マクドナルドでは、こうした日々の顧客満足度を高める施策に加えて、旬なプロダクトやイベントに合わせたユニークなプロモーションも次々と仕掛けている。記憶に新しいのは、単独ローンチパートナーに選ばれた位置情報ゲーム「Pokemon GO」だ。同ゲームのアプリが日本で配信された7月22日から、全国のマクドナルド店舗がユーザー同士で対戦できる「ジム」やアイテムを入手できる「ポケストップ」としてゲーム内に登場し、大きな話題となった。
日本に先駆けてスタートした米国などでは社会現象になるほど大きな騒ぎとなっていたため、日本でもアプリの配信当日には、Pokemon GOユーザーが一斉に店舗に押しかけ、トラブルが起きる可能性もあった。しかし、渡邉氏によれば、同社の想定を超えるユーザーが来店したものの、事前に全国の店舗クルーに対応マニュアルを共有したことで「大きな混乱もなくスムーズに対応できた」という。
「(ゲームをプレイしながらの)歩きスマホでお客様同士がぶつかるととても危険なため、店内で着席してから遊んでいただくようクルーから注意を促すように徹底した。当然ながら店内にはPokemon GOを遊んでいない方もいるため、すべてのお客様に満足してもらえる対応に努めた」(渡邉氏)。
マクドナルドはソーシャルメディアを活用した顧客を“巻き込む”プロモーションも得意だ。たとえば、2016年2月に期間限定で発売された「北のいいとこ牛っとバーガー」は、同社が初めて商品名を消費者から募った"名前募集バーガー”で、特設サイトから500万件以上の応募が寄せられたという。また、この企画自体が多くのメディアに取り上げられ、ソーシャルメディアでも広く拡散した。
最近では、2017年1月に実施した「マクドナルド総選挙」が注目を集めた。マクドナルドの12種類のレギュラーハンバーガーが政治家のように“公約”を掲げ、消費者の人気投票によって1位が決まると、その公約が実現するという大掛かりな企画だ。消費者は応援したいハンバーガーを実際に店舗で食べて、その箱に載っている投票用のQRコードを読み取ったり、Twitterでつぶやいたりすることで投票する。
総選挙では、一回戦と決勝戦を経て総投票1億9000万以上のポイントが集まり、1位に「ダブルチーズバーガー」、2位に「てりやきマックバーガー」が選ばれた。同社では、数多くの投票に感謝の気持ちを示す形で1~2位の「W公約」を実現し、パティとチーズが3枚の「トリプルチーズバーガー」と、パティが2枚の「ダブルてりやきマックバーガー」を1週間限定で発売した。消費者それぞれが思い入れのあるハンバーガーを応援したくなる施策を設け、実際にその公約を実現することで、エンゲージメントを高めることができたと渡邉氏は手応えを語る。
こうした大掛かりなものではない日々の情報発信には、他社と同様にSNSの公式アカウントを利用している。「お客様とカジュアルなコミュニケーションができ、盛り上がりやすく相性がいい」(渡邉氏)ことから、特にTwitterを活用しているそうだ。同社内に専門のチームを設け、それぞれの商品担当と連携しながら新商品の情報などを発信している。たとえば、“肉の日”である29日には1日限定のスペシャルクーポンを配信。エイプリルフールには消費者からウソのハンバーガー商品を募集し、採用したアイデアをイラスト化したうえで紹介するなどしてフォロワーを楽しませた。
この一方で、“炎上”のリスクを防ぐため、SNSの投稿ガイドラインを設け、社内のSNSチームのみならずすべての従業員に徹底させているという。同社では、本社の従業員が役員も含めて必ず店舗研修を受けるため、店舗で起こり得る事態を理解した上でガイドラインを作成していると渡邉氏は話す。具体的には、「新たなプロモーション情報を外部に漏らさない」「来店した顧客の情報を発信しない」といった内容で、若年層もいるアルバイト向けにはより理解しやすくかみ砕いたマニュアルを配っているそうだ。マクドナルドには国内に約12万人の店舗クルーがいるが、一度も報道などで大きな問題になったことはないという。
数々の斬新なプロモーションによって、SNS時代ならではの顧客獲得を進めてきたマクドナルド。今後も、ソーシャルメディアをはじめとして、消費者を巻き込むプロモーションを積極的に展開したいと渡邉氏は話す。「繰り返しになるが、マクドナルドのキーワードは“ファンプレイス・トゥ・ゴー”。いかにお客様に楽しんでいただけるかを常に考えながら、デジタルを含めたマーケティングを展開していきたい」(渡邉氏)。
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