関、投資ファンド、コンサルティング会社などが主な顧客でしたが、そもそもこうした市場はそれほど大きいわけではなく、狭い世界のインパクトに留まってしまう。そこで、この企業情報データベースが持つ価値をもっと広めたいという思いから、2013年頃からビジネスの対象を事業会社に大きくシフトしました。

 ただ、決して安くないSPEEDAを導入したいという企業は必ずしも多いわけではない。そこでターゲットを明確にしてSPEEDAのサービスそのものも大きく改善していきました。どういう企業にどのような価値を届けるかというターゲティング=戦略の重要性を私たち自身も強く感じ、SPEEDAでターゲティングを実践してアプローチに繋げていくという作業を、身をもって体験してきたのです。こうした体験から、SPEEDAをABMソリューションに進化させたFORCASが誕生しました。

 現在では、投資やM&Aといったミッションの中で、企業分析、業界分析という作業や、営業やマーケティングの過程におけるターゲット顧客の情報収集に特化したサービスとしてSPEEDAをご利用いただき、営業やマーケティングの作業を効率化することでプロダクトと市場の速やかなマッチングを実現する基盤としてFORCASを位置づけています。

 FORCASを使えば、既存顧客の情報が可視化されて今後どういう企業が顧客になる可能性が高いのかを自動的に提案してくれる。それにより、営業とマーケティングが協働できる、そういうサービスを目指しています。そこで重要なのは、企業の中に眠る既存顧客やリードなどのコンタクト情報と、私たちが保有するリッチな企業情報を掛け合わせて分析するということです。


企業の中に眠るコンタクト情報を整理し、SPEEDAの企業データベースと統合分析する

 ターゲットを選定して営業やマーケティングに注力するというABMは一見すると簡単そうに見えますが、実はBtoB市場はビジネスモデルが大きく変化しており、継続的な収益が見込めるライフタイムバリューを見極める必要がある。そのためには、ポテンシャルのある見込み顧客を発見するために、さまざまな角度の情報を分析して市場動向とも突き合わせる必要があるのです。そこで、私たちが保有する企業情報データベースとマルケトが持つ営業・マーケティングソリューションを組み合わせることで、ライフタイムバリューに着目したABMを実践していけるのではないかと考えています。

――今回の協業にはどのような点を期待しているのでしょうか。

佐久間氏 : 2つのことが挙げられます。ひとつは、私たち自身がマルケトのユーザーで、製品の素晴らしさを体験しているということ。運用も非常に簡単で、SPEEDAやFORCASの情報も簡単に連携できる。私たちの製品価値を最大化できるのではないかという点に期待しています。もうひとつは、私たちとマーケティングに対する考え方が似ているという点です。目指すべきところにスピード感をもって臨めるのではないかと考えています。

 企業情報の分析やターゲティングも、実際のアクションに落ちなければ何も意味がないと考えています。そのアクションの部分でマルケトの製品が培ってきたノウハウが大きく意味を持つのではないでしょうか。

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