心しておこう。人工知能(AI)は思いもよらない分野で活用されるようになる。
2016年は、Google、Facebook、Apple、Microsoftといったテクノロジ企業が、AIを利用する製品やサービスを次々に発表した。2017年には、他の業界もこぞってAIを導入するようになるだろう。
人工知能という言葉が登場してから60年になるが、それ以来ずっと、実現しそうでいつまでたっても実現しない存在のように思われてきた。だが、新しいハードウェアやソフトウェア、サービス、専門技術の出現で、ようやく現実のものとなった。もちろん、各社ともAIを動かすには人間の頭脳の力がまだまだ必要となるだろうが。
現時点で最も進んだAIの形と言えるのが、ディープラーニングと呼ばれるアプローチで、これは人間の脳を模したニューラルネットワーク技術をベースとする。従来型のコンピュータプログラムは、あらかじめ記述された一連の命令に従って実行されるが、プログラマーがそのアプローチを用いても、たとえば目の不自由な人に1枚の写真について説明するなど、複雑で繊細な処理を実行することはできない。これに対しニューラルネットワークは、写真や動画、手書きの文字や会話といった実世界のデータを大量に使ってトレーニングすれば、独自のルールを見つけ出せるようになる。
AIは2016年に特に大きな注目を集めたトレンドであり、その注目度は今後も高まっていく一方だろう。皆さんもすでにAIに触れているはずだ。スパムメールのブロックも、デジタル写真の整理も、口頭のテキストメッセージの書き起こしも、AIがやっている。2017年には、デジタル機器にとどまらず、ビジネスの主流にまで広がっていくだろう。
「実験の年は終わり、ソリューションの年になるだろう」。IBMの最高イノベーション責任者であるBernie Meyerson氏はこう述べている。
AIがもたらす社会の変化について、一部で懸念の声が上がっていることは言うまでもない。最高経営責任者(CEO)やAIプログラマー以外の人もAIの恩恵を受けるためには、ユニバーサルベーシックインカムを採用せざるを得なくなるのではないか、とBarack Obama大統領がAIについて問題提起したほどだ。
2017年にAIを採用し始めるのは、銀行、小売、製薬会社などだろう。カーネギーメロン大学コンピュータサイエンス学部長のAndrew Moore氏はこのように予測する。
たとえばエンジニアリング企業の場合、AIを利用することで、車が橋を渡るときの音から橋の破損箇所を予測できないかと考えるかもしれない。これまでなら機械学習の専門家を雇う必要があったが、今では構造技術者がAIソフトウェアをダウンロードして、それを既存の音響データでトレーニングし、新しい診断ツールとして利用できる、とMoore氏は述べる。
データベース企業Splice MachineのCEOで、以前は米航空宇宙局(NASA)エイムズ研究センターのAI部長補佐を務めていたMonte Zweben氏によると、2017年にはAIが医療にも進出するという。
つまり、疲れ知らずのロボットが医療データをスキャンして、危険性の高い感染を早期に発見したり、患者の遺伝子に合わせてガン治療のやり方を変えたりできる可能性があるわけだ。これは人間のスタッフをサポートする仕事であって、人間の代わりになるものではない。「精密医療が現実になりつつある」。Zweben氏はこのように述べ、今はまだ実現できないが、個々人に合わせて細やかにカスタマイズされた治療に言及した。
同じようなデジタルによる強化は、ホワイトカラー層にも及ぶ。こう予測するのは、コンサルティング企業Booz Allenで分析業務を統括するEric Druker氏だ。融資を行うのが妥当かどうかを審査するプロセスは標準化されているが、「どの段階でも人が判断を下している」という。2017年にはAIが一部の単純な作業をこなすようになり、その判断が速くなるだろう、と同氏は述べる。
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