Appleは米国時間6月21日、iPhoneの通信を司るベースバンドチップを製造、ライセンスするQualcommを提訴した。
AppleによるQualcommの提訴は2017年に入って2度目だが、今回はQualcommの「ノーライセンス、ノーチップ」、あるいは「ダブルディッピング」と言われるビジネスモデルに対する訴訟となる。Appleは今回の訴訟で、Qualcommの通信に関する特許ライセンスと通信チップ購入を契約上の抱き合わせにしていた上、ライセンスのロイヤリティを端末価格に対している課している点に抗議している。
この訴訟やこれまでのAppleの動きを追うと、今後、製品に組み込む半導体をAppleがどのように捉えているのかが透けて見える。
Appleは現在、iPhone、iPadに組み込むプロセッサを自社で設計している。Aシリーズプロセッサは、スマートフォンのプロセッサをいち早く64ビット化し、たとえばiPhone 5sにも、最新OSをインストールできるようにし、機械学習やARといった最新の技術につついても、特別なハードウェアなしで既存のデバイスで実現できるようにしている。
今日のコンピューティングの要となっているグラフィックスについても、長年のパートナーだった英国Imaginationとの契約を終了し、自社設計に移す方針となった。
このような流れの中で、AppleはQualcommからの人材の引き抜きも伝えられており、今後Apple製品に組み込む通信チップについても、自社でデザインするようになる未来は、さほど突飛な想像とは言えなくなった。今回の裁判の結果にかかわらず、将来的に、Qualcommはこれまでの最大顧客であったAppleを失う可能性が高い。
他方、Appleはプロセッサ、グラフィックス、通信といったスマートフォンやタブレットになる半導体を自社設計するようになっている。そのメリットを最大限に享受するのは、Apple Watchもしくは将来登場するウェアラブルデバイスになるだろう。
Apple Watchに搭載されているS2は、デュアルコアにアップグレードされ、GPSを内蔵するなど、パッケージ型のプロセッサの第2世代として進化を遂げている。例えば独自設計の通信ベースバンドチップをこのS2の中に組み込むと、単体でLTE通信が可能なスマートウォッチが出来上がる。
もちろん、バッテリ持続時間や、通信の契約の問題、そもそものwatchOSの安定性など、さまざまな問題を解決する必要はあるが、iPhone不要で単体で利用できるデバイスとして、Apple Watchが独り立ちすることが考えられる。
また、時計型以外のデバイス、例えばメガネ型デバイスの場合、より多くのグラフィックスパワーが必要となるだろう。そうした製品の可能性を広げるべく、Appleの半導体部門の発展に期待がかかっていくことになる。
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AppleがWWDC 2017で披露したiPad Proは、秋に公開予定のiOS 11との組み合わせによって、これまでのタブレットというカテゴリを飛び出し、きちんとPC市場と対峙できるだけのポテンシャルを持つようになった、と認識して良いだろう。
AppleはPC市場に対してiPad Proをぶつける、という戦略を2016年3月に9.7インチモデルのiPad Proを発表するときに初めて口にしている。しかし結果は芳しくなく、iPadの販売台数の低迷を食い止めるだけの効果は得られなかった。
現在のPC市場は、Appleが嫌うパソコンとタブレットが融合したスタイルが主流となっている。Androidタブレットを製造していたメーカーも、Windowsベースの2-in-1、もしくはデタッチャブルタブレットにシフトし、タブレット市場自体が縮小傾向に。
そもそも、AppleがiPadを開発したきっかけに関する記事も配信された。iPhoneがiPad開発途中に先に製品化されたものだったことは、ジョブズ氏の自伝などでも明らかになっていたことだ。
AppleでiPhoneの初期のソフトウェア開発に携わってきたScott Forstall氏は当時を振り返り、ジョブズ氏が、スタイラスとタブレットの端末についてMicrosoft幹部に不快感を覚え、iPadの開発をスタートさせたという秘話が明かされた。
前述のように、その過程でiPhoneが生まれたわけで、今日のAppleを作り上げるきっかけの1つは、タブレット計画を雄弁に語ったMicrosoft幹部だったのかもしれない。
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