マーケ部門と営業部門がともに“納得”できるABMに--マルケト×ユーザベース協業の狙い - (page 2)

「シナリオ」を基にターゲットを抽出し、アクションに移す

――今回の協業によってマルケトの利用企業にはどのような活用シーンが提供できるのでしょうか。

小関氏 : たとえば、SPEEDAにアクセスしていただくと、どの業界が好調か、苦戦しているか、その業界の中でどの企業が業績がいいかなどを、俯瞰から深堀りまですることができます。どの業界に注力するかという入口から、どの企業をターゲットにするかまで担当者の関心に合わせてどんどん深堀りできるのです。そして企業情報を開いていただければ、その企業の主要な情報、財務指標、事業戦略、関連ニュースなどを一元的に閲覧できます。業界の全体感を見ながら個社に絞り込んで見ていくことができるのが強みです。


両者の協業によって提供できる新たな価値について語る小関氏

 加えて私たちが注目しているのが、ターゲットリストの「シナリオ」という機能です。これはいわば条件検索のような機能で、さまざまな検索情報=ターゲットにしたい企業のシナリオを入力すると、その条件に合う企業を発見できる機能です。シナリオをベースにした企業のセグメンテーションは、営業担当者やマーケターが本当に使いたい情報を生み出すのではないかと思うのです。

 ここで得られたシナリオに沿ったターゲット企業のリストはダウンロードしてマルケトに取り込むことができますし、FORCASにはすでにその連携機能が組み込まれているので、マルケトのキャンペーン運用機能を活用してすぐにアクションに移すことができます。ターゲティングのシナリオ策定、対象企業の抽出、そして具体的なアクションへとスピーディに進められることが大きな強みになります。

 たとえば、業績を大きく伸ばした企業、人材増強に力を入れている企業、広告宣伝費を増やしている企業、投資に積極的な企業、事業の立て直しに取り組んでいる企業など、ネットで探せば見つかるのかもしれませんが、こうしたシナリオに沿った企業を探し出す作業を大きく効率化できるようになることが、今回の連携の大きなポイントになると思います。


ターゲット選定のステップでシナリオに応じたターゲット企業を抽出し、アクションに繋げる

――企業の状況は刻々と変化すると思いますが、SPEEDAが保有する企業情報はどのような頻度で更新されていくのでしょうか。

佐久間氏 : 更新頻度はデータの種類によって大きく変わっていくと思いますが、シナリオそのものは大きく変化しないと考えています。ただ、たとえばターゲット企業に関する日々のニュースをキャッチアップして「いま営業に行くべき企業」を提案するような機能はまだ実装されていません。この点は今後、必ず対応すべき機能だと思います。

――人工知能や機械学習といった最新テクノロジはどのように活用していますか。

佐久間氏 : 機械学習はあらゆる場面で活用しています。たとえば、マルケトの中にあるコンタクト情報とSPEEDAが保有する企業情報を掛け合わせてどこをターゲットにすべきかという分析とスコアリングは機械学習で対応しています。また、SPEEDAには約500万社の情報が登録されていますが、1社1社の企業を560ある業界と正確に結びつけるという作業は非常に重要で、すべてを人の手でできるものではありません。こうした部分も機械学習で行っています。

 私たちにとって人工知能や機械学習は大切なテクノロジですが、それよりもそうしたテクノロジによって何が実現できるのかが重要だと考えています。社内でもエンジニアオリエンテッドにならず、テクノロジをビジネスにどのように応用できるのかを常々考えていますね。

営業部門が気付かない示唆を、マーケティング部門が提供する

――“足で稼ぐ”ことが重要だった昔とは違い、今の時代は営業活動における情報の重要性は高まっています。しかし、ビジネスに直結する可能性の高い情報を集めることは簡単ではありません。今回の協業によって生まれたソリューションはこれからの時代、重要性がどんどん増していくのではないでしょうか。

小関氏 : まさにその通りだと思います。ただ、そこで大切になってくるのは、テクノロジが収集・分析した情報を信じられるかどうかだと思うのです。マルケトの顧客は規模も業種も用途もさまざまで、その分営業・マーケティングのターゲットにしたいシナリオも複雑多岐に渡ってきます。

 そこで、そうした複雑なシナリオのニーズに適合するターゲット顧客を抽出できれば、またそのシナリオに合致するものがなければ代替のシナリオを考えて抽出すれば、その情報に大きな納得感が生まれます。この納得感というものが、営業部門とマーケティング部門が協働する上で最も重要ではないかと思います。


佐久間氏 : 納得感を生み出すという観点では、FORCASには既存顧客との類似性がある企業の抽出が可能で、こうしたサジェストも生かしていただいて、システムのアルゴリズムの生み出すものと人間の感性の間を埋めてもらえればいいですね。

――たしかに、シナリオという共通言語を営業部門とマーケティング部門が共有して合意形成することは大きいですね。両者の連携がうまくいかない背景には、情報が属人的で共有できていないという点もあると思います。

小関氏 : そこはものすごく大きいと思います。加えて、今後はそのシナリオが本当に正しかったのかという答え合わせを営業部門とマーケティング部門が一緒にやっていくことも大きな改善効果に繋がると思います。もちろん、営業の知見がFORCASの見立てを上回れば、それはFORCASによる運用の改善に結びつくと思います。

 営業担当者が決めたターゲットにあわせてリード獲得に躍起になる下請け的なマーケティングを否定するわけではありませんが、そういった現状を大きく変えていくためには、営業担当者が気付いていないものをどれだけ示唆できるかが重要だと思います。それがマーケティング部門が営業部門にとっての新たな存在価値になるのではないでしょうか。

 共通言語を通じて双方が対話をしていくことで、大きな組織変革、意識改革に繋がるものと期待しています。役割がどちらかに偏るのではなく、一緒に成功して一緒に失敗しながら改善を積み重ねることが、営業部門とマーケティング部門が協働する本質なのです。

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