行政側の施策によって勢いを増したのは、低価格で通信サービスを提供するMVNOや、キャリアのサブブランドだ。実質0円販売の事実上禁止によって端末価格が大幅に上昇したことを嫌った人たちが、安価なサービスを提供する事業者へと流れたためだ。
MVNOやサブブランドは、一連の総務省の施策をビジネスチャンスと捉え、2016年に入ってから攻めの姿勢を打ち出してきている。中でも低価格サービスで先行する、ソフトバンクのサブブランド「ワイモバイル」は、大手キャリアの強みを生かし「iPhone 5s」を正規に取り扱ったり、基本料を1年間1000円割り引く「ワンキュッパ割」などを相次いで打ち出したりするなどして、低価格を求めるユーザーの獲得を進めていった。
一方のMVNOも、従来のデータ通信を重視した30~40代の男性だけでなく、メイン回線としてMVNOのサービスを選ぶ若い世代やファミリー層などが増えたことから、従来あまり力を入れてこなかった音声通話サービスを強化する企業が増加。楽天モバイルが「5分かけ放題」の提供を開始して以降、各社がプレフィックスコールやIP電話などを活用し、キャリアと同様の定額通話を実現するサービスを提供するようになった。
また、従来インターネット販売が中心だったMVNOが、全国への実店舗展開を進めるようになったのも、大きな変化といえるだろう。実際、楽天モバイルやカルチュア・コンビニエンス・クラス傘下のトーンモバイル、「FREETEL」ブランドでスマートフォンや通信サービスを提供するプラスワン・マーケティングなどが、全国への店舗展開を打ち出している。市場拡大を受け、コストをかけてでも攻めに出るMVNOが増えているのだ。
そしてもう1つ、MVNOの拡大に合わせて急速な伸びを示しているのが、SIMフリースマートフォンを提供するメーカーだ。ASUSやFREETELなど主要SIMフリースマートフォンメーカーだけでなく、2016年はレノボ傘下のモトローラや、「アルカテル」ブランドのTCLコミュニケーションなどもSIMフリースマートフォンの販売を大幅に強化。成長市場を狙っての攻防が激しくなってきている。
それらメーカーの中で、頭一つ抜け出したのがファーウェイである。同社の躍進を支えたのが、6月に投入した「HUAWEI P9」「HUAWEI P9 lite」。中でもP9は、発売当初は5万9800円と、SIMフリースマートフォンとしては高額な価格設定ながらも、ライカと共同開発した、2つのカメラを備えた「ダブルレンズ機構」が人気を博してヒットを記録。SIMフリースマートフォンは低価格でないと売れないという、これまでの常識を覆したことは、今後のSIMフリースマートフォン市場に大きな影響を与えたといえる。
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